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028 幼女もおしゃれして出かけます

 チョコの実狩り当日。

 朝日が昇る頃、私はパパとママと一緒に家を出た。


 今日はチョコの実狩りをするチョコ林には着かないので、余所行きの格好でお洒落な服装だ。

 ブイネックで肩だしのワンピースは、短めのスカート丈でフリフリがついていて可愛い。

 そして、その上から赤色のカーディガンを軽く羽織って、ちょっとしたアクセントにして可愛く仕上げた。

 それから、太ももまで伸びたニーソと、赤いリボンのついた底上げの靴。

 本当は底上げの靴は、今の私には必要のない物だったけど、底上げの靴しか持っていないので仕方ない。


 私はパパとママの間に入って、パパとママと手を繋いで村の出入り口までやって来た。


 村の出入り口には、既にリリィの姿があった。

 リリィの姿を見つけた私は、パパとママの手を離して、リリィの所まで駆け足で挨拶をしに行く。


「リリィ。おはよー」


「ジャスミン。おはよう。今日は一段と可愛いわね」


「えへへ。ありがとう」


 私はリリィと挨拶を交わし、それから昨日の夜の話を伝えた。


「そう。とりあえず安心出来そうで良かったわ」


「うん。頼もしいよね」


「そうね。でも正直に言うと、私はジャスミンがいれば、案外魔族に襲われても平気だと思うのよね」


「え? そんな事ないんじゃないかな?」


 今のところ出会った魔族と言えば、パンツ泥棒のオークと、匂いフェチのスミレちゃんだけだ。

 2人とも残念な変態なのは間違いないが、この2人だけを見て全ての魔族を判断するのは、良くない事だと思う。

 オークは地面を割る位の、もの凄いパワーを持っていた。

 スミレちゃんだって最初の登場時は、リリィやブーゲンビリアお姉さんが逃げ腰になる位には危険だった。

 他にどんな魔族がいるのかはわからないけど、油断しない方が絶対に良い。


「うーん。それなら、一応確認させてほしいのだけど、ジャスミンはスミレちゃんに本気で魔法を使ったの?」


「え?」


 うーん。と、私は考え込む。


 氷の魔法は、皆を巻き込むのを避ける為に手加減したんだよね。

 重力の魔法も、情報を聞きださないとって思っていたから、手加減したっけ……。


 そう結論付けた私は、若干苦笑交じりに言葉を続けた。


「本気では無かったかな」


「ほらね。ジャスミンってば、魔力コントロールが抜群なんだもの。そんじょそこらの魔族では、敵わないわよ」


「えー? そうかなー? そう言われると、ちょっと照れちゃうなぁ」


 そう言って、だらしのない笑みを私が浮かべると、「もう。可愛いわね」と言って、リリィが私の頭を撫で始めた。 

 すると、「本当よね」と言って、ブーゲンビリアお姉さんがやって来た。


「ジャスミンちゃんは、魔力操作の天才なんじゃないかしら?」


「あらビリア。おはよう。私もそう思うわ」


「おはよー。ビリアお姉さま」


 ブーゲンビリアお姉さんは近づくと、リリィと一緒に私の頭を撫でだす。


「ジャスミンちゃんの魔力って、健康診断で一緒に行った魔力測定でいくつだったの?」


「えーと、85だったよ」


「え! ジャスミンちゃん、平均より低かったの!?」


「うん」


 魔力測定とは、その名の通り、魔力を測定する事だ。

 魔力の数値は、40歳を過ぎるまでは、単純に『年齢×10=平均値』だったりする。

 だから、9歳の私が85しかないのは、平均以下なのだ。


「やはり天才か」


「そうなのよ」


 リリィとブーゲンビリアお姉さんは、「うんうん」と、頷き合いながら私の頭を撫で続ける。


 私が2人に頭を撫で続けられていると、ルピナスちゃんが元気よく「おはよー」と言ってやって来た。

 3人でおはようと返して、それからチョコの実狩りの話で盛り上がっていると、村長がやって来た。


 村長が皆に挨拶をして、参加する全員の確認が終わり、ついにチョコの実狩りに出発となる。


「スミレちゃん。ちゃんとついて来てるかな?」


「近くにはいないみたいだけど、きっと心配しなくても大丈夫よ」


 スミレちゃんの姿が見えないけど、きっとリリィの言う通り、心配しなくても大丈夫だよね?


 若干の不安を覚えたりもしたけど、リリィの言葉を信じて、私は魔車へと乗り込んだ。


 目的地までの移動手段は、この魔車ましゃと呼ばれる乗り物だ。

 魔車は見た目が馬車の様な作りで、馬を使わずに魔法を使って進む乗り物である。

 乗り心地は、それなりに快適で、揺れは殆どない。

 馬車の様な作りをしているから、車内は前世で乗っていた車より広く、1台で何人も乗る事が出来るのだ。


 私はリリィとルピナスちゃんと村長の家族と一緒に、魔車に乗る事になった。


「おっ! ジャスミンじゃねーか! お前もこの魔車なんだな!? お前、あれから大変だったんだぞ! 入口壊しやがってよ!」


 うわ! ラークがいる。

 そう言えば、ラークって村長の孫だっけ。

 最悪だよ~。


 そう思ったのは私だけでは無い様で、私の横に座るリリィとブーゲンビリアお姉さんも、嫌そうな顔をしている。


「こら。静かにせんかラーク」


 ポコッと、ラークが村長に頭を小突かれる。 


「じいちゃん! 叩くなよ!」


「静かにせい」


 ポコッと、また小突かれる。


「わかった! わかったよー」


 どうやら、あの馬鹿煩いラークも、村長には勝てないようだ。


「これなら、静かな旅が期待できそうね」


 村長とラークのやり取りを見て、リリィが私の耳元で上機嫌に呟いた。


 それからは、私達は魔車に揺られて、景色を眺めながら談笑した。

 そうして魔車に乗ってベードラ領土内に入り暫らく進むと、日が落ちかける頃に、山の麓の集落へと到着した。

 そして、皆一旦魔車から降りて集合する。


「今日はここで休んで、明日は歩いて山を越える事になる。皆ゆっくり休んでおくれ。では解散だ」


 村長の挨拶で解散となり、私はリリィとルピナスちゃんとブーゲンビリアお姉さんと一緒に、近場を散歩する事にした。

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