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053 幼女と忘れられていた男の娘

 私達がチョコ林まで戻って来ると、リリオペがチョコ林の入り口で私達に手を振って出迎えてくれた。


 あれ?

 オぺ子ちゃんじゃなくなってる。

 それに、頭に葉っぱがいっぱいくっついてる。

 どうしたんだろう?


「リリオペ。頭に葉っぱがくっついてるよ」


「え? あ。本当だ。ありがとう」


 リリオペは頭についた葉っぱを払うと、恥ずかしそうに苦笑した。


「気がついたら木の上でさ。村の皆から見つからない様に木から降りてたら、服が破れちゃったんだ」


「わぁ。大変だったのねぇ」


 なるほど。

 それで、オぺ子ちゃんの姿じゃないんだね。

 うん?

 気がついたら木の上?

 ……あっ!


 私はそこで思い出す。

 大きなゴブリンが登場した時に、オぺ子ちゃんとなったリリオペが担がれていた事を。


 そうだよ。

 たしか、私がスミレちゃんを呼んだ時に、スミレちゃんがゴブリンを吹っ飛ばして……。

 うん。

 これは私の心の奥にしまっておこう。


「それより、その魔族のお姉さんって……」


「え?」


 リリオペが恐る恐るスミレちゃんを見る。


 あ。そうだった。

 つい、そのまま一緒に戻ってきちゃったけど、見つかったらヤバかったんだよね。


「えーと、この魔族のお姉さんは――」


「ゴブリン達を追い払ってくれたって、ルピナスちゃんから聞いたんだ。この間の、あの時の魔族のお姉さんだよね。ありがとうございます」


 ルピナスちゃんナイスだよ!

 流石は私のルピナスちゃん!

 天使可愛いだけあるー。


「どういたしましてなのよ」


「スミレの事をルピナスちゃんが話してくれてるのね。なら、このまま皆の前に出ても、大丈夫そうよね?」


「大丈夫だと思うよ。むしろ、村の皆も感謝をしたいって言っていたよ」


「そうなんだ? スミレちゃん。それなら、このまま皆の所に一緒に行こうよ」


「わかりましたなのです」


 リリオペの案内で、村の皆が待っている場所まで歩く。

 すると、歩いている途中で、たっくんが「おーい」と言ってやって来た。

 そして、たっくんは私達に近づくと、私達の顔を1人1人確かめるように見だす。

 全員の顔を見終わると、少しがっかりしたような顔になる。


「たっくん? どうしたの?」


「え? ああ。ごめん。オぺ子ちゃんも一緒にいるかなって思ってね。でも、どうやらいないみたいだ。何処に行っちゃったんだろう? リリオペも知らないかい?」


 あー。

 そう言えば、ゴブリンに襲われる前に、たっくんとリリオペは一緒に行動してたんだっけ?


「え? あー。うーん……」


 リリオペがオぺ子ちゃんの事を聞かれて、本気で困っている。

 すると、その様子を見て何か勘違いをしたようで、たっくんの顔がみるみる青くなっていく。


「まさか、オぺ子ちゃんだけゴブリンに攫われてしまったままなんじゃ!?」


 そう言うと、たっくんは私達が歩いて来た方向へ走り出した。

 私は走り出したたっくんを、大声で呼び止める。


「たっくん待って! オぺ子ちゃんは無事だよ!」


 たっくんは私の言葉で止まり、振り返った。


「ジャスミン。それは本当かい?」


 たっくんが振り返って私を見ると、リリィが呆れた様子で私の前に立つ。


「本当よ。体が弱い子だから、先に町に帰ったのよ。ね? ジャスミン」


「う、うん。リリィの言う通りだよ」


「そうか。それなら良かった。村の皆に確認しようとも思ったんだけど、皆が気を使ってる子だろう? もしもの事を考えたら、怖くて聞けなかったんだ。本当に良かった」


 え? 皆が気を使ってる子?

 どういう事?


 私が意味が解らず困惑していると、それを察したリリィが私の耳元でそっと教えてくれた。


 オぺ子ちゃんは、凄く重い病気にかかっている設定。

 両親も一生懸命オぺ子ちゃんを看病していて、村の皆の前では悲しい気持ちだとかそう言うのを我慢して、明るくふるまっている設定。

 村の皆もそれを知っているから、無暗に話題にだして、心を傷つけない様にしている設定。

 私とリリィとルピナスちゃんとブーゲンビリアお姉さんは、オぺ子ちゃんと仲良し設定。

 双子の兄のリリオペと、仲良しの私達しかいない時だけは、話題に出しても平気な設定。


 随分と設定が多いんだね。

 と言うか、いつの間にそんな話になってたの?って感じだよ。


「ところで、その女性は助けてくれたって言う魔族の?」


「そうみたいですよ」


「貴女が助けてくれたんですね。ありがとう」


「お礼を言うなら、幼女先輩に言ってほしいなのよ」


 ちょっとスミレちゃん。

 幼女先輩って、それじゃ誰の事かわからないよ。

 それに、私は今回は本当に何もしてないし。

 やった事と言えば、暴走した2人を止めた事だけだもん。


「幼女先輩?」


「ジャスミンの事よ」


 と、リリィが補足。


「くくっ。ジャスミンは幼女先輩って、言われてるんだな」


 こらそこ! たっくん。

 笑いをこらえるんじゃありません!


「幼女先輩に呼ばれたから、結果的にあなた方を助けただけなのよ」


「そうだったのか。ありがとう。ジャスミン」


 たっくんはそう言うと、私の頭を撫でた。

 それを見ていたリリィが、たっくんに並んでボソッと呟く。


「オぺ子ちゃんに言うわよ」


 すると、たっくんはびくりと驚いて、私の頭を撫でていた手を離した。


「はは。頭を撫でていただけじゃないか」


「そう? なら、好きでもない女の子の頭を撫でるなんて、今後しない方が良いわよ?」


「そ、そうなのか?」


「そうよ」


 うーん。

 たしかに、好きでもない子の頭を撫でるのは、良くないと思う。

 でも、私とたっくんって、そう言うの気にする間柄でもないんだよね。

 兄と妹みたいな感じだもん。

 だいたい、大人と子供なんだから、気にしなくて良いと思うけどなぁ。


 私がそんな事を考えている横で、当の話題の本人のオぺ子ちゃんことリリオペは、苦笑してリリィとたっくんのやり取りを見ていた。


「幼女先輩、オぺ子ちゃんって、どんな子なのですか? 幼女であれば紹介してほしいなのです」


「え? えっとぉ……」


 チラリとリリオペを見ると、苦笑しながら、こくりと頷いてくれた。


「後で教えてあげるね」 


 そんなわけで、本人の許可も貰ったので、後で教えてあげる事にした。


 でも、オぺ子ちゃんの場合は幼女じゃ無いよね?

 うーん。

 まあ。いっか。

 可愛いしオッケーだよね。


「ジャスミンお姉ちゃーん」


「あ! ルピナスちゃん」


 そうこう話してる間に到着したみたいで、ルピナスちゃんが天使の様なはなまる笑顔で、私達を出迎えてくれた。

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