054 幼女の後輩は村人と仲良くなりました
「魔族だってのに俺達を助けてくれるなんて、ありがとう!」
「世の中には良い魔族もいるのね」
「眼福じゃ~」
「彼氏は? 彼氏はいるんですか!?」
こらそこナンパしない!
そんなわけで、スミレちゃんを村の皆に紹介すると、一斉に色んな声が飛び交った。
スミレちゃんは忽ち大人気で、その見た目の美人さと、おっぱいの大きさで、特に男性陣から厚い信頼を得たようだった。
と言うか、皆おっぱいに目がいってるよ。
確かに凄くばいんばいんだもんね。スミレちゃん。
うんうん。
おっぱいは偉大だ。
私は貧乳派だけどね。
私がそんな事を考えていると、背後から「ねえ」と、声をかけられる。
私は振り向いて、声をかけて来た相手を見る。
声をかけて来たのは、いつかの私の悪口を言っていた2人のモブ顔のお姉さんのようだ。
な、なんだろう?
また何か言われるのかなぁ?
「貴女の事、見直したわ。魔性の幼女の通り名は伊達じゃなかったのね」
いやいや。
伊達じゃなかったのねって、何言ってるの?
それ、お姉さん達が勝手につけたやつだよね?
「今度から貴女の事は、魔族を手懐けると言う意味を込めて、魔性の幼女と呼ぶことにするわ」
え?
やだそれ。
やめて?
それだと、結局一緒みたいなものだよね?
だって、結局は魔性の幼女呼びなんでしょう?
「あなた達。ようやく気がついた様ね」
すると、そこでブーゲンビリアお姉さんが話に交ざる。
「ジャスミンちゃんの魅力は種族を超えるのよ」
「ふふ。貴女の言う通りね。ビリア」
「ええ。そうね。私達間違ってた」
よくわからないけど、3人とも仲直りできたみたい。
最近3人でいる事が無かったから、少し心配したんだよね。
仲直りのきっかけが、ツッコミたい事だらけだけど、ここは水に流そう。
「ところでジャスミンちゃん。村長が帰る準備をするようにと言ってたから、早く荷物を整理した方が良いわよ」
「え!? 本当? 急がなきゃ! 教えてくれてありがとう!」
私は急いで、荷物の置いてある場所まで走り出す。
えーと。
持ち帰る用のチョコの実は袋に詰めたけど、あれって幾つか睡眠効果入りなんだっけ?
あーん。もう!
仕分けしてる時間なんてないよぉ!
結局チョコアイスを作れなかったし、最悪だよ!
荷物置き場まで戻って来ると、パパとママの姿を発見した。
あ。
パパとママだ。
あれ?
パパがママにすっごい謝ってる?
「ジャスミン!」
私がパパとママに近づくと、ママが私の名前を呼んで、力強く抱きしめて来た。
「ま、ママ!?」
「無事で良かったわ」
「うん」
あぁ。そっか。
心配かけちゃったんだ私。
「ごめんジャスミン。護るって言ったのに!」
「気にしなくて良いよ。パパ」
そう言えば、チョコの実狩りに行くって聞いた時に、パパがそんな事を言っていたっけ。
ふと私は思い出す。
パパが、私とママを魔族から護るって言っていた事を。
それなのに、パパはチョコの実を食べて眠っちゃったから、結局何も出来なかったのだ。
話を聞くと、ママが怒っていたのは、自分はともかく娘を護ってやれないなんてって怒っていたみたい。
パパが何だか可哀想なので、私からママの怒りを治めてあげた。
だけど、帰りは私の大荷物をパパが全部持つと、反省の意味を込めてする事になった。
ママの怒りが治まる頃、村人から解放されたスミレちゃんがやって来た。
「幼女先輩~」
「あ。スミレちゃん」
と言うか、その幼女先輩って言うのを、私の両親の前で言うのやめて?
「幼女先輩?」
ほら!
ママがすっごい眉を顰めてるよ!
「ジャスミン。幼女先輩って?」
「え、えーと……」
私が言い淀むと、スミレちゃんがその豊満な胸を張って、ドヤ顔で説明しだす。
「幼女先輩とは、元々アーケードゲームで遊ぶ幼女に対して、尊敬の意味を込めて呼ばれたのが始まりなのです」
え?
ガチな説明始まっちゃったよ?
「アーケードゲーム?」
うん。
そうだよね。
ママには分からないよね。
「以来、私は尊敬できる幼女に対して、幼女先輩と呼ぶようになりましたなのです」
「よくわからないけど、わかったわ」
え!?
わかっちゃったの!?
「幼女先輩か。先輩だなんて、かっこいいわね?ジャスミン」
かっこいい!?
「そうだな。幼女先輩か。かっこいいじゃないか」
パパも納得しちゃったの!?
「ジャスミンったら、魔性の幼女と言われたり幼女先輩と言われたり、ママ達の知らない間に随分と成長したのね」
嘘!?
魔性の幼女の件も知ってたの!?
しかも好印象!?
何で!?
「あ。自己紹介が遅れましたが、ジャスミンのママです。ルピナスちゃんから聞きました。救って下さり、ありがとうございます」
「いえいえ。こちらこそ、幼女先ぱ、娘さんにいつもお世話になってますなのです」
うう。
娘に変なあだ名つけられたのに、何で好印象なのか聞こうと思ったのに、3人で自己紹介始めちゃったよ。
まさか、魔性の幼女って呼ばれ方まで知っていたなんて。
しかも好印象だし……。
パパとママの思わぬ反応に、私はどんよりした気持ちになる。
これ、私の感性がおかしいわけじゃないよね?
何だか不安になってきたよ。
私は頭を抱えて悩み、結局は深く考えるのはやめようと結論付ける。
そんなわけで、『魔性の幼女』と『幼女先輩』が親公認になりました。




