055 幼女は真相を解き明かす
チョコ林から風抜けの町カスタネットへ戻って来た私は、リリィとスミレちゃんと一緒にフェニックスの情報を集める為に、聞き込み調査を行っていた。
それで今は、3人バラバラで聞いて回っている所だ。
ちなみにスミレちゃんの話では、このあたりにいた魔族の知り合いは、何故か行方をくらましたらしい。
どんな魔族か一度会ってみたかったから、ちょっと残念かも。
でも今はそれよりも……。
「いくらなんでも、落ちすぎだよね?」
風抜けの町カスタネットの風は未だに止まっていて、鳥人達が住む住宅街から、いっぱい落し物が降ってきていた。
そして、それが原因で町中ゴミだらけ。
まるで、日本の祭り後の風景だ。
「あれ? これって」
私はそんなゴミだらけの中で、財布を拾い上げた。
「やっぱり財布だ。たくさんお金も入ってる。誰かが落としちゃったのかな?」
さて、どうしよう? と、私がそんな事を考えていると、空から声が聞こえて来た。
「ジャスー! おーい! ジャスー!」
「あ! ニクスちゃん」
ニクスちゃんが手を振って空を飛んでこっちに来ていたので、私も手を振ってニクスちゃんに駆け寄る。
「明日には集落に戻るんやろ? 親にお願いして、一日早う会いに来たんよ」
「本当!? 嬉しい!」
私とニクスちゃんは両手で握手して、その場でピョンピョンと跳ねる。
そこで私は「あ。そうだ」と、先程拾った財布を取り出す。
「財布を拾ったのだけど、届け出を出来る場所って何処にあるか知ってる?」
「ここ等辺やと、町を警備しとる兵隊さん達の詰所になるかなぁ?」
「なら、そこまで案内してもらってもいいかな?」
「ええよ。任せて」
ニクスちゃんの案内で詰所まで行く途中にも、相変わらず色んな物が落ちて来る。
私は危ないので、頭上に重力のカーテンを敷いて、物が落ちて来ても命中せずに逸れるようにした。
それを見たニクスちゃんが、「わぁ」と歓声を上げる。
「これって、この前の、雨がウチ等を避けてたのと同じ魔法なん?」
「うん。結構便利でしょう?」
「せやなぁ。ええ魔法やね」
「えへへ」
ニクスちゃんに褒められて、私は上機嫌になる。
そうして、上機嫌のまま詰所へ到着をすると、詰所の中から女性の大きな怒声が聞こえて来た。
「あなた方は、この国の兵士なのでしょう!? それなら、しっかりと働きなさい!」
私とニクスちゃんは、何だろう?と、詰所の中を覗きこむ。
「この町で起きている風の停止は、どう考えても魔族の仕業です! それだと言うのに、何故この町の兵は何もしないのですか!?」
わあ。
綺麗な人。
怒って兵隊さんに詰め寄っている女性を見た時の、私の第一印象はそれだった。
綺麗な空色の長い髪のポニーテール。
目はつり目で赤紫色の瞳も、宝石の様に綺麗な瞳。
着ているメイド服の上からでもわかる、スラッとしていて美しい体。
もしかしたら、私が今まで見て来た大人の女性の中で、一番綺麗な人かもしれない。
生メイドだよ!
きゃー!
生のメイドさんなんて、初めて見るよぉ!
「仰りたい事はわかりますが、その魔族も見当たりませんし、どうする事も出来ないのです。今は被害者が出ない様に、注意を払う事しか出来ないのです」
「では、魔族の捜索隊を出さないのは何故なのですか?」
「それは……。言えません。極秘事項に関わる事なので、一般市民の方には知らせるなと命令が出ています」
「……わかりました。いいでしょう。では、本来の私の目的を果たさせて頂きます」
メイドのお姉さんが諦めて、ため息を一つつき「この位の」と、両手で大きさを表現して続ける。
「財布を落としてしまったのですが、こちらに届いてはいないでしょうか?」
あ。
それって。
「届いていないですねー」
私は先程拾った財布を取り出して、メイドのお姉さんと兵隊さんの前に出た。
「お姉さんが落とした財布って、これであってる?」
私がそう言って財布を見せると、メイドのお姉さんは驚いた顔をした後に、凄く優しく私に微笑んだ。
その微笑みは凄く綺麗で、やっぱり今まで見て来た大人の女性の中で一番綺麗だった。
まさに、大人の女性と言う感じだ。
「ええ。間違いないわ。ありがとう」
「うん」
私はメイドのお姉さんに財布を渡して、入口のあたりで成り行きを見守っていたニクスちゃんの元へ戻る。
そうして、振り返ってメイドのお姉さんに「バイバーイ」と手を振って別れた。
「ええ事したね」
「うん」
私はニクスちゃんに元気よく返事をすると、さっきのメイドのお姉さんと兵隊さんの話を思い出す。
やっぱり、この町の状況は魔族が関わってたんだね。
と言うか、村を出てからの、魔族の遭遇率が高すぎるよね?
また関わっちゃうのかな?
そうだとしたら、関わり合いたくないなぁ。
だって私、実はニクスちゃんと再会した時に気がついちゃったんだよね。
魔族が何で町の風を止めたのか。
私は空を見上げる。
風が消えた事によって、スカートを穿いた鳥人の女の子達が空を飛んでいる。
ほら。
見えるでしょ?
女の子達のパンツ。
私は目に映るスカートの中身を見て、まだ見ぬ変態に心を悩まされるのであった。




