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060 幼女も震える恐ろしい変態

 魔軍三将の一人ベルゼビュートの配下フルーレティ。

 私達はスミレちゃんから、フルーレティと言う名の魔族について教えて貰った。

 特殊能力を二つも所持していて、かなり恐ろしい魔族。

 一つは、大気中の水分を集束して凍らせる事によりひょうを作り出して、それを操る能力。

 一つは、受けたダメージを、癒しに変換する能力。

 私は、今までの魔族と違うガチなその能力に震えた。


 本気で危険な感じがするよ。

 今までとは大違いだもん。


「そう言うわけなので、フルーレティ様には関わらない方が良いなのですよ」


「そ、そうだね」


 私がスミレちゃんの言葉に同意して、うんうんと頷く。


「でも、何で風なんか止めてるのかしら?」


「せやな。まあでも、詮索してもわからんし、考えるだけ無駄やろ」


 そうだよね。

 私も最初は、女の子のスカートの中を見る為だと思っていたけど、そんなイメージじゃないもんね。


「しかし、変な話ね。それ程の魔族だと言うのに、私の魔力感知に引っ掛からないなんて……」


 あ。そっか。

 アマンダさんって、そういう事出来るんだよね?

 じゃあ、ここ等辺にはいないのかも。


 と思ったのだけど、スミレちゃんから出た言葉で私のフルーレティと言う魔族のイメージが、より怖いものになった。


「フルーレティ様は幼女先輩程ではないなのですけど、魔力コントロールがもの凄く上手なのですよ。普段は魔族と気づかれない様に魔力を抑えて、狙いを定めて相手を仕留めるなのです」


 え?

 なにそれ?

 怖い。

 本当に今までと違うじゃん!

 絶対関わりたくないよ。


「まあでも、何処にいるかは、すぐにわかっちゃうなのですけどね」


 え?

 どういう事?


 私と同じように、スミレちゃん以外が頭に?を浮かべていると、スミレちゃんが「あ」と指をさして声を上げた。

 私達がスミレちゃんの指をさす方を向くと、10代後半から30代くらいまでのお姉さん達が、黄色い声を上げて歩いていた。

 そして、その中心には超絶イケメンなお兄さんが爽やかな笑顔で、お姉さん達と話しながら歩いていた。


 うわ。

 めちゃくちゃイケメンだ。

 何かアイドルみたいにかっこいいなぁ。 

 それに、王子さまっぽい服も着てるよ。

 あんなにお姉さん達に囲まれてるし、もしかして本当に王子様なのかな?

 って、あれ?

 よく見ると――


「イケメン女子だ」


 そう思わず私の口から出る。

 一見イケメン男子に見えたその人物は、イケメン女子だったのだ。

 よく見ると、胸が少しだけ膨らんでいる。

 長身でモデル体型のイケメン女子。

 そりゃあ、お姉さん達に囲まれるわけだよと、私はうんうんと頷いた。

 その時、スミレちゃんが私の背後でしゃがんで、私の腕を掴んだ。


 スミレちゃん?


「フルーレティ様なのですよ」


「え!?」


 その時、イケメンのお姉さん改め、フルーレティと私の目が合った。

 そして、その瞬間フルーレティは目を見開いた。


「ジャスミン!」


 リリィが私の名前を呼んで、目の前に立つ。

 しかし、気がついた時には、既にフルーレティがリリィと私の間に立っていた。


 え?嘘?何?

 どうし――


「なんて事だ! 私は君ほど可愛い少女を今まで見た事が無い! 君と出会ってしまったこれは運命と呼ぶにふさわしい! 私はフルーレティ。お嬢さん。名前を聞かせてくれるかい?」


「嫌です」


 そう答えた後、私は全力で後ずさる。

 それはもう、砂煙があがるくらいに。

 そして、後ずさる私をフルーレティが追いかけて来た。


「そんなに恥ずかしがらなくても、大丈夫さ子猫ちゃん。さあ、私の胸に飛び込んでおいで。抱きしめてあげるよ」


 ひぃー!

 変態だー!

 ほら!

 結局変態だよ!

 魔族にまともな奴なんていないんだよ!

 さっきまで感じていた恐怖とは、全く別の恐怖が押し寄せて来るよ!

 しかも物理的に!

 そんな爽やかな顔して気持ち悪い事言いながら、こっち来ないでー!


「ちょっと貴女。私のジャスミンをナンパしないでくれないかしら?」


 リリィが再び私の前に立つ。


「へえ。ジャスミンって言うのかい? 教えてくれてありがとう。綺麗なお嬢さん」


「はあ!?」


 リリィ。

 落ち着いて?

 物凄い怖い顔になってるよ?


「流石幼女先輩! 魔力を隠して狙いを定められたのに、通じてないなのです!」


 え?

 狙いを定めて仕留めるってそっちなの?

 魔力を隠す意味ないよね?


「おや? 君は」


 スミレちゃんの声を聞いたフルーレティが、スミレちゃんの存在に気がついて、スミレちゃんを見た。


「バティンじゃないか。雰囲気が随分と変わって、気がつかなかったよ」


「ど、どうもなのよ」


「バティン。君の事は、いずれケジメをつけるとして」


 フルーレティがニクスちゃんを見て微笑む。


「重要人物も見つけた事だし、連れて行く事にしよう」


 フルーレティが目にもとまらぬ速さで、ニクスちゃんに近づく。

 ニクスちゃんは恐怖で震えていて、一歩も動けないでいた。


「重要人物? ……そうなのよ! もしかして、その子は!?」


「なんだ。バティン。今まで気がつかなかったのかい?」


 重要人物って、どういう事だろう?

 ううん。

 今はそんな事より、ニクスちゃんを助けないと!


 私は助けようと魔法を使おうとした時、背後から声をかけられる。


「はあ~い。お嬢ちゃん。動いたらお友達が大変な事になっちゃうわよ~?」


 え?


 振り向くと、フルーレティを取り巻いていたお姉さん達が、いつの間にかリリィとスミレちゃんとアマンダさんを拘束していた。

 そして、私はお姉さん達の姿を見て驚いた。

 お姉さん達の姿は、漫画やアニメやゲームで見たサキュバスだったのだ。

 頭には羊のような形をした黒い角に、背中からコウモリのような黒い羽が生えていて、お尻には悪魔のような尻尾。

 そして、皆格好がエロい。


「ごめ……ん…………ね。ジャスミ……ン」


「リリィ?」


 リリィが、ううん。

 リリィだけじゃない。

 アマンダさんも、気力を抜かれたように気だるげになってる。

 これって、精気を取られたって事?

 スミレちゃんを追い詰めたアマンダさんまで……。

 どうしよう。

 これって、かなりやばいよね?

 スミレちゃんも、顔が青くなってるし。

 たぶん、よっぽど、このフルーレティって言う魔族のお姉さんが怖いんだ。


 私がリリィ達に気を取られていると、いつの間にか側まで近づいていたフルーレティが片膝をつく。


「それじゃあね。ジャスミン。また迎えに来るよ」


 そう言うと、フルーレティが私の手を取って、手の甲に口づけをした。


「ひっ」

 

 私は一歩後ずさる。

 フルーレティはそんな私を見て微笑むと、サキュバスのお姉さん達の方に顔を向けた。


「皆そろそろ行くよ」


 フルーレティの言葉に、サキュバスのお姉さん達が「は~い」と声を揃えて返事をする。

 そして、ニクスちゃんを連れて飛び去って行ってしまった。

 私はただただ呆然とし、立ち尽くす事しか出来なかった。


「あいつ、次会ったら殺すわ」


「え!?」


 突然背後から声が聞こえて振り向くと、さっきまでの気力が抜かれたような状態だったのが、まるで嘘のように怒りをあらわにしたリリィが立っていた。

 そしてその横には、さっきまで怯えて震えていたスミレちゃんが、リリィと同じように怒りを露にして立っている。


「フルーレティ様、顔がイケメンだからって、調子こきすぎなのよ。次会ったら、生まれてきた事を後悔させてやるなのよ」


「え、えっと。2人とも、と言うかリリィ? 大丈夫なの?」


「うふふ。ジャスミン、心配してくれてありがとう。ジャスミンの手にキスしてくれやがった怒りで、もう元気よ」


「絶対に許せないなのよ!」


 うん。

 2人とも良かった。

 平常運転でなによりだよ。


 私は相変わらずの2人の様子に、ニッコリ微笑む。

 そして、放っておこうと思いました。


 よし。

 アマンダさんを介抱してあげないとだよね。

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[一言] 男の女もロリコンばっかり!
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