表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/288

056 幼女のお友達は心が広い

 ニクスちゃんと町の商店街を歩いていると、私はリリィの後姿を発見した。


「リリィ!」


 リリィは私の呼ぶ声に気がついて、こちらに振り向く。


「あら?」


 リリィが私とニクスちゃんを交互に見る。


「ニクスじゃない。何でジャスミンと一緒に?迎えは明日のはずだけど?」


「明日が待てなくて、会いに来たんよ」


「そう。ようするに、ジャスミンが体が目当てなのね。夜這いをするには、まだ時間が早いわよ」


 なんで!?

 なんで明日が待てなくて会いに来ただけで、体が目当て呼ばわりなの!?

 リリィ、お願いだからニクスちゃんの前で、変な事言わないでよぉ。


 顔を青ざめる私の横で、ニクスちゃんは笑い出す。


「あはは。体目当てて。そんなん、ウチがろくでもない奴みたいやん」


 え!?

 ニクスちゃん凄い!

 リリィの、意味のわからない発言を笑い飛ばしてる!


「冗談よ。悪かったわね」


 え!?

 冗談だったの!?

 でも、リリィが言うと冗談に聞こえないよ!


「リリーは、おもろいなぁ。そもそも、女の子同士でそんなん考えんやろ?」


「そうかしら? 私はジャスミンと結婚を考えているわよ」


 ひぃーっ!

 また変な事言っちゃったよ!

 そう言えばそうだったっけって感じだけど!

 絶対引かれちゃう!


「ジャスもリリーと結婚したいん?」


「え! 私!? 私はとくには……。リリィは大切なお友達だけど、そう言うのじゃないし……」


「もう少しだと思うのよね」


 どこら辺がもう少しなの?

 ポジティブすぎるよ!


 ニクスちゃんが、私とリリィを交互に見て笑い出す。


「あはは。ホンマおもろいなぁ。でも、ウチは2人の関係嫌いやないで」


「応援してくれるのね!?」


 リリィがニクスちゃんの手を取って、キラキラと目を輝かす。


「応援はせえへんよ。それやと、ジャスが困ってまうやろ? ウチはジャスの味方や」


 ニクスちゃんの言葉を聞くと、リリィはつまらなそうな顔をして手を離した。


「ま、仕方がないわね」


 凄い!

 凄いよニクスちゃん!

 変態さんじゃないのに、あのリリィと会話が成り立ってる!

 私だったら今ので、距離を置いちゃうところだよ!

 心が広いよ!ニクスちゃん!

 私、ニクスちゃんの事が断然好きになっちゃった!

 だって、かっこいいんだもん!

 歳が同じ位なのに、リリィとは別な感じで凄く大人びてるし。

 大人びてる?

 大人……あ。


 と、そこで私は本題を思い出す。


 いけない。

 忘れる所だったよ。

 大人にならない為に、フェニックス捜索中だよ!


「ねえねえ。リリィの方は何かわかった? 私は全然だったよ」


「私も駄目だったわ」


「そっかぁ」


 私とリリィの話を聞いて、ニクスちゃんが頭に?を浮かべた。


「どないしたん?」


「ニクスにも確認したでしょう? フェニックスを捜しているのよ」


「あー。フェニックス、フェニックスなぁ。フェニックスを捜してたんやね」


「うん。そうなの。でも全然情報も集まらなくって」


 私が苦笑して答えると、ニクスちゃんが腕を組んで考え込んだ。


「良かったら、手伝おか?」


「え! 本当?」


「ええよ。味方って言うたやろ?」


「ありがとー。ニクスちゃん」


 私は嬉しくなって、ニクスちゃんに抱き付いた。


「なら、ニクスには私達で聞き込みが出来ない鳥人達の住宅街を――」


 リリィがそこまで喋った時だった。

 ドゴオオォッと、物凄い爆音が何処かから聞こえた。

 その音は本当にもの凄くて、ビリビリとした振動までも肌で感じる程だった。

 私は驚いて、音が聞こえた方を振り向いた。


「あれ、結構やばない?」


「何事?」


 ニクスちゃんとリリィも私と同様に、驚いて音の聞こえた方を見て口々に喋った。


「燃え……てる?」


 建物で隠れて現場は見れなかったけど、遠くの場所から大きく火があがっているのは見えた。

 その火に私達が驚いていると、今度はその方角から、人が波のように押し寄せる。


「な、何? えっ? 何?」


 私がオロオロしていると、ニクスちゃんが私の腰に手をまわして、そのまま私を掴んで空を飛んだ。

 空を飛ぶと同時に、さっきまで私が立っていた場所に人が波のように流れだす。


「ニクスちゃん、ありがとー」


「ええんよ」


「危なかったわね。ジャスミン大丈夫? 怪我は無い?」


「う、うん。ニクスちゃんのおかげでって、リリィ凄い」


 リリィはいつの間にか、建物の屋根へと移動していた。


 多分あれって、ジャンプとかで上に上ったんだよね?

 リリィがどんどん常人離れしていってるよ!


 私はリリィの成長に驚いていたのだけど、その驚きもすぐに消えてしまった。

 何故なら、波のように押し寄せた人達から聞こえた言葉で、私の驚きを上書きしてしまったからだ。


「何で魔族があんな町中に!」


「この町は安全じゃなかったのかよ! 何で魔族が暴れてるんだ!」


「警備兵は何してるんだ! 俺たちも全員、魔族の使う炎で燃やされちまうぞ!」


 炎を扱う魔族が暴れてる?

 それって、スミレちゃん?

 ううん。

 そんなはずないよ。

 そうだよね?スミレちゃん。


「くそ! 魔族じゃなかったら、あのおっぱいは最高だったのに!」


 って、一人変な事言ってる人がいるよ!?

 何言ってるのあの人!?


 私は呆れながら、炎が上がっている方を見た。


 おっぱい最高な炎を扱う魔族って、スミレちゃんしか考えられないよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ