034 幼女も思わずニッコリ笑顔
「あいつなのよ」
「凄い。本当に匂いだけで見つけちゃった」
リリィの作戦でスミレちゃんの後をついて行くと、集落の外れで小さな洞穴を見つけた。
そして、その中には焚火をして暖をとった人物がいて、その人物の周りには女の子達の服があった。
もちろん、リリィがさっきまで着ていた服も混ざっている。
間違いなく、追い剥ぎの犯人を見つける事に成功した。
犯人は服を一つ一つ広げて確認して、綺麗に折りたたんでを繰り返しているようだった。
洞穴の奥の方に大きな鞄があったから、おそらく後で服をしまうかもしれない。
そして、私は犯人の服装に驚いた。
何故なら、よく見てみると、犯人はピエロの格好をしていたからだ。
ピエロ?
この世界にも、ピエロっているんだ。
じゃあ、何処かに行けば、サーカスとか見れるのかな?
もしそうだったら、魔法のあるこの世界のサーカスなんだから、とっても素敵なんだろうなぁ。
見てみたいなぁ。
今度、パパとママや色んな人に聞いてみよう。
こんな時にアレだけど、何だかワクワクしてきちゃった。
私がそんな事を考えている横で、急にスミレちゃんが震えだす。
「どうしたの?」
スミレちゃんが震えだした事に気がついた私が小声でそう聞くと、スミレちゃんは顔を真っ青にしながら答える。
「あわわわわわ。何であの方がここにいるなのよ。幼女先輩、あの方はやばいなのですよ。今すぐ逃げるなのです」
「え? どういう事? スミレちゃんは、あのピエロの格好をした人を知っているの?」
「はいなのです。あの方は、サルガタナス様なのです。私が仕えていたフルーレティ様と同格の方なのですよ!」
私はスミレちゃんの言葉で、一気に血の気が引いて寒気を感じた。
そしてよく見ると、私のもう片方の横に立っていたリリィも、若干青ざめている気がする。
例の、魔力を感じるとかいうののせいだろうか?
スミレちゃんと初めて会った時も、こんな顔をしているのを私は覚えている。
これは、思いの外とても危険な相手なのではと、魔力を感じる事の出来ない私でもわかる。
しかし、それもほんの束の間の出来事だった。
急にリリィの青ざめていた顔が一瞬で豹変し、怒気を帯び始めたのだ。
「あの変態盗人野郎。いい度胸してるわね」
「え? どうしたのリリィ?」
もはや恐怖のきょの字も見えなくなったリリィに、私はたじろいだ。
いったいどうしたと言うのだろうか?
青ざめていた顔は、今や頭に血が上って真っ赤っかである。
「たしかに、いくらサルガタナス様と言えど、許せないなのよ」
「え? スミレちゃんまでどうしたの?」
私はそう言って振り返り驚いた。
何故なら、スミレちゃんまで怒気を帯びて、ピエロを睨みつけていたからだ。
スミレちゃんも、逃げると言っていたのが嘘の様に、血が上って顔を赤くしている。
スミレちゃんまで!?
いったい、何が2人をそこまで怒らせたの?
「「殺す」なのよ」
こわっ!
殺すとか、ハモって言うの止めて?
怖いよ2人とも!
私は2人の豹変ぶりに驚き、再びピエロを見て気がついた。
「あ。私のパンツが……」
はい。私のパンツは、焚火の中に放り出されていました。
雨の中で水分を吸収したせいで燃えづらくなっていて、未だに原形を留めている様だけど。
あ。そう言う事なのね。
うん。
納得したよ。
ふふふ。そうだよね。
うんうん。
知ってた。
私も2人の豹変の謎が解けて、思わずニッコリ。
そして、ニッコリ笑顔のまま、ため息を一つ。
取り戻した所で、もう穿きたいなんて思わないし構わないけど、なんだかなぁって気分になって気持ちが重くなる。
出来れば処分される所を見たくなかった気持ちと、少し安心した気持ちが、私の心で入り混じる。
だけど、頭に被られたり匂いを嗅がれたり、そう言うのが無いから良しとしようと、私は結論付ける事にした。
そっかぁ。
今回の変態魔族は、パンツには興味が無いみたい。
良かった良かった。




