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052 幼女に手を出してはいけません

 スミレちゃんに薄い本を書いてもらう為に、私は土の魔法を使ってテーブルと椅子を用意した。

 すると、スミレちゃんは早速テーブルに紙を乗せ、1枚、また1枚と書き上げる。


 おお。


 私はその様子を興味津々で見続ける。

 そうして小一時間ほど経ち、スミレちゃんが立ち上がった。


「下書き程度の物しか書けなかったけど、それなりの物が書けたなのですよ」


 そう言って、スミレちゃんが私に書き上げた物を渡して来た。

 私はそれを受け取ると、中身を確認する。


 下書きって、たしか完成する前の段階だっけ?

 どんな感じなんだろう?

 ……わぁ。

 何これ凄い!

 めちゃくちゃ上手だよスミレちゃん!

 それに、凄くいやらしい!

 でも……。


「あの。スミレちゃん? この子って……」


「あ! 気がついたなのですか? そうなのです。モデルは幼女先輩なのですよ」


 はい。

 私の嫌な予感が当たりました。


「これ犯罪だよ!? 何書いてるのスミレちゃん!」


「幼女先輩は前世で30超えたおっさんなのですよね?」


「え? うん」


「モデルにしたのは、30超えたおっさんなので大丈夫なのです。セーフなのです」


「あ。なるほどそっかぁ…………アウトだよ!」


 私は頭を抱えてしゃがみこむ。


 こんなの絶対見せられないやつだよ!


 しかし、私からひょいっと紙を奪い、リリィがそれを見る。


「こ、これは!」


 リリィ。何か言ってやって!?


「私、貴女の事を誤解していたみたい」


 ええー!?

 鼻血流しながら、スミレちゃんと握手しだしちゃったよ!

 リリィのバカー!

 って、そんな事考えてる場合じゃない!

 早く回収しないと!

 って、あれ?

 さっきまでリリィが持っていた、アレが無くなってるよ?


 私はキョロキョロとあたりを見る。


「あー!」


 私は絶望に打ちひしがれて地面に膝をつき、がっくりと項垂れた。

 スミレちゃんが書いた私をモデルとしたアレを、既にオークやゴブリン達が見ていたのだ。


 終わった……って――


「そこー!腰に巻いた布を下ろそうとするなー!」


 私は石ころを拾い上げて、腰に巻いた布を下ろそうとしたゴブリンの頭に石を投げた。

 すると、私にゴブリン達が注目し、一拍置いてから雄叫びを上げた。


「ふぇ?」


 私は驚き身じろぐと、一斉にゴブリン達が私を囲む。


 ひぃぃ!

 これって、これってまさか、私もアレに書かれた内容みたいに!? 


 そして私は、抵抗する間もなく――


「何で胴上げ!?」


 胴上げをされました。


 え?

 意味がわからないよ?

 おかしな事にはならなかったのは良いけど、別な意味でおかしな事になってるよ?

 きゃー!

 ちょっと!

 どさくさにまぎれて、私のお尻触ったの誰?

 って、触ったのリリィッ?

 なんで一緒に胴上げしてるの!?


「お、降ろしてーっ!」


 私の必死な訴えもむなしく、それから暫らく胴上げは続く。





 胴上げから解放されると、私はリリィに訴える。


「どさくさにまぎれて、お尻触っちゃダメだよ!」


「ご、ごめんね。ジャスミン。何だかアレを見ていたら、ムラムラしちゃって」


 ムラムラって……。

 私なんかより、リリィの方がよっぽどおっさんしてるよ!


「幼女先輩。リリィも反省しているし、許してやってほしいなのですよ」


「スミレちゃん! そもそも、スミレちゃんが悪いんでしょう!? それに、オークには私がいるから、言葉に気をつけろ見たいな事を言っていたのに、それ以上の事をしちゃってるじゃない!」


 そうなのだ。

 スミレちゃんはオークから事情を聞いていた時に、そんな事を言っていたのだ。

 それだと言うのに、何であんなものを!?


「いやあ。書き出したら止まらなくなってしまったなのですよ」


 たいした理由でなかった事に、私はドッと疲れが出た気がした。

 その時、1人蚊帳の外で延々とスミレちゃんが書いたアレを見ていたオークが、急に大声を出す。


「ジャスミンたんは俺の嫁!」


 その瞬間、リリィのドロップキックとスミレちゃんの跳び蹴りがオークを襲う。


「バティン様、いいや神様! すみません。調子に乗りました」


 と、すっかり土下座が板についたオーク。


「幼女先輩の事は、幼女先輩と呼べ豚野郎! なのよ」


 え?

 そこ?

 そこなの?スミレちゃん。


「幼女……先輩…………」


 そうオークが口にすると、ゴブリン達が「幼女先輩」と口々に喋り出した。 


 え?

 本当に何これ?

 それにどうでもいいけど、あの大きなゴブリン以外のゴブリンも喋れたの!?


 そこで、スミレちゃんが指を鳴らした。

 すると、オークとゴブリン達がスミレちゃんを囲ってひざまずく。


「幼女先輩は崇高なお方なの。お前達家畜が、手を出して良いお方ではないなのよ」


 あれ?

 なんか始まったよ?


「お前達が手を出して良いのは、ここに描かれた子のみなのよ!」


 いやいや。スミレちゃん。

 その子のモデル私だよね?


 リリィがスミレちゃんの横に立ち、アレを掲げた。

 すると、オークとゴブリン達が「ははぁ~」と、時代劇なんかで殿様に家来たちが平伏ひれふす時の様なしぐさをした。


 何だこれ?

 どうしよう?

 もうついていけない。


「オーク。前へ出ろなのよ」


「はい」


「オーク。お前には、こいつ等家畜共のボスとして、私の絵描きの技を伝授してやるなのよ」


「ありがとうございます!」


「精進するなのよ」


「はい!」


 こうして、一連の事件は幕を閉じました。


 じゃないよ!

 最悪だよ!

 リリィもゴブリン達と一緒になって、騒いでないで止めてよ!

 何で凄く仲良くなっちゃってるの!?

 だからそこ!

 腰に巻いた布を下ろそうとするなーっ!

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