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046 幼女とイケメンは仲が良い

「ジャスミーン!」


 リリィ達と一緒にチョコの実をもぐもぐと頬張っていると、背後からたっくんに呼ばれて振り返る。


「たっくん?」


 振り返ると、困り顔のたっくんと、取り巻きの2人のお姉さんから威圧的な眼差しを同時に受けた。

 取り巻きのお姉さんとは、元?ブーゲンビリアお姉さんの、モブ顔をしているお友達の2人の事だ。


 うわぁ。

 お姉さんが、物凄い怖い顔でこっち見てるよぉ。

 あ。

 私の顔見たら、たっくんの後ろでひそひそ話始めたよ。

 あまり考えたくないけど、あれって私の悪口だよね?

 嫌だなぁ。


 リリィがたっくんを睨みつける。


「何しに来たんですか?」


 リリィは相変わらずたっくんが嫌いなようで、言葉とは裏腹に言い方にトゲがある。


「ははは。リリィは相変わらずだな。荷物を持ってあげたじゃないか」


 たっくんが苦笑して答えると、ブーゲンビリアお姉さんがたっくんを睨みつけた。


「あげたですって? 恩着せがましいわね」


 ブーゲンビリアお姉さんまで喧嘩腰だ。

 リリィとブーゲンビリアお姉さんに睨まれて、たっくんは顔を青くして後ずさる。


 そう言えば、ウザいみたいな事言ってたっけ?


「そんなつもりじゃ。って、そんな事よりジャスミン」


 たっくんが私の目の前まで来て、しゃがんで声を潜めて話しかけてきた。


「どうしたの?」


「あの2人がしつこいんだよ。少し話を合わせてくれないかな?」


 なるほど。


 たっくんは取り巻きの2人のお姉さんとは、仲良くチョコの実狩りをする気が無いらしい。


 たっくんって顔はイケメンで良い人だけど、かっこ悪いよね。

 普通は私みたいな子供に、こんな事を頼まないもん。

 でも、私とたっくんの仲だもんね。

 慎んでお受けしましょう。


「いいよ。でも、今度美味しい木の実を取って来てね」


 ちゃっかりと報酬を要求するのを忘れない。

 私は策士なのだ。


「ははは。もちろん」


 たっくんは満足そう笑うと、腰を上げて、取り巻きの2人と向き合った。

 そして、それを見ていたリリィとブーゲンビリアお姉さんが、たっくんを睨みつける。


 うわぁ。

 凄い睨んでるよ。

 2人とも、たっくんの事そんなに嫌いなの?

 もう少し仲良くすればいいのに。

 パパも言っていたけど、たっくんは凄く良い人なんだけどなぁ。


「悪いんだけど、今からジャスミンと一緒にチョコの実を取る約束をしていたんだ。な? ジャスミン」


「うん。お兄ちゃんと約束してたの」


 私はそう答えると、たっくんの片足をギュッと抱きしめて、目をうるうるとさせてお姉さん達を見た。


 食らえ。

 必殺幼女の、ぎゅっぎゅっからのうるうる顔だよ!

 目の前で小さい女の子がこんな事したら、断れないでしょう?

 私は策士なのだ!


「えー! でもぉ。その子、他の子達と一緒だし、私達と一緒の方がいいよ~」


「そうよ。そんな子ほっといて、私達と一緒にいた方が楽しいってー」


 あれ?

 全く効いてない?

 使いどころ間違えたかな?

 私だったら、断れなくなるんだけどなぁ。


 すると、ルピナスちゃんがもう片方の足に、私と同じようにギュッと抱きついた。

 そして、私にニコニコはなまる笑顔を向けてきた。


 きゃー!

 めっちゃ可愛い!

 写真撮りたい!

 可愛すぎるよルピナスちゃん!


「おりゃぁっ!」


「ふげっ」


 私がルピナスちゃんの魅力に興奮していると、たっくんの後頭部にリリィのドロップキックが炸裂。

 それをまともに食らったたっくんは、変な声を出して地面に突っ伏して倒れた。

 そして、地面に倒れたたっくんの後頭部にリリィが足を乗せて、取り巻き2人に笑顔を向ける。


「ごめんなさいねー。この男は今から予定入ってるから忙しいのよ。だから、貴女達とはご一緒出来ないのよ~」


 リリィ?

 目が笑ってないよ?


「そうそう。2人には悪いけど、これから大事な大事な用事があるのよ」


 そう言って、ブーゲンビリアお姉さんまでもが、笑顔でたっくんの背中に足を乗せる。


 ビリアお姉さま?

 目が笑ってないよ?


「そ、それなら仕方がないわね」


「そ、そうよね。行きましょ」


 取り巻きの2人が顔を真っ青にして、走ってこの場から逃げていく。


 うーん。

 まあ、そうなるよね。


 取り巻きの2人がいなくなると、ルピナスちゃんがリリィとブーゲンビリアお姉さんに近づく。


「お姉ちゃん達、足を乗せたら可哀想だよ」


 ルピナスちゃんが、リリィとブーゲンビリアお姉さんに「めっ」する。


 きゃー!

 可愛いよぉ!

 私も「めっ」てされたい!

 って、いかんいかん。

 しっかりしろ。

 煩悩に負けるな私!


「うふふ。あらやだ私ったら。ごめんね。ルピナスちゃん」


「そうよね。ごめんね。ルピナスちゃん」


 そう言って、リリィとブーゲンビリアお姉さんは足をどけた。


 ねえ2人とも、謝る相手間違えてるよ?


「やれやれ。酷い目に合ったよ」


 足をどけられると、たっくんが起き上がる。


「過程はどうあれ助かったよ。ありがとうジャスミン。それに皆も」


「どういたしまして」


 結局、私は何の役にも立たなかったけど、一応返事をする。

 そこで、たっくんが私の持っているチョコの実がいっぱい入っている袋を見た。


「それは持ち帰り用?」


「ううん。チョコの実を使って、チョコアイスを作るの」


「チョコアイス?」


「うん。たっくんも食べる?」


「それじゃ、頂こうかな」


 リリィとブーゲンビリアお姉さんが、あからさまに嫌そうにたっくんを見たので、私はそんな2人の顔を見て苦笑する。

 そして、袋に入ったチョコの実の数を確認する。


 結構ある。

 これなら、いっぱい作れそうだよね。

 よし。

 パパも待たせてるし、今からチョコアイスを作りに行こうかな?


 私がそんな事を考えていると、ルピナスちゃんがリリィに「楽しみだね」と言っている声が聞こえてきた。


 うん。

 そうしよう。

 ルピナスちゃんの期待に応えなきゃ!


「それじゃあ、今からアイスを作りに行くね」


「やったー」


 ルピナスちゃんがバンザイして、尻尾をフリフリとさせる。


 尻尾をフリフリさせて喜ぶルピナスちゃん可愛い。


「早く行こうよ。ジャスミンお姉ちゃん」


 よっぽど楽しみにしていたのか、ルピナスちゃんが今にも走り出しそうな勢いで、私の手を取る。


「うん。行こう!」


 私は返事をすると、ルピナスちゃんに手を引っ張られて、駆け足で調理場へと向かった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 脈絡もなく蹴られたり邪険にされたりしても「酷い目にあったなあ」で済ませてくれるたっくん、かなりひとができているのでは……? これはモテるのにも納得です。
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