062 幼女と後輩の関係
さて、今からニクスちゃんと風の精霊さんを助けに行くのだけど、私はその前にスミレちゃんから確認したい事があった。
これは極めて重大で、この先の私とスミレちゃんの関係にも影響する事だと思っていた。
だから、今聞くような事じゃないのかもしれないけど、聞きださないわけにはいかなかったのだ。
「ねえ。スミレちゃん」
「はいなのです」
「スミレちゃん、チョコの実狩りに行く前に、魔族はいないって言っていたよね?」
チョコの実狩り前日、スミレちゃんが道を外れなければ大丈夫と言っていた。
それなのに、村を出て以来、魔族との遭遇が多すぎだった。
だから、私は心配になったのだ。
私はスミレちゃんの目を真剣にジッと見る。
すると、スミレちゃんが「あー」と言って、頭をポリポリと掻いて苦笑した。
「あれは、私の知り合いの魔族に聞いた事を、そのまま言っただけなのですよ」
「え? それじゃあ……」
「勿論、私は直接確認してないなのですよ」
そっかそっかぁ。
なるほどね。
私は謎が解けて、思わず笑みがこぼれる。
「いやあ。フルーレティ様がこの町に来ているのは知っていたなのですが、てっきり任務が入って他の町に移動したのだと思っていたなのですよ」
スミレちゃんは反省する感じも無く、頭を掻きながら「参りましたなのですよー」なんて言っている。
ホント参っちゃうよね~。
「っじゃないよ。このお馬鹿ーっ!」
私が怒ると、スミレちゃんが目を丸くして、頭に?を浮かべた。
「ちゃんと見て来たわけじゃないなら、そう言わなきゃダメでしょ?」
「それもそうなのです」
「わかってくれたの? それなら良いけど」
「はいなのです。信頼している知り合いとはいえ、相手も魔族なのです。罠の可能性を考えていなかったなのです」
相手も魔族だから罠の可能性?
違うよ。
そうじゃないもん。
私が心配なのは、そんな事なんかじゃないよ。
「スミレちゃん全然わかってないよ。罠だとかは、凄くどうでも良いの。スミレちゃん。私はね」
そう言って、私はスミレちゃんに抱き付く。
「スミレちゃんとお友達だと思っているのが、私だけだったのかもって、本当は私の事が嫌いなんじゃないかって思ったんだよ。だから、嘘を教えたのかなって思って悲しくなったの」
「っ幼女先輩!」
スミレちゃんも抱き付く私を、包むように抱きしめ返してくれた。
「ごめんなさいなのですよ! 私は一生幼女先輩の奴隷として、友達であり続けるなのですよ!」
「ううん。もうい……え? 奴隷? 待って? 今奴隷って?」
そこで、黙って聞いていたリリィが、私達に優しく微笑む。
「安心してジャスミン。スミレは間違いなくロリコンよ。世界を敵に回しても、ジャスミンを敵に回す事は無いわ」
「待って? それより奴隷って、今言ったよね?」
スミレちゃんが私と体を離して、やれやれと失笑する。
「リリィ。人聞き悪い事言わないでほしいなのよ。私は世界を敵に回しても、全ての幼女の味方なのよ」
ねえ?
スミレちゃん待って?
奴隷について答えを聞いてないよ?
なんで私の事スルーするの?
奴隷の部分は、ふれちゃダメなとこなの?
今度は別の意味で心配になってきたよ。
「それはともかくとして、さっさとニクスと風の精霊を助けに行きましょう」
「う、うん。そうだよね」
そこで、アマンダさんが手に顎を乗せて真剣な顔をする。
「問題は、魔族達が何処にいるのかが分からない事かしら?」
アマンダさんがそう言うと、リリィが苦笑して答える。
「ああ。アマンダは知らないものね。それなら、心配しなくても大丈夫よ」
「魔族の居場所がわかるの?」
「ううん。正確には、ニクスちゃんが何処に連れて行かれたのか、後を追う事が出来るんだよ」
「どういう事?」
「ふっふっふぅ。この、匂いマスターである私に任せておくなのよ!」
スミレちゃんがそう言って、胸を張ってドヤ顔をする。
アマンダさんは「匂いマスター?」と、顔をしかめてスミレちゃんを見た。
アマンダさんに色々説明した方が良いかも。
そんなわけで、スミレちゃんの後に続いて移動する中、私はアマンダさんに色々と話す事にした。




