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234 百合は希望の風を感じとる

 私がスミレを抑えていると、それを見てマモンが愉快そうに笑い、今度はビリアに向かって走り出した。


「おまえも欲を解放しろ!」


 マモンは自身の長い爪で、ビリアを切り裂こうと飛びかかる。


「きゃあーっ!」


「させないんだぞ!」


 プリュがビリアの前に出て両手をかざし、魔法陣が浮かび上がる。


「ウォーターシールドだぞ!」


 プリュが魔法の呪文を唱えると、水の盾が魔法陣から瞬時に飛び出して、マモンの爪からビリアを護った。


「精霊の分際で!」


 マモンが悪態をつき、後ろに跳躍して下がる。


「主様の友達を、傷つけさせないんだぞ!」


「プリュ、よくやったわ!」


「だったら、おまえから――」


 マモンが何か言おうとしたその時、ルピナスちゃんが猛スピードでマモンの背後に回り込み、マモンの尻尾を掴み取った。


「――んにゃ!?」


 マモンは尻尾を掴まれると、力が抜けたのかヘナヘナと地面に膝をつき、両腕はだらりとぶら下がって、だらしのない顔で空を仰ぐ。


「にゃ、にゃめろ~」


 もしかして、尻尾が弱点?


「痛たたたたーっ! リリィ離すなのよ! 痛いなの!」


 いつものスミレに戻った?


「アンタ、大丈夫なの?」


 私がスミレの両腕を離すと、スミレは涙目で、離された両腕をバタバタと揺らした。


「分からないけど、多分大丈夫? なの。なんだか、突然エッチな気分になって、ルピナスちゃんを襲いたくなっちゃったなのよ」


「何よそれ?」


「分からないなのよ。とにかく、理性が利かなくなる位には、ルピナスちゃんへの欲求が高まったなの。危うく大変な事をしてしまう所だったなの。リリィ、ありがとうなのよ」


「お礼を言えるなら、もう大丈夫そうね」


 私は座り込んでしまったマモンを見る。


「マモンちゃん。悪い事したら、めっ! だよ」


「めっ」


 ルピナスちゃんの肩の上で、ラヴがルピナスちゃんと一緒に眉根を上げてマモンを叱る。


「分かったから、はにゃせー」


 私は安堵して、息を大きく吐き出すと、スミレと一緒にルピナスちゃん達に近づいた。


「もしかして、ルピナスちゃんはマモンの弱点が尻尾だって知っていたの?」


「うん。いつも遊んでる時に、尻尾を触るとペタンってなってたの」


「そう」


 私は微笑みながら、マモンに視線を向ける。

 すると、マモンは顔を青ざめさせて震えだした。

 私はそれを見て、ため息を一つ吐き出す。


「獣人なんかとか言いながら、その獣人のルピナスちゃんに手も足も出ないんじゃない。ルピナスちゃん、もう良いわ。離してあげて? 今は先を急いでるんだもの。こんなのに構ってなんていられないわ」


「うん」


 ルピナスちゃんが返事をして、マモンの尻尾から手を離すと、マモンは勢いよく私達から距離をとった。

 そして、涙目になりながら大声で叫ぶ。


「今度会ったら覚悟しろよー!」


 マモンはそう叫ぶと、一目散に逃げて行った。

 私はそれを呆れながら見送った。


「酷い目にあったなのよ。ルピナスちゃん、ごめんなのよ」


「ううん。大丈夫だよ」


 ルピナスちゃんはそう答えると、涙目のスミレに笑顔を向ける。


「ルピナスちゃんは幼女先輩の言う通りの、天使なのよー」


「ごめんね。私は何も出来なかった。むしろ足手纏いにしか……」


「気にする事ないんだぞ! ビリアさんはアタシが護ってあげるんだぞ」


「ありがとう。プリュイちゃん」


 プリュも結構頼もしくなったわね。

 それと……。


「ラヴもよくやったわ。スミレの様子の異変に直ぐに気づいて、ルピナスちゃんに教えてくれてありがとう」


「がお!」


 私がラヴの頭を撫でると、ラヴは嬉しそうに笑顔になる。


「それにしても、さっきのは何だったのかしら? 強欲がどうのとか言っていたわね。ルピナスちゃんは知ってる?」


「えっとねー。大罪の能力? が使えるって、マモンちゃんが前に言ってたよ」


「大罪の能力……ね」


 大罪と言うのが、何を意味しているのか私にはわからないが、以前ジャスミンからこんな事を聞いた事がある。

 ベルゼビュートとアスモデは七つの大罪に関係する悪魔の名前なのだそうだ。

 もしかすると、大罪とは、それの事なのかもしれない。


 それと、スミレは七つの大罪に関係する悪魔には、そこまで詳しくないらしい。

 ジャスミンと同じ様に前世で何度か目にした事はあるけど、興味が無くて、気にした事が無いようだ。

 ジャスミンから聞いた話によると、興味が無い人はそんなものだそうだ。


「って、そんな事より、早くマンゴスチンの家へ行きましょう」


「うん」


「そうね。急ぎましょう」


「あ~……。何だか、少しだけ体がだるいなのよ」


「スミレさん大丈夫か?」


「大丈夫なのよ。多分さっきのマモンちゃんの能力のせいだと思うなの。それに、だるいと言っても、学校に行く前のだるさに似ているだけだから平気なのよ」


「がお?」


「よくわからないんだぞ?」


 とりあえず、あの様子ならスミレは本当に大丈夫そうね。

 でも、万が一に備えて、マモンがまた出て来た時の対策は考えておかないとよね。

 正面から来るならいいけど、不意打ちされたらたまったもんじゃないもの。


 こうして私達はマンゴスチンの家に向かう途中でマモンと言う思わぬ障害が現れるも、ルピナスちゃんの活躍でマモンを退しりぞけて、その後は何事も無くマンゴスチンの家に辿り着く。

 と、言いたい所だけど、もう一度、私達は足止めされてしまう事になった。


 マンゴスチンの家は御神木の近くを通る事になるらしく、御神木の所にある湖の近くまで来た。

 するとそこで、何やらエルフ達が集まって騒いでいた。

 私は特に気にせずに進んで行こうとしたのだけど、ルピナスちゃんが耳をピクピクと動かして驚いた顔をした。


「リリィお姉ちゃん。精霊さんが倒れてるって、皆が騒いでるよ」


「精霊……? まさか!?」


 私は急いでエルフ達をかき分けて、倒れている精霊を確認しに行く。

 そして、私は倒れていた精霊を見て声を上げた。


「ドゥーウィン!」

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