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252 幼女は変態と関わりたくない

 外から御神木に風穴を開けて購買部の売店に入って来たリリィの珍しい泣き顔に、私が頭を撫でたくなる衝動にかられていると、そこへマルメロちゃんが私のお洋服を持って戻って来た。


「ジャスちゃん! 持って来ました!」


「ありがとー」


 私がお礼を言ってお洋服を受け取ると、マルメロちゃんは瓦礫の山や風通しの良くなってしまった壊された壁、そしてリリィとリリィの足ににしがみつくソイを見て困惑した顔で私に訊ねる。


「何があったんですか?」


「あはは」


 私はマルメロちゃんの質問に、どう答えて良いかわからず苦笑する。

 するとその時、リリィが開けた風穴から、トンちゃんとプリュちゃんとラヴちゃん、それからスミレちゃんにルピナスちゃんにブーゲンビリアお姉さんがやって来た。


「ご主人ー!」

「主様!」

「ジャチュ!」


 トンちゃんとプリュちゃんとラヴちゃんが私に抱き付く。

 私は3人を受け止めて、3人を抱きしめながら、順番に優しく頭を撫でた。


「あれ? ラテが寝てるんだぞ」


「任せておけと言っていたのに、呑気なもんッスね。ところで、何でご主人は裸なんスか?」


「がお?」


「あ。着替えて来る!」


 私はトンちゃん達を離して、急いで物陰に隠れて着替えを始める。

 物陰に隠れる前に、私を呼ぶリリィの声が聞こえたけど、とりあえず今はお着替えが優先だ。


 私が着替え始めると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。


「いい加減リリィから離れるなのよ!」


「煩いババア! 俺達の愛を邪魔するな!」


「話が通じないアブラムシッスね~」


「話が通じないのは、お前の方だ! 羽虫の分際で偉そうに!」


「リリさんが迷惑してるんだぞ!」


「がお!」


 私はお洋服に着替え終わり戻る。


「ジャスミン、このキモ豚をどうにかしてー」


「偽物幼女! 俺とリリちゃんの愛をお前も邪魔するのか!?」


 本当に何があったの?


 私は額に汗を流して困惑しながら、リリィとソイの顔を交互に見た。

 リリィは本気で嫌がっていて、実はさっきからずっとソイの顔を殴っている。

 そのおかげで、殴る度に振動が伝わってきていて、ソイがよく無事でいられるなと本気で感じる。

 と言うか、リリィにこんなにも殴られて無事でいられるなんて、今まで一人もいなかったのではないだろうか?


 私は意味のない事だと思いながらも、ソイの頭にチョップをしようと手刀を構える。


 うっ。

 触りたくない。


 ソイの頭と言うか髪の毛は、本当にボサボサで脂っぽく、変な臭いが漂ってきていた。

 私は構えた手刀をおさめて、少し考える。


 うーん……。

 そうだ。

 足なら靴を履いてるからギリギリセーフだよね?

 あまり気が進まないけど、背に腹はかえられないもん!


「リリィから離れてよ」


 私はそう言って、リリィにしがみついているソイを、足で踏みつけようとした瞬間だった。

 私は突然の出来事に目を疑った。


 気が付いた時には、ソイは誰かに御神木の外に吹き飛ばされていて、私の小さな足がリリィとスミレちゃんとドリちゃんの頭を上手に踏んでいたのだ。


「ひぃっ」


 私は直ぐに足をどけて、ドン引きしながら一歩後ずさる。

 すると、3人は起き上がり、そして睨み合った。


「ちょっとアンタ。邪魔すんじゃないわよ。スミレもスミレで、何のつもりよ?」


「リリィには悪いけど、私だって一度位は幼女先輩に踏まれたいなのよ!」


「ふん。全く愚かな奴等よのぅ。妾は少しこけてしもうただけじゃ。ジャスミンさ……小娘に踏まれたいとは、悪趣味な奴等よのぅ」


 え? 何?

 ドリちゃんもそっち系の人なの?

 精霊さんって変わってはいても、リリィ達と比べたら、結構まともな人ばかりだと思ってたんだけどなぁ。


「主様、あの子は誰なんだぞ? ビリアさんとルピナスちゃんと仲良しだぞ」


 プリュちゃんが指をさして訊ねるので、私は指をさした方に視線を向ける。


「本当だ」


 プリュちゃんが指をさしたのはマルメロちゃんで、プリュちゃんの言う通り、マルメロちゃんとブーゲンビリアお姉さんとルピナスちゃんと3人で仲良くお話をしているのが見えた。


 もしかして、3人とも知り合いだったのかな?


「あの子はマルメロちゃんだよ」


 と、私がプリュちゃんに答えた直後に、今度はトンちゃんが驚きながら指をさした。


「げ! また出たッス!」


「え?」


 トンちゃんが指をさした方に視線を向けると、そこには私を睨むソイが立っていた。

 そして、ソイは私に向かって声を上げる。


「許さないぞ偽物幼女! 俺とリリちゃんの結婚の邪魔はさせん!」


「け、結婚!?」


「リリさんはお前の事なんか好きじゃないんだぞ!」


「がお!」


「黙れ! お前等お子様精霊には、俺とリリちゃんの愛し合う姿がわからないだけだ!」


 う、うわぁ。


 私がソイにドン引きしていると、スミレちゃんが私の前に立ってソイを睨んだ。


「待つなのよ! お前の相手は私がするなのよ!」


「スミレちゃん?」


「ドリアードはリリィが相手をしてくれているなのです。だから、このキモ豚は私に任せて下さいなのですよ!」


「う、うん」


 私は返事をしてリリィに視線を向ける。

 スミレちゃんの言っていた通り、リリィはドリちゃんと睨み合っていた。


 えーと……スミレちゃんはともかく、リリィは止めた方が良いよね?

 ドリちゃんって、どちらかと言うと私の味方っぽいし……。


 リリィとドリちゃんを止めようと考えたのだけど、その考えは直ぐに消えてしまった。

 何故なら……。


「ジャスミンに、手作りのお弁当を食べてもらったですって!?」


 え?

 なんでお弁当の話?


「ふん。作りすぎてしまったので、分けてやっただけじゃ。それにそれだけでは無い。妾はジャスミン様の料理も頂いたのじゃ」


 あ、私の名前に様つけちゃってる。

 多分気付いてないんだろうなぁ。

 って、後でお弁当箱を洗ってから返さなきゃだよ。


「何て奴なの! でも、残念だったわね。ジャスミンの料理なら、私も食べた事があるわ」


「何じゃと?」


「お風呂だって一緒に入った事もあるのよ!」


「馬鹿な!?」


「どうやら、誰を敵に回してしまったか、やっとわかったようね? 私を相手に、ジャスミンへの愛で勝てるわけが無い事を思い知らせてあげるわ!」


「ふん。少々其方の事を侮っておったわ。妾も本気を出すとしよう」


 ドリちゃんが胸元からパンツを取りだす。


「これは昨日の晩に、ジャスミン様がお風呂に入る時に洗濯籠に入れた下着じゃ」


 こらこら。

 どうりで昨日お風呂から上がった時に、パンツが無くなってると思ったよ。

 何故かパンツが新しいパンツに変わってて、不思議だったんだよね。

 結局リリィのせいでパンツが無くなる事に慣れちゃってて、まあいいやですませちゃったんだけど、普通に考えたら大事件だよ。


「なんですって!? 今すぐそれを私に渡しなさい! ジャスミンの使用済みパンツは全て私の物よ!」


 いつもの事だけど、私の物だよ?


「ふん。やはり、其方の実力もその程度。どれ程驚異的な強さを持っていようと、妾の敵では無いわ」


「どうやら、私はとんでもない強敵と出会ってしまったようね」


 ……そうだね。

 2人とも、とんでもないおバカだよ。

 って言うか、うん。


 私はおバカな言い争いをしている2人を見てニッコリ笑顔。

 

 あの2人は放っておこう。

 だって、凄く関わりたくないんだもん。

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