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255 幼女は変態の推しになる

 スミレちゃんが取り出したロンググローブの出所に私が首を傾げている間に、スミレちゃんがソイさんの所まで歩いて行きしゃがむ。

 そして、スミレちゃんが倒れていたソイさんの胸ぐらを掴んで、往復ビンタを開始した。


「寝てんじゃねーなのよ!」


 え?

 あの……スミレちゃん?

 早速暴力に走ってるよ?

 大丈夫なの?


「お、俺は……?」


 ソイさんが目を覚ますと、スミレちゃんは往復ビンタを止めて、胸ぐらを掴んでいた手を離した。


「やっと目を覚ましたなの? おいキモ豚。私はお前の考えに、どうしても納得出来ないものがあるなのよ」


 納得出来ないもの?


「お前はさっき、お前の能力でリリィを全裸にして初夜を迎えると言ったなのよ」


 え? そこ?

 いやまあ、うん。

 私もそれには異議を申し立てたい所なんだけど、そんなのわざわざ掘り返す必要も無いんじゃないかな?

 んー……でも、そっかぁ。

 たしかに、そこ等辺は、ちゃんとダメだって伝えておかないとだよね。

 私も相談に乗るとか言っちゃったし、最悪リリィとの関係を相談されちゃったら困るもん。

 って言うか、犯罪行為だしね。


「それが何だってんだよ?」


 ソイさんがスミレちゃんに訊ねると、スミレちゃんが立ち上がり、ソイさんに指をさして大声を上げる。


「お前は何もわかっちゃいないなのよ! 全裸の幼女より、ちょっと何か穿いてたり着ていたりする幼女の方が、断然エロいなのよ!」


 ……うん?


「何だと!? ふざけるな! そこは俺だって譲れねえ! 聖母ジャスたんのおかげで目が覚めた俺でも、それだけは譲れないぜ!」


 せ、聖母?

 う、うーん。

 パンツの女神よりマシかな?


「これだから童貞は困るなのよ」


 うっ。

 スミレちゃん止めて?

 前世の一生を童貞で終えた私の心に、それは突き刺さる言葉だよ。


「うるせえ! 童貞を馬鹿にするな! 童貞は清さの証! 誇りの象徴なんだ!」


 それは無いかなぁ。


「なら、お前にも見せてあげるなのよ! 桃源郷が地獄に感じるほどの、唯一無二の最高の景色を!」


 あれ?

 どうしてだろう?

 嫌な予感がするよ?


 スミレちゃんがソイさんの肩を掴み、私に指をさして、ソイさんはそれにつられて私を見た。

 そして……。


「うぉおおおおおおおっっ! ぶっひいぃぃっ!」


 ソイさんは私を見た瞬間に雄叫びを上げたかと思ったら、血の涙を流して豚声を上げる。


 ひぃっ。


 私はソイさんの反応を目のあたりにして、血の気が引くのを感じて一歩後ずさる。


「俺は、俺は負けないぞ! 確かに聖母ジャスたんは俺のママだ!」


 違うよ?

 ソイさんのママはマンゴスチンさんだよ?


「だが、前世が男だった奴に、俺は決して屈しない!」


「馬鹿野郎なの!」


 スミレちゃんがソイさんの顔と言うか鼻をグーで殴る。


「ぐはっ……!」


 ソイさんは殴られた鼻を手で押さえて、困惑しながらスミレちゃんに視線を向ける。


「まだそんなくだらない事を言っているなの!?」


「だが姉御! 中身が男な偽……偽も……のに…………っ!」


 ソイさんが辛そうな表情を浮かべて口ごもる。

 すると、スミレちゃんはソイさんに優しく微笑んだ。


「もうお前も気が付いている筈なのよ。大事なのは過去でも中身でもなく、見た目だって事になの」


 過去はともかく、中身は大事だと思うよ?

 主に精神的な意味でだけど。


「姉御……。ああ、そうだ! でも、俺にはリリちゃんが!」


 スミレちゃんが首を横に振って囁く。


「いつの間にか、時代が進むにつれて忘れられている真実があるなの。それは、嫁は三ヶ月経てば、新しくなるって事なのよ」


 スミレちゃんが優しい声で囁くと、ソイさんは目を見開いて驚くと、そのまま私に視線を向けた。


「嫁は……三ヶ月で新しく……。そうだ。そうだったぜ姉御。俺は前世で、確かに年に何回も嫁が変わっていた」


 こらこら。

 それは二次元の嫁の話でしょう?

 リアルと一緒にしないで?


「そうなのよ。それに、一度に何人も嫁がいたって、良いなのよ。だから、何も恥じる事は無いなのよ?」


 スミレちゃんがソイさんに優しく微笑む。


「姉御……」


 ソイさんがスミレちゃんを見て呟くと、スミレちゃんがこくりと頷く。


「でも、これだけは言っておくなのよ。幼女先輩を推しにしたら、抜け出せなくなってしまうなのよ」


「覚悟の上だ。俺だって馬鹿じゃない」


 十分おバカだと思うよ?


「ふっ。良い面構えになったなのね。さあ、幼女先輩の魅力を、一緒に堪能するなのよ!」


 スミレちゃんがソイさんの肩を掴む。


「おう!」


 ソイさんが返事をすると、2人は一緒に私に視線を向けた。


 いい加減パンツを見ようとするの、やめてくれないかな?

 スミレちゃんに能力を使われちゃうと、隠しても意味ないんだもん。


 私は半ば諦めモードでため息を吐き出して、リリィが止めに入ってくれないかなと、リリィに視線を向ける。

 だけど、リリィは相変わらずドリちゃんとおバカな言い争いをしているようだ。


 私がリリィの様子を見て、心の底からがっかりしていると、スミレちゃんが突然ソイさんの両目に指を突っ込む。


「ぎゃー!」


 な、何事!?


 ソイさんの叫びに私が困惑して視線を向けると、スミレちゃんが頬を染めて、恥じらいながら私と目を合わす。


「幼女先輩の可愛いおっぱいが丸見えなのです。豚におっぱいを見せるわけにもいかないから、しっかりおっぱいを手か腕で隠してほしいなのです」


「え?」


 何を言っているの?

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