表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
233/288

233 百合の芽を摘む強欲な魔の手

 サガーチャのおかげでジャスミンの居場所がわかった私は、早速その場所へ向かう事を決意する。


「乗り込むわよ!」


「リリィ落ち着くなのよ。乗り込むって言っても、どうやって中に入るつもりなのよ?」


「出入り口なんて、叩いて壊せばいいじゃない」


 私が質問に答えると、スミレは顔を真っ青にして首を横に振る。


「そんな事をしてエルフ全員と対立する事になったら、大変な事になるなのよ」


「そんな事どうでもいいわ。ジャスミンに何かあったらどうするのよ!?」


 私がイライラとしながらスミレに怒鳴ると、プリュが目を潤ませながら私の腕を掴んだ。


「リリさん、落ち着くんだぞ。エルフと戦う事になったら、主様がきっと悲しむんだぞ」


「プリュ……」


 頭に血が上って、冷静でいられなくなってたみたいね。

 プリュの言う通りだわ。

 今のまま乗り込んでも、怒りに任せて無意味に暴力を奮うだけになる。

 そんな事をしたら、きっとジャスミンが悲しむわよね。


 私は落ち着きを取り戻して、プリュの頭を優しく撫でる。


「ありがとう」


 私がお礼を言うと、プリュは笑顔を私に向けた。


「私から提案があるのだけど、聞いてくれるかい?」


 サガーチャが私に視線を向けて、怪しく笑みを浮かべながら手を挙げた。


「提案?」


「ああ。ジャスミンくんが捕まっている場所に乗り込むのは、最終手段で良いと思うんだ。このエルフの里に来てから、私には不可解な事が多くてね」


「不可解な事なの?」


「そうだね。その内の一つが神隠しについてなのだけど。まあ、このままジャスミン君を助けに行くのも勿論良いのだけど、それだけでは解決しない事もありそうなんだ」


「サガーチャ殿下、何かに気が付いたんですか?」


 ビリアが質問すると、サガーチャは苦笑して答える。


「私は皆と違って、魔力を見る事の出来る目があるからね。それでも、秒な違和感を感じる程度にはって程の事だよ。だから、今は上手く説明出来ない」


「で? それでアンタは、どうしたいって言うのよ?」


 私がサガーチャの、結局答えになっていない言葉に呆れて質問すると、サガーチャはニマァッと笑みを浮かべて私の質問に答える。


「これからマンゴスチンの家に行き、この里の長の息子であるソイを、拷問してあげるって言うのはどうだろうか?」


「ご、拷問するのか!? 可哀想なんだぞ!?」


「が、がお」


「それは良いアイデアなのよ」


「良いアイデアなのか!? アタシは怖いから嫌なんだぞ!」


「いいえ。プリュイちゃん。息子のソイは変態クズ男。その位で丁度良いわ。あの男が、何度ルピナスちゃんにいかがわしい服を着せた事か!」


「ソイくんお洋服いっぱい持ってたよ」


「許せないなのよ! 拷問じゃ物足りないなのよ! この世に生まれてきた事を後悔させて、いかがわしい服を頂いて、幼女先輩に着てもらうなのよ!」


 スミレの言葉に、私とビリアが頷く。


「決まりね。いかがわしい服を頂くわよ!」


「ええ。きっと、ジャスミンちゃんの魅力を最大限まで引き出してくれるわ!」


「長の息子も、年貢の納め時なのよ!」


 私達の決意が確かなものになると、サガーチャが突然笑い出す。


「あはははは。君達、目的が変わっているよ?」


「がお?」


「ルピナスさんは、息子さんにお洋服を着せられてたのか?」


「うん。婚約者だからお洋服いっぱいあげるねーって、変なのばっかだったけど、可愛いのもあったよ」


 待ってなさいよ!

 必ず、いかがわしい服を奪ってみせるわ!


 私達はマンゴスチンの家へと乗り込むべく、準備をして宿を出る。

 ただ、サガーチャは他にする事があるからと言って、一人残って馬車小屋へと向かって行った。





 マンゴスチンの家へ向かう途中で、見知らぬ猫の獣人が突然現れて、私達に話しかける。


「待て!」


「猫耳幼女なのよ!?」


「マモンちゃんだ」


「ルピナスちゃんの知り合い?」


 私が訊ねると、ルピナスちゃんは笑顔で頷く。


「ソイくんが私に変な事しない様にって、マンゴスチンお婆ちゃんが連れて来たんだよ」


「おかげでルピナスちゃんの純潔は守られたわね」


 と、ビリアが補足する。


「それを聞いたら、ジャスミンが喜ぶわね。ジャスミンったら、怖くて聞き出せないって、言ってたのよ。むしろ考えない様にしていたみたいなのよね」


「まあ、その気持ちはわかるわ」


「良かったなのよ」


 私達が話していると、マモンが突然怒り出す。


「私を無視して盛り上がるな! もう怒ったわ! リリィ=アイビー! トランスファでの借りを返させてもらうよ!」


「トランスファでの借り?」


 私が首を傾げると、ルピナスちゃんが答える。


「マモンちゃんはケット=シーちゃん達のリーダーだよ」


「え? ケット=シーのリーダー?」


 ケット=シーのリーダーと言えば、見た目が猫だったはずよね?


 私は獣人を舐めるように見る。

 猫耳ではあるが、どう見ても人の顔。

 オレンジ色のミディアムヘアーで、茶色の瞳のつり目の女の子。

 着ている服は、ジャスミンから教えて貰った話では恐らく浴衣。

 浴衣のスカートの様な所からは、猫の尻尾が見えていた。

 どう見ても猫の獣人にしか見えない。


 つまり。


 と、私は結論付ける。


「そんなのがいたような気もするけど……アンタ、獣人だったのね」


 私がそう口にすると、マモンは尻尾を激しく左右に動かし始める。


「何喜んでるのよ?」


「怒ってるのよ! 私はケット=シーだ! 獣人なんかと一緒にするな! 前世の記憶が甦って、人型になれる様になったんだ!」


 私はめんどくさいと思ったので、先を急ぐことにする。


「はいはい。悪かったわね。じゃっ」


「逃げるんじゃないよ!」


「はあ。何なのよ?」


「今からおまえ達、特におまえだリリィ=アイビー! おまえを八つ裂きにしてやる!」


 マモンが甲高く大声を上げると、マモンの手の爪が異様に長く伸びた。


 私は煩いなと思いながら、マモンに迷惑だと目で訴えてみる。

 だけど、目で訴える程度では、私の気持ちを察してくれない様だ。

 マモンは勢いよく私に向かって走り出す。


「私は前世の記憶と一緒に、強欲の力を手に入れたんだ! この前の様にはいかないからな!」


 マモンが無駄口を叩きながら、私に飛びかかって伸ばした爪で切り裂こうとしてきた。

 私は受けるのもめんどくさいので、軽く横に移動して避ける。

 すると、マモンはそのまま私を通り過ぎて、背後にいたスミレに向かって行く。


「裏切り者! まずはおまえからだ!」


「しまった!」


 スミレを狙ってくるとは思いもよらず、私は一瞬出遅れる。

 そして、その一瞬が最悪な事態を招いてしまった。


「きゃ……っ」


 マモンの動きにスミレはついていけず、スミレは腕をクロスさせて身を守る。

 スミレはマモンの爪でクロスさせた腕を切られ、お腹に蹴りを入れられて後方へ吹っ飛んだ。


「スミレお姉ちゃん!」


 ルピナスちゃんが吹っ飛んだスミレを追いかけて、抱き起こす。

 ビリアは恐怖で顔を青ざめさせて声も出せずに、その場で尻餅をついて震えた。

 プリュが私の肩に乗り、耳元で話す。


「スミレさんが蹴られた時に、変な感じがしたんだぞ」


「変な感じ?」


 私がプリュに聞き返したその時、ラヴが慌てた様子でルピナスちゃんに近づく。


「ルピ、チュミにちかづいちゃだめ」


 その時、スミレがルピナスちゃんを突然地面に抑えつけた。


「スミレお姉ちゃん?」


「何やってるのよスミレ!?」


 私は急いでスミレをルピナスちゃんから引き剥がし、スミレの両腕を掴んで抑える。

 すると、その様子を見ていたマモンが愉快そうに笑いだした。


「あーっはっはっはっはっ!」


「何笑ってんのよ!?」


 私がマモンを睨むと、マモンはニヤリと笑みを浮かべる。


「おまえ達が滑稽で面白いから、笑いたいと感じる欲に従って笑ってるのよ。ありのまま欲を受け入れなきゃ、強欲とは言えないでしょう?」


「はあ? 何言って……って、あーもう! スミレいい加減にしなさいよ!?」


 スミレは我を忘れたかの様に、私から逃れようとうめき声を上げながら暴れる。

 しかもそれは、予想以上の力で手加減なしで暴れてくれるので、流石に私もスミレを傷つけない様に抑えるのに苦戦してしまう。


 本当に何なのよ!?

 こんな事してる場合では無いのに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ