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027 幼女の後輩は優秀です

「なるほど~……。わかりましたなのですよ。明後日までに、様子を見て来ますなのです」


「ありがとー。スミレちゃん」


 スミレちゃんにチョコの実狩りの事を話すと、快く引き受けてくれた。


「もしよかったら、チョコの実狩り当日は護衛として、こっそり後をついて行きますなのですよ」


「え! 本当? それは願っても無い申し出だよ!」


 私は嬉しくなって、スミレちゃんに抱き付いた。


「いや~。幼女先輩に、そこまで喜んでもらえるなら本望なのですよ~」


 ん?

 幼女先輩?


「ねえ。スミレちゃん? 幼女先輩とか言う、そのパワーワードやめて?」


「え? 何故なのですか? 嫌なのです。幼女先輩は幼女先輩なのですよ」


「ジャスミン。呼び方くらい良いじゃない」


「えー。……うーん。リリィが言うなら……」


 幼女先輩と言う単語。

 それは前世で何度も目にし耳にし口にした言葉で、実際に自分が言われるのが、嫌だなと感じたのだけど……。



 私は少しの間だけ悩むと、仕方がないと諦める事にした。


「それで、チョコの実狩りは何処で行われるなのですか?」


「えっと、カスタネットって名前の町の近くなんだけどわかる?」


「あー。たしか、ベードラ領土内の風抜けの町なのですよね?」


「うん。そうそう」


 ベードラとは、ここから西に進んだ所にある隣国の名前だ。

 獣人国家ベードラ。

 獣人の王様が治める獣人達の国。

 けっして、バンドとかで使われるベースドラムの略称ではない。

 そして、風抜けの町カスタネットは、そのベードラ領土内にある町の一つだ。

 皆さんご存知の、あの小さい子供達を連想させる様な、赤色と青色を合わせるとタンタンとなる楽器ではない。

 ついでに言うと、この世界の国や町の殆どが、何故か私の前世の世界で楽器に使われていた名前ばかりだったりする。


 さて、それはともかくとして。


「風抜けの町なのですか……」


 スミレちゃんはそう呟くと、少し考え込んだ。

 私とリリィは、静かにスミレちゃんの反応を待つ。


 ほんの少しだけ時間が流れ、スミレちゃんが「うん」と頷いた。


「丁度、風抜けの町の近くに信用できる魔族の知り合いがいるので、挨拶がてら確認して来ますなのですよ」


「頼もしいわね」


「うんうん。持つべきものは、魔族のお友達だね」


「いや~。友達だなんて、照れるなのですよ~」


 私のお友達発言に気を良くしたスミレちゃんが、にへらとニヤケ顔で笑いながら頭を掻いた。


「それでは、善は急げと言いますし、早速行って来ますなのです」


「頼んだわよ。いってらっしゃい」


「ありがとー。よろしくね」


「お任せなのです」


 スミレちゃんは返事を返すと、もの凄い速度で走って行った。


「すご。走るのめちゃくちゃ速いね。スミレちゃん」


「さすがは魔族ね」


 私とリリィはスミレちゃんを見送ると、私の魔法で空に浮かび、村へ帰る事にした。





 次の日。

 日が沈み、空が黒色に染まる頃、私の部屋の窓を静かに叩く音が聞こえた。


「?」


 何だろう? と窓に近づき外を伺うと、スミレちゃんが手を振って立っていた。

 私は両親に見つからない様に家を飛び出し、スミレちゃんの所まで駆け寄る。


「スミレちゃん」


「幼女先輩。ただいま戻りましたなのです」


「おかえりなさい。それで、どうだった?」


「結果から言いますと、風抜けの町周辺と、そこへ行くまでの道程は安全なのです」


「おー」


「ただ、少し道を外れると魔族がいるみたいなので、なるべく真っ直ぐ向かった方が良いようなのです」


「そっかー」


 完全に安全とは言えなくても、いつも寄り道とかしないし大丈夫だよね。


「一応、安全って事だね」


「はいなのです。それに昨日も言いましたけど、こっそりついて行きますので、安心してほしいなのです」


「うん。ありがとー。頼りにしてるからね」


 本当に頼もしい。


 私はスミレちゃんにギュッと抱き付いて、喜びを表現した。

 スミレちゃんは私に抱き付かれて、ニヤケ顔で私の頭の匂いを嗅いでいるけど、大サービスでそのまま嗅がせてあげる事にした。


「幸せなのです~」

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