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287 幼女は幸せを感じとる

「あれ? ベルゼビュートくんとパンツ女が仲良くお喋りしてるわ。ベルゼビュートくん、今帰って来たわよ」


 私が落ち着きを取り戻してベルゼビュートさんの傷を癒して土下座して、トンちゃんにバカにされている所に、アスモデちゃんがやって来た。

 ちなみに、私は今まですっかり忘れていたのだけど、プルソンさんも穴の中……と言うか、まだ地下で気絶していたようで、私の魔法を少し浴びてしまっていたらしい。

 おかげで、私はベルゼビュートさんだけでなく、プルソンさんにも土下座して謝りました。


 それはそうと、私はアスモデちゃんの姿を見て、ホッと胸をなでおろす。


 あ。

 やっぱり無事だったんだね。

 なんだかホッとしたよぉ。


 アスモデちゃんはベルゼビュートさんに乙女オーラを出しながら、凄く嬉しそうに駆け寄った。

 そんな中ホッとしたのも束の間、私はアスモデちゃんだけじゃなく、アスモデちゃんと一緒にやって来た人物を見て驚いた。


「ルピナスちゃん? それにオークも……?」


 私達の目の前に現れたアスモデちゃんは、何故かルピナスちゃんとオークの2人と一緒に、ここにやって来たようだった。

 そしてよく見ると、アスモデちゃんの手には、大きなお魚さんが……。


 え? 何?

 どうしよう?

 状況がつかめないよ?


 私が困惑していると、ルピナスちゃんが私に駆け寄って、ギュッと抱き付いた。


「ジャスミンお姉ちゃん。オーク小父さんと一緒に、アスモデお姉ちゃんを連れて来たよ」


「え?」


「リリィさんから聞きましたよ。アスモデ様が死んでると勘違いしてるみたいですね。この通り生きてるんですよ。不老不死になるヒントになればと思って、頑張って連れて来ました。ルピナスちゃんとは、ソイさんをフルーレティさんに預けた後に会ったんで、手伝って貰ったんですよ」


 オークがニコニコと私に向かって話すと、リリィがオークを睨んで蹴り上げる。


「ぶへっ……」


 オークはリリィに蹴り上げられて数メートル吹っ飛んで、地面に転がる。


「そう言う事は先に言いなさいよ! 遅いのよ! ジャスミンはアンタがもたもたしてる間に、とっくに不老不死になったわよ!」


「そうなの?」


 リリィの言葉を聞いて、ルピナスちゃんが首を傾げて私を見る可愛い。


 私が今まで抱えてきた精霊さんとの契約からくる寿命の事とか、ベルゼビュートさんから受けたパンツの呪いの事とか、全部解決したから心に余裕が出来たのかな?

 なんだか、ルピナスちゃんの可愛さが、以前と比べて更に増したように感じるよぉ。

 抱きしめたい!


「そうよ。ルピナスちゃんごめんね。オークの馬鹿が無能なせいで、ルピナスちゃんに無駄骨を折らせてしまったわ」


「ううん。ジャスミンお姉ちゃんが無事で良かったよ」


 リリィがルピナスちゃんに謝ると、ルピナスちゃんがニコッと天使のような笑顔で微笑んだ。


 やっぱりそうだよ!

 私、結局今まで余裕が無かったんだ!

 今までも、何度も思ってはいたけど、ルピナスちゃん可愛い!


「おちつくです」


 ペチリと、私はラテちゃんに頭を叩かれる。

 私はラテちゃんのおかげで平常心を取り戻して、アスモデちゃんに訊ねる。


「アスモデちゃんは今まで何処にいたの?」


 私が訊ねると、アスモデちゃんは妖美に微笑んで、持っている大きなお魚さんを私に見せる。


「南の国の海で、この魚を捕まえていたのよ!」


 アスモデちゃんが自慢げに説明すると、ベルゼビュートさんが少しだけため息まじりに補足する。


「我が不老不死になった祝いに魚を取りに行って来ると書き置きを残して、勝手にいなくなったのだ。出かけ先も書かずに、そんな書き置きだけを残されてしまってな。おかげで、この里を離れるわけにもいかなくなった。結果、貴様等に追い詰められて負けたわけだ」


「そ、そうだったんだ」


「アスモデ様は感じたままに動くから、ベルゼビュート様も大変なのよ。どっちが飼い主なのかって言いたくなる位に、いつも引っ掻き回されているの。いつもアスモデ様が何処かへ行った後に、放っておいて別の場所に行くと、凄く拗ねちゃうし大変なのよ」


 そんな苦労がと思いながら、プルソンさんの言葉に私が冷や汗を流していると、リリィが納得したように呟く。


「いつまでも里に留まってるから変だとは思っていたけど、そう言う事ね。だから、アンタ達はアスモデの事をいなくなったと言っていたのね」


「確かにハニーの言う通りッスね。それは間違いなく出かけたじゃなくて、いなくなったって表現がしっくりくるッス」


「そうか? アタシはお出かけで良いと思うんだぞ」


「こう言うのは気持ちの問題です。ラテも勝手にいなくなったら、出かけたとは言わないと思うです」


「がお」


「それよりも、タイム。アンタは知っていたんでしょう? 何でアスモデが生きてるって教えなかったのよ?」


「俺の口からヒントになるような事が、言えるわけないだろう?」


「本当にアンタって使えないわね」


 そう言ってリリィがたっくんを睨んだ時、サガーチャちゃんが小さく手を上げた。


「私も一つ気になっている事があるんだけど、確認させてもらっても良いかい?」


 私達はサガーチャちゃんに視線を向けて、言葉の続きを待つ。

 すると、サガーチャちゃんはベルゼビュートさんに視線を向けて、指をさす。


「ジャスミンくんが気にしていない様だから私が聞くけど、ベルゼビュート、君が持っているそれは返してあげないのかい?」


 サガーチャちゃんがそれと言って指をさした物に、私も皆も注目する。


「ベルゼビュートくん! 何持ってるの!?」


 アスモデちゃんが驚きのあまりに叫びながら尻尾を上げて、パンツがチラリと見える。

 と言うか、ルピナスちゃんとオークが急いで連れて来てくれたからか、ベルゼビュートさんの前だと言うのに、アスモデちゃんはパンツとブカブカのタンクトップしか身に着けていないようだ。


「これか? これは魔性の幼女のパンツだ。今し方、魔性の幼女に負けた際に、戦利品として頂いたのだ」


 戦利品って、普通は勝った時に貰う物の事を言うんだよ?

 って言うか、ついうっかり忘れていたけど、私のパンツ返して?


「ベルゼビュートくん! そんなお子様のパンツより、私のパンツの方が良い匂いするわよっ!」


 おバカな事で張り合わないでほしいなぁ。


「あー! ボスが帰って来てるわ!」


 アスモデちゃんが騒いでいると、大きな声が聞こえてきて振り向く。

 すると、振り向いた先には、アスモデちゃんに指をさすマモンちゃんが立っていた。


「マモンちゃん?」


「ボス酷いですよ! 私だって魚を捕まえに行きたかったのに、代わりに留守番してろだなんてあんまりです!」


「煩いな~。ベルゼビュートくんのお祝いは私が持って来る決まりなの!」


「私だってベルゼビュート様をお祝いしたい!」


 ベルゼビュートさん慕われてるなぁ。


「はっ! 幼女先輩はノーパン……つまり、今こそ私の能力が進化を発揮する時なのよ!」


「ジャスミンお姉ちゃん今パンツ穿いて無いの?」


「そうッスよ。ご主人の痴女は健在ッス」


「ジャスはおバカだから仕方ないです」


「さて、私は宿に戻って研究の続きをするとしよう。指輪は失敗に終わってしまったからね」


「博士は研究熱心なんだぞ」


「がお」


「え!? ベルゼビュートくん不老不死と能力を封印されちゃったの!?」


「我もまだまだと言う事だ」


「ベルゼビュート、お前本当に変わったな。これもジャスミンの影響か?」


「おのれリリィ=アイビー! 今度こそ引導を渡してやる!」


「はいはい後でねー。それよりジャスミン、宿で待っているケット=シー達にご馳走しなきゃいけないし、早く宿に戻りましょう」


 皆が楽しそうに騒ぐ中、私はリリィに話しかけられて、とても幸せな気持ちを感じながら元気に返事をする。


「うん! 帰ろう。リリィ」

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