051 幼女はオークに同情する
ゴブリンの襲撃を受けてから、早一時間。
ゴブリン達の大先生。基、親玉となっていたオークと話し合う為に、場所を変える事になった。
ゴブリン達が鎮静化した事でわかった事だけど、ルピナスちゃんのパパとママも眠っていなかったようで、村の皆や被害にあった人達の事を任せる事にした。
ルピナスちゃんも皆に説明をする為に、その場に残ってくれた。
だから、オークとの話し合いは、私とリリィとスミレちゃんの3人で行う。
チョコ林からしばらく歩いて、リリィがゴブリン達を地べたに座らせて、こほんと咳払いを一つしてお話は始まった。
「それで、女性を攫っていたのは、どういう了見なのかしら? 貴方、以前反省したはずよねえ?」
1人正座中のオークの足の上に、リリィが足を乗せて、ゴミを見るような目でオークを睨みつける。
「じ、実はあれから色々あって、バティン様が戻られなくなった領域から無事に生還した者として、魔族の間で称賛されたんです」
オークが照れながら頭をかく。
「それで、オラはゴブリン達のボスとして、この地をまかされたんですよ」
そっかぁ。
スミレちゃんって幹部だったから、その影響が魔族の間で出ているんだね。
「それで、ここでは女の人達を攫って、何をやっていたなの?」
今度はスミレちゃんがオークの後頭部に、親指くらいの大きさの火をつけて、拷問しだす。
さっきまで照れ顔だったオークは、一瞬にして顔を強張らせて、額から汗を大量に流し出した。
こわ!
え?
何それ?
なんだか凄く怖いよスミレちゃん!
「それは、勿論ゴブリン族の繁殖こ―――」
オークの顔が燃える。
「ギャーッ!」
その光景には、私も思わずニッコリ笑顔。
なわけあるかー!
容赦無さ過ぎだよスミレちゃん!
「ストップ! ストーップ! スミレちゃん落ち着いて!?」
私は魔法でオークの顔に水をかけて、火を消した。
「ここには幼女先輩がいるなのよ? 貴様は、どの口引っさげてもの申してるなのよ? 言い方に気をつけろなの」
スミレちゃんが物凄く怖い形相で、オークを睨みつける。
「申し訳ございませんー!」
オークは頭を地面に叩きつけて、勢いよく土下座をした。
その光景を見て、ゴブリン達は恐怖で震えだす。
「でも、バティン様。ゴブリン達を統率しないと、どちらにしても、むやみに女を襲いますよ!?」
オークが頭を抱えて必死に訴える。
「こいつら猿みたいなもんです! ある程度のルールを決めて行動の制限をつけないと、好き勝手に手あたり次第に手を出すんですよ! 運よく今の所、他種族の女を襲っていませんでしたが、もう限界なんです!」
ついには、情けない顔をして、スミレちゃんの足にしがみついた。
う、うーん。
醜い。
ほら。
スミレちゃんもリリィと同じように、ゴミを見るような目でオークを見だしちゃったよ。
でも、ちょっとオークが可哀想かも。
それにしても、まだ被害者いなかったんだね。
すごく安心したよ。
未遂なら、リリィとスミレちゃんにゴブリン殺しをさせなくて、本当に良かったよ。
「上層部の幹部の方々も、使い物にならんって見捨ててるんですよ!」
酷い言われようだなぁ。
でも、そうなのかぁ。
ちゃんとしないと、ところ構わず女の人を襲っちゃうって事だよね?
今までは被害が無かったとしても、これからどうなるかなんてわからないもんね。
そうなると、もの凄く困っちゃうよね。
と言うか、見捨てられるって、どんだけ問題児なのゴブリン。
「そんな事はどうでも良いなの。事情はわかったけど、だからと言って、このまま見過ごす事は出来ないなのよ」
スミレちゃんが冷たくオークをあしらう。
「やっぱり、皆殺しが良いと思うのよね」
ちょっとリリィ。
すっごく良い笑顔で、そんな怖い事言うのやめて?
「私も同意なのよ。それが一番良い方法だと思うなのよ」
こらこら。
スミレちゃんも同意しないの。
私はため息をつく。
要するに、性欲を持て余したゴブリン達をどうにか出来ればいいんだよね?
でも、いったいどうすれば良いんだろう?
正直何も思いつかないよね。
私は腕を組んで、「うーん」と唸る。
あ。もし自分だったらって、考えてみよう。
前世の私だったら、そうだなー……。
夏と冬のお祭りで、薄い本を買いまくるかも。
そう思った時、ふと口から出る。
「この世界にも、薄い本があれば良かったのになぁ」
「薄い本?」
リリィが頭に?を浮かべる。
う、うん。
そうだよね。
わかんないよねー。
私がそんな事を思いながら苦笑すると、スミレちゃんが「なるほどなのですよ」と、ポンッと手を叩いた。
「さすが幼女先輩なのです。目の付け所が違うなのですよ」
そして、スミレちゃんが自らの豊満な胸の谷間に、手を突っ込んだ。
「え?」
私が少し顔を赤らめてそれを見ていると、スミレちゃんは胸の谷間から紙とペンを取り出した。
「紙とペン? と言うかスミレ、いつもそこに物を入れてるわね?」
「何かと便利なのよ。それより、幼女先輩。私にお任せなのですよ」
「もしかして、書けちゃうの?」
「夏と冬のお祭りで、壁になる程度には、そこそこ自信があるなのです」
「壁!? 凄いっ! 壁って、人気の人しかいけない場所だよね! かなり凄いよ!」
「よくわからないけれど、そんなに凄いの?」
私とスミレちゃんの話に、リリィが頭に?を浮かべる。
まさか、この世界で壁サークルの薄い本が見られるなんて!
嬉しすぎるよ!
きゃー!
凄く楽しみだよぉ!
後でイラスト付きでサイン貰っちゃおうかなぁ!
「前世では丁度オリジナルも書きたいと思っていたし、ここには良いモデルもいるので、即興ですが任せて下さいなのです」
「うん! …………うん?」
オリジナル?
良いモデル?
あれ?
何だろう?
凄く嫌な予感がするよ?
き、気のせいだよね?




