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043 幼女が童貞を拗らせる

「ジャスミン! この後、お風呂を一緒に入りましょう!?」


「ふぇ」


 リリオペの恋の悩みを受けた日の夜。

 私の家族とリリィの家族で、ホテルのレストランで食事をしていたら、リリィが物凄く真剣な面持ちで私の顔を見て質問をしてきた。

 私は絶賛頬張り中だったので、ごっくんしてからリリィに答える。


「い、いいよ」


 私の返事を聞いたリリィの顔から、満面の笑みがこぼれた。


「やったわ! 昨日の夜は色々あって、一緒にお風呂に入れなかったでしょう? だから、凄く残念だったのよ」


「この子ったら、お風呂に入った後に、大声で誘うの忘れてたって言って大騒ぎだったのよ」


 リリィのママが呆れた様子で、リリィを見る。


「うふふ。可愛いらしくていいじゃない。ねえ?アナタ」


「そうだね。ジャスミン、いつもリリィちゃんのお世話になってるんだ。背中を流してあげたらどうだ?」


「うん。お背中流してあげるね。リリィ」


 ママとパパの意見に、私は心の中で全力で同意する。


 一緒にお風呂に入りたいだなんて、やっぱりリリィも子供なんだなって思えて、凄く可愛いよね。

 それに、いつもお世話になってるんだもん。

 お背中くらい、感謝をこめていっぱい流しちゃうんだから!


「今から楽しみだわぁ」


 リリィったら、すごく喜んじゃってる。

 えへへ。

 なんだか、私もだんだん楽しみになってきたよ。


 と、思ったのも束の間の事だった。

 私はこの時、忘れてしまっていたのだ。

 自分が、前世でどんな男だったのかを。





 食事が終わって、リリィと一緒にお風呂に入る為に、脱衣所で服を脱いでいる最中の事だった。

 私はリリィの裸を見て赤面し、リリィを直視できなくなってしまい、頭を抱えてしゃがみこんだ。


 やばいよ!

 思わぬ誤算だよ!

 裸の女の子なんて、見れるわけないでしょー!?


 私は前世で童貞だった。

 だから、もちろん前世で女の子の裸を、生で見た事が無い。

 むしろ女の子の裸なんて見たら、逃げ腰になってしまうチキン野郎だったのだ。

 そして今、そんな前世の自分の記憶が邪魔して、現在の私にまで悪影響を及ぼしている。

 残念な事に、更にとどめと言える一つが、決定的にそれを加速させる。

 その一つとは、私が前世でロリコンだった事だ。

 ロリコンだったので、子供の裸なんて見てもなー。と、いった感じになったりしない。


 お ち つ けーっ!

 落ち着くのよ私!

 今は私も9歳の女の子なんだよ!?

 ロリコンを拗らせてどうするのよ!?

 こういう時こそ、長年培ってきた大人の余裕を見せつける時!

 そうだよ!

 こんなの、まだ焦るような段階じゃないじゃない!

 それに、リリィは9歳とは思えない位に、発育が良いんだもん!

 出る所がちょっと出てて、腰に若干くびれだってある!

 リリィの体つきは、ギリでロリコン向けじゃない!

 はず! ……くっぅ。

 ダメだ。

 思った以上にダメージがでかいよ!

 考えてみれば、もろ成長途中の体つきだから、私とは別のタイプのロリコンがよだれを垂らすレベルだよ!

 リリィったら、恐ろしい子!

 ううん。

 目を覚ますのよ。

 大丈夫よ私。

 落ち着いて?

 今の私は同じ女の子!

 女の子が女の子の裸で興奮するなんて、そんなの大好物……じゃなかった。

 違う。そうじゃない!


 私は頭の中で、そんな長ったらしい葛藤かっとうをしていたが、そこで妙な事に気がついた。


 あれ?

 何だか、変な視線を感じるよ?


 顔を上げると、いや。

 上げるまでもなかった。

 しゃがみこんでいた私の目の前で、リリィが横になって顔をこちらに向けて、鼻血を垂らしながら体の一部をずっと見ていた。

 リリィの視線を追って、その視線の先を見る。


「ぴゃっ……!」


 私は恥ずかしさを込み上げて、頭に血が勢いよく上るのを感じた。

 何故なら、リリィの視線の先が……。


「バカーッ!」


 私がリリィの頬をはたき、ペチコーン!と、脱衣所に音が鳴り響く。


「うふふ。さあ、入りましょう」


 リリィがまるで何事も無かったかのように、もの凄く良い笑顔で頬をらせながら立ち上がる。


「もぉ!」


 入りましょうじゃないよ!

 リリィってば、油断も隙もあったもんじゃないよ!

 ホント、やんなっちゃう!


 私はプンスカ怒りながら、リリィの後に続いてお風呂場へと移動する。


 さっきまで馬鹿みたいに色々考えてた事とか、おかげで全部どうでも良くなっちゃった。

 そこは、感謝してあげてもいいかな。


 そう思った私は、ため息を小さく一つして苦笑する。


「リリィ! 痛くなるくらい、背中を強くゴシゴシしちゃうからねー!」


「やだ。ジャスミン、怖い事言わないでよ」


「えへへー。真っ赤っかになっちゃうんだから」


 私はイタズラっぽく笑う。

 そして、勿論いつもの感謝をこめて、愛情たっぷりに優しくゴシゴシしてあげた。

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