059 幼女のパンツの行方
勘違い?からスミレちゃんを成敗しようとしてくれたアマンダさんへの謝罪を終えると、私はリリィに確認をしたい事があったので質問をする事にした。
「ねえ。リリィ」
「なあに? ジャスミン」
「さっきは、何で私のパンツを剥いで放り投げたの?」
「何かと思えば、その事ね」
リリィ?
私、結構真面目に聞いてるよ?
何で爽やかに微笑んでるの?
「ジャスミンのパンツを使って、スミレとアマンダを止めようとしたのよ」
それ、止まったとしてもスミレちゃんだけだよ!
普通は止まらないよ!
「ほら、合図だってしたでしょう? しょうがないって、言っていたじゃない?」
そうだね。
ウインクしてたね。
でも、ウインクなんかじゃわからないよ!
あの時言ったしょうがないは、別の意味のしょうがないだよ!
「以前、スミレと初めて会った時は、ジャスミンが自分からパンツを脱いだでしょう?」
あー。
あったあった。
そう言えばそうだっけ。
今思うと、馬鹿だなぁ私。
「でも今回はニクスの手前、ジャスミンも恥ずかしいだろうから、気を使って私が変わりに脱がしてあげたのよ」
ねえ、リリィ?
もっと別の所で気を使って?
「でも、びっくりしたわ。まさか、アマンダには通じないなんて思わなかったもの」
むしろ、どうして通じると思ったのかな!?
私がリリィの発言にヤキモキしていると、アマンダさんに「ジャスミン」と話しかけられる。
「良かったら、これを使って?」
そう言って、アマンダさんが私に渡して来たのは、パンツだった。
「へ?」
何でパンツ?
その時、私は下半身の違和感に気がついた。
私、またノーパンだよ!
もー!
私の馬鹿!
恥ずかしい!
「アマンダさん。ありがとー」
私はアマンダさんからパンツを受け取り、物陰からパンツを急いで穿く。
そうして、パンツを穿いてから皆のもとへ戻り、リリィを睨みつけた。
私と目が合ったリリィが、爽やかな笑顔で私に話しかける。
「ジャスミン。良かったわね。アマンダが替えのパンツを持っていて」
リリィのせいでしょ!
もー!
って、あれ?
「そう言えば、私のパンツは何処に行ったの?」
そう言って、私はリリィとスミレちゃんの顔を交互に見る。
すると、スミレちゃんが頭を下げた。
「幼女先輩。すみませんなのです。幼女先輩のパンツは、アマンダに殺されかけた拍子に、手元がくるって燃やしてしまったなのですよ」
あ。うん。
あの時、本当に危なかったよね。
流石にそれは仕方ないもんね。
「許しましょう」
「ありがとうなのですよ!」
スミレちゃんが目をウルウルさせて、私に飛びついた。
私の顔が、スミレちゃんのおっぱいで埋もれる。
うぅ……。
スミレちゃんおっぱいでかすぎだよ。
息が……。
あ。でもちょっと、幸せかも。
私がそんな馬鹿な事を考えている横で、リリィがアマンダさんに質問する。
「ところで、何で替えのパンツなんて持ってたのよ?」
「買い物をしていた時に、たまたま買った物があったのよ」
そう言って、どこにしまっていたの?と、聞きたくなるくらいの量の衣類を、アマンダさんが取り出した。
良かった。
アマンダさんは普通の人みたい。
この荷物の多さは凄く謎だけど、気にしたら負けだよね。
そんな事を私が考えていると、後ろから肩を叩かれる。
振り返ると、同情するような眼差しで、ニクスちゃんが私に話しかけてきた。
「ジャス。ウチ思ったんやけどな」
「うん?」
「言いたい事あるなら、ちゃんと口に出した方がええと思うんよ」
「うん。……うん?」
ニクスちゃんの言葉に目が点になる。
そう、そうだよ。
ニクスちゃんの言う通りだよ。
たしかに、私は話を聞いても、あまり自分の気持ちを言わないもん。
ちゃんと、自分の気持ちを伝えるのは大事かもしれないよね。
「それやそれ。思った事を、ちゃんと口にした方がええよ」
「エスパー!? 私の心を読んだの!? ニクスちゃん!?」
「顔に出とるだけやで」
また顔に出てたかぁ。
「とにかく、思った事は口にせんとあかんよ。時には、黙っとく方がええ事もあるけどね」
「うん。ありがとー。ニクスちゃん」
私はニクスちゃんの手を握って、ぶんぶんと振り回す。
「まあ、無理せん程度に頑張りや」
「うん!」
よし!
決めたよ。
今度からは、しっかり言いたい事を言えるように頑張ろう。
私がそんな風に心の中で誓っていると、リリィがニクスちゃんの肩を叩く。
「ニクス。人には出来る事と出来ない事があるのよ」
ちょっとリリィ!
そんな事ないよ!
私だって、言う時は言うんだからね!
「ほら」
「せ、せやな。ウチが間違っとった」
え!?
なんで納得しちゃうのニクスちゃん!?
私が2人の会話にプンスカしていると、リリィが「ところで」と、アマンダさんに話しかける。
「アマンダ、フェニックスって名前の魔族を知らないからしら?」
「フェニックス? 知らないわね。まさか、この町の風が止まった事と関係があるの?」
「それとは別件や。ジャス達が個人で捜しとるみたいなんよ」
「そうなのね」
「凄いよね。風を止めた魔族。自然現象に干渉出来るって事だよね? どんな魔族なんだろう?」
と、私も素直な気持ちを話すと、スミレちゃんが「あの~」と言って小さく手を上げた。
「もしかして幼女先輩は、この町の風を止めた犯人を捜してるなのですか?」
そう言ったスミレちゃんの顔は、若干青ざめているようにも見えた。
と言うか、少し目が泳いでる。
「え?ううん。捜してはいないけど、ちょっと気になっちゃって。どうかしたの? 顔青いよ?」
「い、いやいや。それなら良かったなのですよ」
スミレちゃんはそう言うと、ホッとした顔になる。
物凄くホッとしてる。
もしかして、知ってるのかな?
そう言えばだけど、この町の風が止まった事について、スミレちゃんに聞いてなかったもんね。
ちょっと聞いてみようかな。
「もしかして、風を止めた魔族を知っているの?スミレちゃん」
私が質問をすると、スミレちゃんは苦笑しながらポリポリと頭を掻いて答える。
「この町の風を止めてる魔族は、私の元上司のフルーレティ様なのですよ」
「えええぇぇっ!?」




