031 幼女と鳥人の女の子
ラークから話を聞いて、追い剥ぎの現場まで駆けつけると、背中から羽を生やした同い年位の女の子が蹲っていた。
女の子は小さく震えていて、背中の羽も雨に濡れて頼りなく項垂れていた。
「大丈夫?」
私は声をかけて近づいて、着ていたカーディガンを脱いで、女の子に上から羽織らせてあげた。
すると、女の子は私に振り向いて、目にいっぱいの大粒の涙を流して、私の胸に顔を埋めて泣き出した。
私はそのまま受け止めて、頭を撫でてあげる。
それから少し時間が経ち、女の子は気持ちを落ち着かせて、ゆっくりと私から離れた。
「ごめんなあ。ウチ、もう何が何だかわからなくなって……」
「ううん。いいのよ。それより、場所を移しましょう? まだ雨も降っているし」
「え? 雨?」
私に言われて、女の子は空を見上げた。
「どうなっとるん?」
女の子は、雨が自分と私にあたっていない現象に驚く。
あ。そっか。
傘じゃなくて、今は私の魔法で雨が当たらない様にしてるから、何も知らなかったら不思議に思うよね。
でも、そんな事より。
「早く行こう? そんな格好だと風邪をひいちゃうよ」
私の言葉で女の子が、カーディガンを羽織っただけの自分の姿を見る。
「……うん」
カーディガンを羽織っただけの自分の姿を見て、女の子は顔を真っ赤にして頷いた。
それから話を聞いた所、近くにお家があるようで、私は女の子をお家まで送ってあげる事にした。
お家に到着すると、女の子の両親にお礼がしたいからとお家に招き入れられた。
そして、女の子がお風呂に入ってる間に、女の子のお部屋で待機する事になってしまった。
お家にあがっちゃって良かったのかな?
よくよく考えてみると、リリィの事も心配なんだよね。
うーん……よし!
早めにお暇しよう。
私がそんな事を体育座りしながら、膝の上に顎を乗せて考えていると、女の子がお風呂から上がって元気にお部屋に戻って来た。
女の子は、さっきは雨でずぶ濡れだったから気付かなかったけど、凄く可愛い女の子だった。
おかっぱ頭の髪は紺色で、前髪はパッツン。
眉毛は若干太く、それが愛嬌の良さを出していて、とても可愛い。
背中から生えた羽は、とてもモフモフしていて思わず触りたくなる。
「さっきは、どうもありがとう」
「ううん。元気になったみたいで良かったよ」
「自己紹介がまだやったよね? ウチは、ニクス。ニクス=スワロー。貴女は?」
ニクス、ニクス……。
フェニックス?
いやいや。
流石に安直すぎるよね?
それに、スワローってツバメだよね?
もしかして、ニクスちゃんはツバメの鳥人なのかも。
「私は、ジャスミン=イベリスだよ」
「ジャスミン。……ジャスやね。よろしく、ジャス」
「うん。よろしく」
本当に元気になって良かった。
それにしても、いきなりあだ名をつけるなんて、結構コミュ力高い子なのかな?
それと、今更気がついたけど、喋り方が関西っぽい方言だよね?
関西っぽい方言が少し入ってるみたいだし、偏見だけど納得。
と言うか、この世界にも方言ってあるんだなぁ。
この世界で生まれて来てから、方言って初めて聞いたかも。
少し興味あるから、聞いてみようかな?
「ニクスちゃんって、喋り方に方言が入ってるよね? ここの集落の人達は、方言が入ってなかったと思うけど、ニクスちゃんは何処かから越して来たの?」
「え? そうやね~。最近ここに引っ越して来たんやで」
「やっぱりそうなんだ!喋り方可愛いね」
「いややわ~。別に可愛くなんてないやん」
そう言いながらも、ちょっと嬉しかったみたいで、ニクスちゃんは照れて顔をほんのり赤くした。
「えー。そんな事ないよ。私は好きだなあ」
前世でも、私は方言を使う女の子が可愛いと思っていたから、そんなニクスちゃんを見て癒される。
私が照れているニクスちゃんを見ながら、可愛いな~って思っていると、ニクスちゃんが照れを隠すように話を変える。
「ところでジャス。さっきウチ驚いたんやけど、雨がウチ等をまるで避けとるように見えたんよ。あれって魔法なん?」
「え? うん。ちょっと重力の力場を、ちょちょっと操作したの」
「ホンマ!? 凄いなあ!それって、上位の魔法やん。ウチ、上位魔法が使える同い年位の子なんて、初めて会うたわ! ジャスって凄い子なんやね!」
「えへへ。そんな褒められると照れちゃうよ」
私は一頻り照れると、「あっ!」と思い出して立ち上がる。
うっかり忘れてしまっていたけど、こんな事をしている場合ではなかったのだ。
「私行かなきゃ!」
「行くって、何処へ行くん?」
「大切な友達を捜しにだよ」




