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045 幼女と始めるチョコの実狩り

 チョコ林。

 そこは、チョコの実が生る素敵な林。

 チョコ林に生るチョコの実は、サクランボの様な大きさと形状をしている。

 そんなチョコの実が生るこのチョコ林は、チョコの甘い香りがただよい続け、女の子達に幸せを運んでくれる素敵な場所だ。


 そして、もちろん私も例外ではない。

 私はチョコ林に到着してから幸せすぎて、テンションがやや高めになっていた。

 だけど、私は前世で30年以上生きた大人のレディ。

 大人の余裕を見せつけて、高まった感情を抑えて、冷静に行動を移しだす。


 ふふーん。

 ここで感情に任せて、チョコの実に手を出すのは素人のやり方だよ。


 まずは荷物を持ってくれているたっくんを連れて、チョコ林に設置されている簡易な調理場まで移動する。

 私は荷物を置いてもらうと、荷物を整理しながら必要な物を取り出し始める。


「ジャスミン。色々準備してきたのね?」


 私が荷物の整理をしていると、リリィが興味津々に顔を覗かせた。


「うん。チョコの実狩りのプロとしては、これくらい当然だけどね!」


「うふふ。随分と気合が入っているのね」


 リリィが私の頭を撫で始めたが、私はそれに構わず作業を続ける。

 まずはハンカチとティッシュ。

 チョコの実に合う美味しい紅茶が入った水筒。

 後でチョコアイスを作る為に、チョコの実を入れる袋。

 それと、チョコの実をその場で食べる時に出るゴミを入れる紙コップ。

 私は準備を終えると、パパとママの姿を捜した。


 パパ、もう大丈夫かな?

 ……あ。いた!


 パパとママの姿を見つけて駆け寄ると、パパが「心配かけたね」と言って苦笑した。

 パパの体調はだいぶ良くなったようだ。

 それから、パパが荷物番をしてくれるようなので、荷物を置いた場所を教えた。

 ママはママ友と一緒に、チョコの実を取る事にしたようなので、紙コップとハンカチとティッシュを渡してあげた。


 よし。

 こっからが本番だよ!


 私は気合を入れて、チョコの実狩りを始めようした時、リリィが話しかけてきた。


「もう終わったの?」


「うん。って、あれ? 待っててくれたの?」


「もちろんよ」


「ありがとう。でも、いつの間にかいなくなってたから、先に行っちゃったと思ってたよ」


「ママとパパに、ジャスミンと一緒にチョコの実を取るって言い忘れていたのを思い出して、言いに行ったのよ」


「そうなんだ」


「それじゃあ、行きましょう」


「うん!」


 私は元気に返事を返して、リリィの手を取って繋いで歩き出す。

 チョコの実がたくさん生る場所まで移動すると、私はいよいよ興奮を抑えきれなくなってきていた。


「リリィ! リリィ! 着いたよ! チョコの実いっぱいだよ!」


「うふふ。そうね」


 興奮する私を、リリィが優しく微笑む。


「それにしても、ここまで来るとわかるけど、私達の村の人以外の人もたくさんいるわね。って、あら? あそこにいるの、ルピナスちゃんとビリアじゃない?」


「え? どこどこ?」


 リリィが向けた視線をたどると、そこにはルピナスちゃんとブーゲンビリアお姉さんがいた。

 ブーゲンビリアお姉さんがルピナスちゃんを肩車して、チョコの実を取らせてあげているようだ。


 そう言えば、荷物を置きに行く時に別れたんだっけ?


 その時、2人の話が聞こえてくる。


「あれ? これ、何か変な臭いするよ?」


「え? どれどれ? ……うーん。私にはわからないなぁ」


 私はリリィと一緒に、2人に近づいた。


「どうしたの?」


「あ。ジャスミンお姉ちゃん! これ、変な臭いがするの」


 私はルピナスちゃんからチョコの実を受け取って、鼻に近づけてにおいを嗅いでみる。


 すんすんすん。

 うーん。


「とくに変な臭いは、ついてないと思うけど……」


 すると、リリィが「そうねえ」と言って、私が持っていたチョコの実のにおいを嗅いだ。


「ルピナスちゃんは狼の獣人だから、私達より鼻が良いし、何か嗅ぎ取っているのかもしれないわね」


「リリィの言う通りかも」


 私はリリィに同意して、他のチョコの実を取る。


「ルピナスちゃん。こっちはどう?」


 そう言って、ルピナスちゃんにチョコの実を渡す。

 チョコの実を渡すと、ルピナスちゃんは匂いを嗅いだ。


「これは良い匂い」


 変な臭いのチョコの実と、良い匂いのチョコの実は、どちらも同じ木になっていたものだった。

 私は何でだろうと、頭に?を浮かべる。


「気にする事でも無いんじゃない? ほら。皆食べてるし」


 そう言って、ブーゲンビリアさんが周囲を見る。

 私もそれにつられて周囲を見ると、確かに他の人達は気にする様子もなく、次々とチョコの実を口に運んでいた。


「そうね。普通に美味しいわよ。ジャスミン」


 気が付くと、リリィがさっきのチョコの実を食べていた。


「そっかぁ」


 そこまで気にする事でもないのかな?

 でも、やっぱりちょっと気になる~。

 あ。そうだ!


 私は適当に何個かチョコの実を取り、ルピナスちゃんににおいを嗅いで貰って、良い匂いと変な臭いのチョコの実を分けた。

 そして、両方のチョコの実を少しだけかじる。


 もぐもぐ。ごっくん。

 もぐもぐ。ごっくん。


 あれ?


 私は少し味が違う事に気がついた。


「ねえねえリリィ。これ食べ比べてみて?」


 私はそう言って、自分がかじったチョコの実を渡す。


「ええ。良いわよ」


 リリィは私が渡したチョコの実のかじった部分を舐……見なかった事にしよう。

 リリィがチョコの実を食べる。


「ルピナスちゃんが変な臭いがするって言った方は、ちょっとだけ味が違わなかった?」


「そう? 私には、わからなかったわ」


「そっかぁ」


 私にしかわからない程度の違いなんだね。

 それなら、そこまで気にしなくていいのかな?

 でも、何だか凄く嫌な予感がするよ。

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