057 幼女のパンツを投げてはいけません
炎の上がっていた場所まで辿り着くと、そこでは目を疑う様な激しい戦いが繰り広げられていた。
何がどうなってるの!?
戦ってるのは、スミレちゃん。
そして――
「さっきのメイドのお姉さん!?」
「知ってるの? ジャスミン」
「う、うん」
私は、スミレちゃんとメイドのお姉さんの戦いを目で追う。
ある時は、建物の壁や塀をまるで地面の様に蹴り飛ばし、勢いをつけてぶつかり合う。
スミレちゃんは黒炎の魔法を使い、メイドのお姉さんは水の魔法を使って、いくつもの攻防を繰り返す。
それは、今まで見た事も無いような激しい戦い。
メイドのお姉さんは小さな杖を持っていて、それを使って魔法を繰り出していた。
よく見ると、スミレちゃんは自分から攻撃を仕掛ける様子は無かった。
スミレちゃんは魔法で黒い炎を繰り出して、メイドのお姉さんの魔法の攻撃を何度も防いでいるだけのようだ。
スミレちゃんから攻撃を仕掛けてないから、メイドのお姉さんが一方的にスミレちゃんを狙ってるのかな?
でも、なんでだろう?
って、そう言えば、詰所で魔族がどうのって兵隊さんと話していたっけ?
じゃあ、もしかしたら勘違いしてるのかも?
その時、ニクスちゃんに腕を掴まれる。
「ジャス。危ないで、早うここから離れよ?」
「で、でも……」
私が言い淀んでいると、リリィが私の腕を掴んだニクスちゃんの手を握った。
「待って。逃げる必要なんてないわよ」
「どういう事? こないな所にいたら、まきこまれてしまうで? あのお姉さんと戦うてるの、魔族やろ? 早いとこ逃げた方が、ええに決まっとるやん」
あー。
そっか。
ニクスちゃんはスミレちゃんに会った事ないんだっけ?
それだったら、そう思っちゃうのも仕方がないよね。
実際に、見た目が結構危険な感じだもん。
私は周囲を見まわして確認する。
メイドのお姉さんがスミレちゃんを攻撃する度に、スミレちゃんが炎を出して防御する。
防御すると、飛び火した炎が、そこ等中に燃え移っている。
そして、メイドのお姉さんも、たまに大きな魔法を使っていて、その度に少しだけ道や建物が抉られたりしていた。
これを見たら、この場から離れた方が良いと思うのは、あたりまえの事だろう。
するとそこで、リリィが私にウインクする。
うーん。
仕方がない。
結構大変な事になっちゃってるもんね。
それで、私の魔法を頼りにしてくれてるって事だよね?
「しょうがないなぁ――って! え? ちょ、ちょっと! リリィ!?」
何で私、いきなり担がれちゃったの!?
ど、どうして――ってぇ!?
「きゃあ!」
私はいきなりリリィに担がれると、そのままパンツを脱がされた。
な! な!?
なぁーっ!?
「スミレーッ!」
スミレーッじゃないよ!
ちょっと待って!?
リリィ!?
何で私のパンツを放り投げてるのぉ!?
リリィが放り投げた私のパンツが宙を舞う。
「いただきなのよ!」
いただかないでー!
スミレちゃんは瞬時に私のパンツを空中で鷲掴みし、そして私のパンツをそのまま丁寧に広げる。
そうしてパンツを広げると、スミレちゃんは凄く良い笑顔で、私のパンツのにおいを嗅いだ。
こらー!
嗅ぐなー!
「よし」
よし。じゃないよ!
何勝ち誇った顔してるのリリィ!?
ほら!
ニクスちゃんも流石にひいてるよ!
あ。
でも。
ニクスちゃんは本当に普通の子なんだなぁ。
何だか安心したよ……って、安心してる場合じゃないよ!
「なんですって!?」
リリィが声を上げて、信じられないものを見るような目でスミレちゃんを見た。
いや違う。
スミレちゃんの背後に迫る、メイドのお姉さんを見たのだ。
え!?
メイドのお姉さんは、スミレちゃんが私のパンツに食い付いて隙を見せると、その隙を見逃さなかったのだ。
スミレちゃんとの距離を一気に詰めたメイドのお姉さんが、水の魔法で大量に水を発生させてスミレちゃんにぶつけると、そのまま地面にスミレちゃんを叩きつけて拘束する。
そして、メイドのお姉さんが小さな杖に水を纏わせて、それは鋭利なナイフのように鋭い形となった。
このままじゃ危ない!
私は咄嗟に重力の魔法を使って、強制的にスミレちゃんを勢いよく引き寄せる。
「幼女先輩ーっ」
「大丈夫? スミレちゃん」
「死ぬがど思いまじだなのでずよぉ」
スミレちゃんが泣きながら私にしがみつく。
「仲間がいたの!?」
私はメイドのお姉さんに睨まれる。
だけど、私を睨みつけたメイドのお姉さんは、私の姿を見るとその顔はすぐに驚きに変わった。
「あら? あなたは先程の……」
「あはは。メイドのお姉さん。さっきぶりだね」
「え、ええ」
メイドのお姉さんは困惑する。
そして、私を担いでいるリリィと、泣きながら私にしがみついているスミレちゃんと、担がれながらしがみつかれている私を見る。
そして、一つため息をついてから、私にゆっくりと近づいて来た。
「申し訳ないのだけど、良かったら説明してもらえないかしら?」
メイドのお姉さんは私の側まで来ると、苦笑交じりに私に話しかけてきた。
だから、私はメイドのお姉さんに笑顔で答える事にした。
「うん。いいよ」




