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239 幼女は来るのが一足遅い

「勝者、パンツの女神様ーっ!」


「「「きゃーっ!」」」


 鳴り響く拍手。

 湧き上がる歓声。

 私は今、御神木内部に捕らわれた女の子達の視線を、一点に集めていた。


 マンゴスチンさんとの勝負は、料理対決だった。

 メインディッシュとデザートを作り、それを審査員のドリアードさんとソイと花嫁修業生代表のマルメロちゃんが、公平に審査するといったものだった。


 2つの品を食べて、より美味しいと感じた方に一票を入れてもらったわけなのだけど、私の圧勝に終わった。

 驚く事に、ソイまで私に票を入れたのだ。

 これにはマンゴスチンさんも驚いて、私の作った料理を食べて、どこの料理漫画だとつっこみたくなるように服をみだらに肌蹴させて倒れた。

 そして、一番驚いたのは……。


「バカな婆です! ジャスはラテが認めるほどの、お菓子作りの達人にして天才です。ジャスに勝てるわけないです!」


 そう。

 審査が始まるとラテちゃんが甘い匂いにつられて、ポーチから出て来て、何故か周りに馴染んでいたのだ。

 最早隠れていた意味はあったのかと、思えてしまう。


 って言うか、ラテちゃん。

 あまり汚い言葉を使わないで?


「わ、私が料理で負けてしまうなんて……」


「ちっ。これだからママは! 見た目が幼女とは言え、アイツは中身が男なんだぞ? 偽物幼女が作った料理に負けるなんて、女として終わってる!」


 こら!

 失礼な事を言っちゃダメだよ!

 だいたい、男だとか女だとか関係ないでしょう?

 本当にやんなっちゃうなぁ。


「全く、困ったものじゃ。妾をわざわざ呼び出して何事かと思ったら、こんなくだらない事に呼びおって。不味い飯も食わされて、本当に迷惑な奴等よの」


 ドリアードさんはそう言って、私をチラッと見たので目が合うと、直ぐに視線を逸らして何処かへ去って行ってしまった。


 ドリアードさん……やっぱりツンデレさんなのかな?

 不味いとか言いながら、私が作った料理を全部食べてくれてる。


 私が去って行くドリアードさんの背中を見つめていると、オぺ子ちゃんが私の側までやって来る。


「ジャスミン、今の内にちょっと良いかな?」


「うん」


 オぺ子ちゃんがソイとマンゴスチンを気にしながら、こそこそと話しかけてきたので、私は声をひそめて返事をする。

 すると、オぺ子ちゃんは私の手を取って、スタスタと早歩きで調理実習室の外に出る。


 オぺ子ちゃんに連れられて調理実習室の外に出ると、オぺ子ちゃんは私に向き合って、声を潜めて話し出す。


「ジャスミンって、たっくんを助けに来たんだよね?」


「え? うん。そうだよ?」


 一応オぺ子ちゃんも助ける対象だったんだけど、結局は私も捕まっちゃったし、ミイラ取りがミイラになっちゃったわけだけども。


「やっぱり……。実は、たっくんはこの間までここにいたんだけど、今はいないんだ」


 え?

 おかしいな?


「11階より先にいるって聞いたんだけど?」


「やっぱり知ってたんだね。でも、それは最近までの話で、一部の人以外は事実を知らないんだ。つい先日、ベルゼビュートが不老不死になる事に成功して、たっくんはお役御免で出て行ったんだよ。と言っても、まだ何かやらされているようだったけどね」


 そ、そんな……。


「ここには、たっくんはもういないよ。いるとすれば、多分今はネコネコ編集部がある建物の中だよ」


 ネコネコ編集部?

 あれ?

 どこかで聞いたような……あっ!

 聞いたんじゃなくて見たんだ!

 オークのサイン会で、立て看板に書いてあったんだよ!

 じゃあ、里の何処かに、そういう所があるのかぁ。


「ジャスミン。とにかく、一緒にここから出よう。ここを出る手段は、ドリアード様の力で出るか、何処かにあると言われている出入口を通るかの二つ。出入口は僕が調べた限りだと、まず見当たらないから、恐らく11階から先だと思う。だから、まずはドリアード様と話し合いが出来る場を作らなきゃいけない。それまでは、事を荒げない様に、お互い努めよう?」


「うん。わかったよ」


 私はオぺ子ちゃんと頷き合い、調理実習室の中に戻る為に、ドアを開けようと手を伸ばす。

 すると丁度その時、勢いよくドアが開かれる。


「ふん! 俺は帰る!」


 ドアが開かれると、ソイがご機嫌斜めな顔をして調理実習室か出て来た。

 私は出て来たソイに睨まれて、舌打ちをされる。


「邪魔だ」


 そんな言い方は無いんじゃないかな?

 本当に失礼しちゃうよ。


 私は若干不機嫌になりながらもソイに道を譲ってあげると、ソイはわざとらしく足音をたてながら、そのまま何処かへ歩いて行ってしまった。


「ソイさん荒れてるな~」


 オぺ子ちゃんが、ソイが去って行った方へ顔を向けて苦笑して呟くので、私はオぺ子ちゃんに訊ねる。


「いつも、あんな感じなの?」


「そうだよ。いつも直ぐ怒ってる。ソイさんは怒りやすい人なんだよね」


「そうなんだ」


 うーん。

 何か理由でもあるのかなぁ?

 って、あんまり関わり合いになりたくないし、深く考えないでおこう。

 うん。

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