262 幼女を欲望のままに襲ってはいけません
「え? ドリちゃんはここに残るの?」
「うむ。妾はエルフの女子を護らねばならぬ。それにリリーに破壊された箇所を、再生させねばいかぬしのう」
「そっかぁ。残念だけど、仕方がないよね」
「すまぬな」
「ううん。ドリちゃん、マンゴスチンさんの事、それにベルゼビュートさんの事は私に任せてよ」
「マンゴスチンを捕まえて来るです。ハチミツの為に頑張るです!」
「うむ。ラテール、頼んだぞ。ジャスミン様、どうかご無事で」
「ハチミツって何ッスか?」
ドリちゃんからお話を聞いた私達は、ドリちゃんと別れて御神木の外に出る。
私達を襲ったペアちゃんとアプリコットちゃんは、ドリちゃんが反省させると言っていたので、ドリちゃんに預ける事になった。
マルメロちゃんは私の役に立ちたいと、私について来る事になった。
リリィから、サガーチャちゃんとオぺ子ちゃんが馬車小屋にいると聞いたので、御神木の外に出た私は馬車小屋へと向かう事にした。
本当はマンゴスチンさんを追って、ネコネコ編集部出張所に行こうとも思ったのだけど、私の事を心配してくれているサガーチャちゃんとオぺ子ちゃんに会おうと思ったのだ。
そして馬車小屋に向かう途中、私の心は驚きで一杯になった。
エルフの里には、そこ等中に猫ちゃん達がいて、なんで今まで気がつかなかったんだろうと不思議な気持ちになる。
そしてどの猫ちゃん達も可愛くて、もの凄くモフりたい。
他にも、リリィが色んな物を教えてくれた。
認識を阻害されていたとわかったリリィには、最早認識の阻害が効かないらしく、エルフの里の中にある認識出来ていない建物だったり、里の中を歩いていた魔族に指をさして教えてくれた。
リリィに教えてもらう度に、私を始め、他の皆もそれを認識していった。
それから、スミレちゃんの能力が、変な方向に凄い事もわかった。
それは……。
「あの女の子、多分ベルゼビュート様かマンゴスチンちゃんのどちらかの仲間なのですよ」
「え? どの子?」
「ほら、ジャスミン。あそこの建物から出て来た子よ」
「え? 建物? あ。本当だ」
私はリリィに教えてもらって、そこでやっと建物の存在と、その近くを歩く女の子の存在に気が付く。
「スミレちゃんの能力も凄いよね。能力を使えば、認識の阻害を受けている女の子まで見えちゃうんだもん」
「当然なのですよ。私の能力は、あらゆる障害を全て消すなのです」
「それでスミレさん。あの子の色は?」
真剣な面持ちで訊ねるブーゲンビリアお姉さんに、同じく真剣な面持ちでスミレちゃんが答える。
「水色なのよ」
言わなくていいよ?
こんな感じで、覚醒したスミレちゃんの能力は、認識阻害が女の子限定で効かないらしい。
話によると、御神木は認識を阻害で内部の情報を遮断されていたらしく、スミレちゃんの嗅覚が効かなかったのは、それが原因だったらしい。
だけどスミレちゃんの能力が覚醒する事によって、内部を透かして見る事が出来て、私の位置を正確に見つけ出す事が出来たようなのだ。
と言うか、私を助けに来た時に見た私の姿が、絆創膏で大事な所を隠した私の姿と言う、とても酷い話を聞いた。
「マルメロ!? マルメロなのか!?」
私達が馬車小屋へ向かう途中、突然誰かにマルメロちゃんが呼び止められる。
その声に私達は立ち止まり、声のした方へと視線を向けた。
すると、そこに立っていたのは、精霊の森で集落に向かう途中で出会ったエルフと、人の姿に化けたリーダーと呼ばれていたケット=シーの女の子マモンだった。
たしか、リリィから聞いた話では、あの子がマモンなんだよね?
強欲の能力を使うんだっけ?
「お父さん!?」
え? お父さん?
マルメロちゃんの発言に私は驚いて、マルメロちゃんと目の前に立つエルフを交互に見る。
「マルメロ。心配していたよ」
「お父さん。何で魔族と一緒にいるんですか?」
「マモン様に協力してもらって、マルメロを助けに行こうとしていたんだ。いや~良かった。ドリアード様がマンゴスチン様を裏切ったと聞いて、心配したよ。さあ、一緒に家に帰ろう」
マルメロちゃんのパパがマルメロちゃんに近づこうと前に出ると、マルメロちゃんはブーゲンビリアお姉さんの後ろに隠れた。
「ん? 誰かと思えば奴隷の女か。そこをどけ」
「マルメロちゃんが嫌がってるので出来ません」
「何?」
ブーゲンビリアお姉さんとマルメロちゃんのパパが睨み合う。
すると、その間にマモンちゃんがスタスタと入って行く。
「安心しなさい。キューカンヴァ、おまえの娘はそこにいる甘狸に騙されているだけ。私が目を覚まさせてあげる」
マモンちゃんが、そこにいる甘狸っと言った時、私と目が合った。
え?
甘狸って私の事?
「マモン様、お願いします!」
えっと、大体の事情はわかったかも。
マルメロちゃんのパパが騙されてるって事だよね?
「マモン。悪いけど、アンタの能力は既に見切ったわ」
リリィがマモンちゃんの前に立ち、余裕の笑みを浮かべた。
「リリィ=アイビー……。言ったな? 随分と余裕を見せているようだけど、その余裕、いつまで保てるか見ものだな! ボスがいない今、私がボスに代わって、おまえ達の息の根を止めてやる!」
マモンちゃんは言葉を言い終えると、もの凄い速さで動き出す。
速い!?
その速さは本当に速くて、私は目で追うのがやっとだ。と、強がりたい所だけど、正直全然追えないレベルの速さだった。
そして、その時、恐ろしい事が起こってしまった。
「リリィ!?」
それは一瞬の出来事だった。
突然リリィが目の前に現れて、私のスカートを捲ろうと……いや。
脱がそうとしてきたのだ。
嘘!?
マモンちゃんの能力を受けちゃったの!?
そんな……っ!
「リリィ、しっかりして! マモンちゃんの能力なんかに負けないで!?」
私は私のスカートを脱がそうとするリリィに、願いながら叫ぶ。
だけど、私の願いは届かない。
「ジャスミン! これは大切な事なの! マモンの能力に対抗する為に、私は私の欲望を自ら解放する必要があるのよ!」
私の願いは届かない。
何故ならリリィは素だったのだから。
「え、えええぇえぇぇっっ!?」
おバカなの?
ねえ?
本当におバカなの?
「こらー! リリィ=アイビー! 私を無視するなー!」
マモンちゃんがプンスカと怒りながら、リリィを私から剥がそうと、リリィの腕を引っ張る。
何も知らない人がこの惨状を見れば、リリィと言う名の変態からマモンちゃんが私を助けようとしているようにしか、見えないのではないだろうか?
「ちょっ! バカ! リリィッ! やめっ……それ、それパンツも掴んでるから! 見えちゃう! 見えちゃうからー! やめてー!?」
「大丈夫よジャスミン! 絆創膏も付けているのでしょう? 問題ないわ!」
「問題しかないよ! って言うか、今は絆創膏つけて無いの! お願いだから止めて!?」
実は、お風呂に入った時に絆創膏を剥がして、それっきりなのである。
スミレちゃんの変態な能力もあったし、正直恥ずかしすぎて、もう嫌だと感じたのだ。
「何ですって!? 俄然興奮してきたわ!」
「リリィのおバカ! 興奮しないでよー!」
なんなのリリィ!?
本当になんなの!?
誰か助けて?
もうやだお家帰りたい。




