表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/288

025 幼女は大人の階段を上りたくない

 一通りの話を終えると、ルピナスちゃんが「ジャスミンお姉ちゃん」と、話しかけてきた。


「不老不死になるのは、2年後じゃ駄目なの?」


「え? 2年後? どうして?」


「2年後なら、私も成人になってるから、私と一緒に村のお外に出かけられるよ」


「え?」


 2年後に成人?

 今、2年後に成人って言った?

 どういう事?

 ルピナスちゃんは私の1つ下だから、今はまだ8歳のはずじゃ!?


 私が困惑していると、リリィが私の困惑に気がついてくれて、教えてくれる。


「獣人は私達と違って、10歳で成人になるのよ」


「うそっ!?」


「正確には、女の子の場合は初潮を迎えれば、10歳にならずして成人扱いね」


「ええええええぇっ!?」


 私の驚愕きょうがくの叫びが鳴り響く。

 あまりにも大きい声で驚いたから、ルピナスちゃんが耳をぺたんと押さえていた。


「知らなかった……」


 私は力なく項垂うなだれる。

 だってそうでしょう?

 驚愕の事実だ。

 前世の記憶が甦る前の私も、そんな事は知らなかったのだ。

 それなのに、前世の記憶の成人に対しての常識を持つ私が、これを聞いて驚くなと言う方が無理なのである。


「うん? ちょっと待ってリリィ。じゃあ、後2年後には、ルピナスちゃんは何処かに嫁ぐ可能性も?」


「残念ながらあるわね」


 なんだってー!?


「うちの子は何処へも嫁がせません!」


 私はそう言って、ルピナスちゃんをギュッと抱きしめる。

 すると、ルピナスちゃんは尻尾をフリフリして、私に顔をスリスリしてくれた。


 可愛い。

 こんなに可愛いのに2年後には結婚できちゃうなんて、獣族の男はなんて羨ましい……じゃなかった。

 なんてけしからん種族なんだ!


「気持ちはわかるわ」


 リリィがうんうんと頷く。

 と、そこで、スミレちゃんが「ルピナスちゃん、ルピナスちゃん」と話にくわわる。


「ルピナスちゃんは初潮はまだなの?」


 こらこら。

 何を聞こうとしているのスミレちゃん。


「うん」


「ルピナスちゃんの成長は、ジャスミンと違って平均位みたいだし、そんなもんじゃない? 私はもう済ませてるから、私が獣人だったら、ジャスミンを村の外まで連れて行ってあげられたのに残念だわ」


「え!?」


 リリィの発言に、またしても私は驚愕して固まる。


 リリィ、もう済んでるの!?


「納得なのよ。リリィは9歳にしては随分身長も高いし、大人びてるから、そうじゃないかとは思ったなのよ。だから、私の幼女センサーには、引っ掛からなかったみたいなのよ」


 何そのセンサー? って、いやいや。

 そうじゃなくて、何だろう?この疎外感。

 前世が男だったのもあって、何だか話についていけない。

 女の子同士の会話怖い!

 って、私も今は女の子なんだけどね。


 と、そこまで考えた私は、ある事に気がついてしまった。

 前世が男だったから、全く考えてもいなかった。

 だけど、よく考えてみれば女として生まれ変わったからこそ、男で経験した事の無い事がこれから出て来る。

 正直、前世の方が長く生きているから、どこかその事に抵抗を感じてしまう。

 初潮もその一つなのだ。

 だって、そうでしょう?

 前世で聞いたりした事と言ったら、つらいだとか気持ち悪くなるだとか、良い話を聞かないんだもん。


 早く不老不死になって、成長を止めなきゃだよ!


 と、私は再び心の中で決心した。

 私がそんな事を長々と考えていると、私に抱きしめられたルピナスちゃんが、ぴょんっと私から離れる。

 そして、私にニコニコはなまる笑顔を見せる。


「わかっちゃった!」


 そう言って、ルピナスちゃんが天使のようなニコニコはなまる笑顔のまま提案する。


「スミレお姉ちゃんと一緒に、お外に出かければ良いかも!」


 ルピナスちゃんの提案は、目から鱗だった。


「そっかぁ。考えてみれば、村の住人と一緒じゃないと駄目なんて決まりは無かったよね?」


「そうよね。ルピナスちゃんの言う通りだわ」


 私とリリィはそう言うと、スミレちゃんを見た。


「私も最初は考えたなのですけど、魔族ってばれたら不味くないなのですか? こんな見た目なのですし」


「あ、あぁ……」


 言われてみれば、それもそっかぁ。


 スミレちゃんは、たしかに大人ではあった。

 だけど、赤黒の髪の毛は、炎の様にメラメラと常になびいている。

 それに、目も白目の部分が黒いのだ。


「魔族だと駄目なの?」


 ルピナスちゃんがつぶらな瞳をうるうるさせながら、シュンとなる。


「村の外に子供だけで出ては駄目になったのが、魔族が出るようになったからなんだよ」


 そう言って、私はルピナスちゃんの頭を撫でた。


「とにかく、村の外に出る方法を、まずは考えましょう」


 リリィがそう言うと、私達はこくりと頷き合って、今日はお開きとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ