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260 幼女の親友を敵に回してはいけない

 私の自慢の大親友リリィは、それはそれはチートな女の子である。

 外見は同い年の子より年上に見えて美少女だから、見た目も凄く素敵だ。

 そんな美少女で素敵な女の子のリリィの、何がチートなのかと言うと、それは様々である。


 例えば今回で言えば、飲むと周りから自分の存在を認識出来なくさせてしまえる魔法薬を飲んだ女の子達を、初めから認識していた事だ。

 御神木を管理しているドリちゃんでさえ、その子達に気が付いていなかったというのに、普通に気がついていたようだ。


 そして、その私の大親友のリリィは、更にチートな姿を私に見せてくれた。

 それは……。


「ひいぃぃっ! 許して下さい! お願いします!」


「私達はマンゴスチン様の命令に従っていただけなんです! お願いです! 殺さないで!」


「どうする? ジャスミン」


「え? あ、うん」


 私に……と言うか、マルメロちゃんに殺気を向けて襲ってきたペアちゃんとアプリコットちゃんは、リリィが強すぎて呆気なく白旗を上げたのだ。

 と言っても、リリィは私が引くほど凄かったのは事実だ。

 何があったのか簡単にまとめると、こんな事があった。


 ペアちゃんが最初に行動に出たのだけど、マルメロちゃんの前に立った私に向けて、小瓶を投げてきた。

 小瓶には強力な毒が入っていたようで、私がマルメロちゃんを連れて避けると、床に落ちて小瓶が割れた途端に床が溶けてしまった。

 そしてそれを見たリリィが静かに怒り、ペアちゃんの前に目にも止まらぬ速さで移動して、ペアちゃんが顔を青ざめさせて闇雲に小瓶を投げる。

 すると、それをリリィが片手で受け取って握りつぶして、リリィの手に毒がかかってしまったのだけど、リリィの手は溶ける事が無かった。

 ペアちゃんはそれを見て、泡を吹いて気絶した。


 次にアプリコットちゃんが顔を青ざめさせながら、リリィにもの凄い速い速度で近づいて、隠していた短刀でリリィを素早く斬りつける。

 だけど、リリィがそれを人差し指で受け止めた途端に短刀が折れてしまい、アプリコットちゃんは声にならない声を上げながら逃げようとした。

 そんなアプリコットちゃんをリリィが逃がす筈も無く、まるで指を鳴らすかのようなしぐさで、親指と人差し指をパチンとした途端に驚異的な威力を持つ風の砲弾が飛び出してアプリコットちゃんに命中。

 アプリコットちゃんはその場で泡を吹いて気絶した。


 そんなわけで、ペアちゃんとアプリコットちゃんの2人は、見事にリリィに恐怖を植え付けられてしまった。

 私は目を覚まして、涙を流しながら必死に殺さないでと懇願する2人を見て、優しく微笑む。


「安心して良いよ。間違っても、2人を殺したりなんてしないから。怖い思いさせちゃってごめんね」


「女神様……」


「ありがとうございます。ありがとうございます」


 そう言って、ペアちゃんとアプリコットちゃんの2人が、私にすがりついて泣き叫ぶ。

 すると、それを見ていたマルメロちゃんが、私に笑顔を向けて手を握る。


「ジャスちゃんは、やっぱり素敵です」


「マルメロ、あまりジャスを甘やかさないでほしいです。調子に乗っちゃうです」


「そうッスよ。ただでさえ甘々なのに、そんな甘い言葉で更に甘々になったら、目も当てられないッス」


 トンちゃんとラテちゃん、2人とも酷くない?


「アタシは主様のそういう所が大好きなんだぞ」


「がお」


 プリュちゃんとラヴちゃんは優しいなぁ。

 私も2人が大好きだよ。


「私もプリュとラヴに同意だけど、今はそれよりも、逃げて行った子の方が問題ね」


 リリィはそう言うと、私に縋りつく2人に視線を向けてニコッと笑う。

 すると、2人は顔を真っ青にさせて、ごくりと息をのみこんだ。


「マンゴスチンがどうとかって言っていたわね?」


「そう言えば、マンゴスチン様の姿が見えませんね。いつの間にか何処かへ行かれたんですね。何処へ行ったのでしょう?」


 リリィが2人に訊ねると、それに続けてマルメロちゃんも疑問を口にした。


「マンゴスチン様は、魔族達の拠点に向かわれました」


 魔族の拠点?


 ペアちゃんが答えて、それに私が首を傾げると、ドリちゃんの目が鋭くなった。


「ネコネコ編集部出張所。ジャスミン様、それが魔族共の拠点じゃ」


「あそこがアイツ等の拠点だったの? でも、言われてみればそうよね。でも、あそこにベルゼビュートはいなかったわよ? スミレは何かしらないの? アンタは捕まってから、少しの間だけど、あそこにいたんでしょう?」


「残念だけど知らないなのよ」


 スミレちゃんが捕まった?

 私がここにいる間に、そんな事があったんだ?

 ネコネコ編集部出張所かぁ。

 多分、オぺ子ちゃんが言っていたネコネコ編集部の建物の事だよね?


「そう言えば、ベルゼビュートで思い出したのだけど、ドリアードがオぺ子ちゃんに頼んだ事件の犯人の予測はついたわよ」


 え?

 それって、ワンちゃんのうんちの事件だよね?


「ほお。聞かせてもらえるかの?」


 ドリアードさんとリリィが真剣な面持ちで見つめ合い、私はごくりと唾を飲み込んだ。

 しかしその時、私はちょんちょんと、腕を突かれる。


 うん?


 振り向くと、ルピナスちゃんがモジモジしながら私を見つめていた可愛い。


「ジャスミンお姉ちゃん」


 モジモジした可愛いルピナスちゃんに私が首を傾げると、ルピナスちゃんが私の服をちょこっとだけ摘まんで引っ張る。


「ルピナスちゃん、どうしたの?」


 私が訊ねると、ルピナスちゃんは可愛くモジモジしながら呟く。


「おしっこ」


 ……うん。

 可愛い。

 って、そんな事考えてる場合じゃないよね!?


「おトイレはこっちだよ! ルピナスちゃん!」


「あっ。私もお手洗いに行きたいなのよ」


 私はルピナスちゃんの手を取り引っ張って、ルピナスちゃんとスミレちゃんをおトイレに連れて行く。

 そして、おトイレに向かう途中、私はふと考える。


 スミレちゃんが知らない間に掴まっていたり、里の中にいる認識の阻害を受けた猫ちゃん達の話だったり、わからない事だらけだなぁ。

 うーん。

 さっき話してたワンちゃんのうんちの事件の事も気になるし、一度情報を整理する為に、戻ったらお話を聞こう。

 リリィ達も色々あったみたいだし、私の知ってる情報は大した事ないけど、一度情報交換をした方が良いもんね。

 よし。

 そうしよう!


 そんなわけで、私はルピナスちゃんとスミレちゃんをおトイレに連れて行き戻ると、皆で情報交換をする事にした。

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