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033 幼女は身の危険を感じずにはいられない

 リリィを見つけたので、ニクスちゃんのパパと別れて、一先ず雨宿り出来そうな大きな木の下へと移動した。


 これからどうしようかと考えている私の横で、すっかり元気になったリリィが「傘がいらないなんて、ジャスミンの魔法って本当に便利よねえ」なんて言っている。

 私は適当に返事をして、どうやって犯人を捜し出すか考えていた。


 犯人を見つけるにしても、相手が透明じゃ見つけようがないもんね。


 私が「うーん」と唸っていると、リリィが指笛を吹き出した。


 指笛?


「リリィ、急にどうしたの?」


「実はスミレと話し合って、指笛を吹けば来てもらえる様にしているのよ」


「え? そうなの!?」


 私がリリィの言葉に驚いていると、もの凄い勢いでスミレちゃんが現れた。


「お待たせなのよ」


「本当に来た!」


 今まで何処にいたのかわからないけど、指笛で本当に来るなんて驚きだよ。


「幼女先輩ごきげんようなのですよ。それでリリィ、何かあったなの?」


「ここの集落で、最近女の子だけを狙った追い剥ぎが起きているの」


「ふむふむ。それは忌々しき事態なの」


「それで、私もついさっき被害に合ったわけなのだけど、犯人の変態盗人野郎は大きなミスをしてしまったわ」


「大きなミスなの?」


 なるほど。

 リリィの自信ありげな雰囲気は、その大きなミスって言うのが関係してるんだね。


「大きなミス。それは、私の服のポケットに、ジャスミンの使用済みパンツが入っているという事よ!」


「ええぇっ!?」


 何それ聞いてないよ!?

 何でそんなものがあるの!?


「なるほどなのよ。その匂いを、匂いマスターの私が追えば、犯人の居場所まで辿り着けるって事なのよ!」


「その通りよ!」


「その通りよじゃないよ! ねえリリィ? なんで、そんなものがポケットにって言うか、どうやって手に入れたの!?」


 私は勢いよく、リリィの肩を両手でつかんで揺らす。

 リリィは私に揺らされながら、凄く良い笑顔で私の問いに答える。


「簡単よ。お義母様に、あ。ジャスミンのお母様が洗濯をしようとしていたから、お手伝いで代わりに洗濯をした時に拝借しただけよ。今までも時々やっていたし、そんなに気にする事でもないわよ」


「ええぇっ!?」


 私は衝撃の事実に、空いた口が塞がらなくなった。


 待ってリリィ?

 それ犯罪だよ?

 と言うか、やってる事が変態盗人野郎と同じだよ!

 でも、納得したよ。

 たまに私のパンツが新品同様になってる時があって不思議だったけど、あれってようするに私のパンツを、ばれない様に新品と交換してたって事だよね!?

 やだリリィ怖い!

 友達として、将来が心配だよ!

 もう遅いけど!


「そんな事より、問題は雨で匂いが消えてしまっている可能性がある事よね」


 そんな事!?


 そんな事呼ばわりされて、私はあまりにもショックで、がっくりと項垂うなだれた。

 そして、私ががっくりと項垂れている横で、お構いなしに2人の変態の会話は進む。


「ふんっ。私を誰だと思ってるなのよ。こんな雨くらいで、この匂いマスターの鼻は誤魔化せないなのよ」


「ふふ。流石ね」


「この程度、出来て当然なのよ」


「あっ。気がついたのだけど、スミレって雨に濡れないのね」


 リリィの言葉で、チラリとスミレちゃんを見ると、雨がスミレちゃんにあたる直前で蒸発していた。


「魔族の特権なのよ」


「それがスミレの特殊能力なの?」


「違うなのよ。これは魔法を自動発動させて、水を蒸発させてるだけなの」


 え?

 何それ凄い。


「私の特殊能力は、脂肪を燃焼して、理想のスタイルを維持する能力なのよ」


「へ~。羨ましいわね」


 たしかに。と、私は頷く。

 前世の記憶が甦る前の私だったら、その情報は食いつかずにはいられない。

 脂肪を燃焼して理想のスタイルって、もうそれ反則と言うか、チートだよ。

 世界中の女の子達が、羨ましがる能力だよ。


「でも、こんな能力だから、魔族的には使えない能力なのよ。おかげで魔族の間では、バティンは無能なんて言われていたなのよ」


「酷い話ね」


「うんうん」


「それより、早く犯人を捕まえに向かおうなのよ」


「そうだったわ!」


「うん。そうだね」


 話が脱線しちゃって、つい忘れていたけど、その為にスミレちゃんを呼んだんだもんね。

 って言うか、どんだけパンツのネタ引っ張るのよ。

 これで3度目だよ!

 魔族が関わると、必ず私のパンツが関わるのどうにかしてほしい。

 まあ、スミレちゃんの時は、私も悪いんだけどさ。


 私は思い出して、ため息を一つこぼした。

 そして考えた。


 今度、一度リリィとお話をしよう。

 だってそうでしょう?

 すっごく怖いんだもん! 

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