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230 幼女を心配するのは当然です

 フルーレティさん達とお話をしたのだけど、結局ベルゼビュートさんやアスモデちゃん、そしてたっくんの居場所もわからなかったし、ドリアードさんについては謎が深まるだけだった。

 でも、フルーレティさんとプルソンさんとスーちゃんが、出来る範囲だけど協力してくれると言ってくれたので、念の為に私達が宿泊している宿を教えておいた。


 精霊さんやフルーレティさん達と別れて、里へ戻る事にした。

 私としては来て良かったなぁって思いながら、里に戻る帰り道。

 私とは違って、リリィは眉根を上げてご機嫌ななめな様子で私の前を歩いていた。


 うーん……。


 私は眉根を下げながら、小走りでリリィの横に並ぶ。


「リリィ、さっきからどうしたの? 精霊さん達の集落を出てから、ずっとご機嫌ななめだよね?」


 リリィは私を横目でチラリと見て、直ぐに視線を逸らして話し出す。


「だって、おかしいじゃない! 出来る範囲で協力とか言っておきながら、今の所は何も出来ないとか言い出したのよ!」


 あぁ。

 そう言う事かぁ。


「うーん……。仕方がないと思うけどなぁ」


 そう。

 リリィの言う通り、フルーレティさんもスーちゃんも、今の所は何もしないと言っていたのだ。

 しかも、ベルフェゴールの情報は教えられないとの事だった。

 だから私達が知っているのは、ベルフェゴールがマンゴスチンさんの家でコックをしているという事だけだ。


「会ってもいない奴の情報や能力を知っていたら、怪しまれるからですって? そんなの、しらばっくれりゃ良いじゃない! 何なのよアイツ等! 協力する気ないんじゃないの!?」


「まあまあ、落ち着いてよ」


 私はリリィの頭を優しく撫でる。

 頭を撫でると、リリィはムスッとした顔で私と目を合わせた。


 わぁ。

 リリィのムスッとした顔可愛い。


「もう。ジャスミンにそんな顔されたら、怒るに怒れないじゃない」


「え?」


「主様、顔がにやけてるんだぞ」


「ジャチュ、によによ~」


 私は恥ずかしくなって、咄嗟に両手で顔を隠す。

 すると、リリィは私に微笑んで、私の手を取って指を絡め恋人繋ぎした。


「ごめんね、ジャスミン。早く戻りましょう」


「うん」


 私は返事をして、リリィと一緒に歩き出した。





 エルフの里まで戻って来ると、里の出入口でトンちゃんとラテちゃんにお出迎えされた。

 2人とも何やら焦っていた様子で、私を見つけると瞳を潤ませて、突然勢いよく飛びついて来た。


「ご主人!」

「ジャス!」


 私は2人を受け止めて、苦笑しながら訊ねる。


「ど、どうしたの? 2人とも」 


「心配したに決まってるッスよ!」


「そうです! ジャスに何かあったかと思ったです!」


「え? えぇぇ……?」


「ドゥーウィンもラテも心配性なんだぞ」


「がお」


「何言ってるッスか!? ご主人の反応が突然消えて、加護の通信も反応ないし、ボク達は気が気でなかったんスよ!」


「え!? そうなの!?」


「スミレもジャスとリリィの匂いが突然消えたって言いだして、凄く心配したです」


「え? 私も?」


 私とリリィは目を合わせて、首を傾げる。


「どういう事なんだぞ?」


「がお?」


「そんなのわかんないッスよ! でも、ご主人が無事で良かったッスよー!」


「ジャスのバカ! 本当に心配したですよ!」


 トンちゃんとラテちゃんは私にギュッとしがみついて離さない。

 私は2人の頭を撫でながら、2人が落ち着くのをリリィ達と一緒に暫らく待つ事にした。


 トンちゃんとラテちゃんが落ち着いてから、聞いた話をまとめるとこうだ。

 私達が里を出た直後に、契約者の居場所がわかるという効果が無くなってしまったのだそうだ。

 それで焦ったトンちゃんとラテちゃんは加護を使って私に通信を送るのだけど繋がらず、何かあったのかもしてないと思った所で、スミレちゃんまでもが匂いが消えたと首を傾げた。

 2人は焦って宿屋を飛び出して、私に何かあったのではと考えて、里の中を捜しまわったらしい。

 それから里の中を捜しまわっても見つからないので、森へ捜しに行こうとした所で、丁度私達が里に戻って来たようだ。


 多分リリィがいる手前だから2人は言わなかったけれど、この前あった私の身に起きた契約の代償からでた前兆を、2人は思い出したのかもしれないなと私は思った。

 リリィに知らせない為に、何かあったのかもと言葉を濁したけれど、私が倒れたのだと考えたんだろう。

 もし本当に私が倒れたら、リリィならきっと私を助ける為に、何処か治療できる場所へ向かう。

 トンちゃんとラテちゃんはそう考えて森に向かわずに、里の中を捜しまわったんだろうなと、私は2人を見て感じだ。

 それ程、2人の慌て方が凄かったからだ。

 リリィの匂いまで消えているわけなのだから、冷静になれば私個人に何かあったとは考え難いようなものだけど、2人はそれだけ慌てていて考えが及ばなかったのだろう。


 心配させちゃったな。


「トンちゃん、ラテちゃん。心配してくれてありがとー」


 私は何度も優しく2人の頭を撫でた。


「全く大袈裟なのよ。私も一緒にいるんだから、ジャスミンの身に何か起きるわけないでしょう?」


 リリィもそう言いながらも、優しい顔でトンちゃんとラテちゃんを見つめていた。


 それから、リリィに頼んで里にも結界が張られているのではと調べる。

 そうしてわかったのだけど、リリィが言うには精霊の集落のような魔力の壁は見当たらなかったけど、里の周りを囲うような線が地面にあるようだ。


「どうする? これも破壊してみる?」


「うーん……。無暗に壊すと、後々何かあった時に困りそうだし、とりあえずそのままで良いかも」


「わかったわ。とりあえず原因は多分これだろうし、一応注意しておきましょう」


「うん。それじゃあ、宿屋に戻ろっか」


「そうね」


 宿屋に戻ると、トンちゃんとラテちゃんとは対照的に、スミレちゃん達は笑顔で出迎えてくれた。

 話を聞いた所だと、スミレちゃんは匂いが消えはしたけど、最近は匂いを遮断される事が多くて慣れていたのと、リリィが一緒にいるので大丈夫だろうと思っていたらしい。

 ルピナスちゃんとブーゲンビリアお姉さんも一緒で、あの2人なら問題ないと気楽でいたみたいだ。

 サガーチャちゃんに至っては、研究に没頭しすぎていて気付いていなかったらしく、返ってきた反応がこれだった。


「え? そうだったのかい? あはははは。楽しそうなイベントを逃してしまったね」


 楽しそうなって、サガーチャちゃん。

 軽すぎだよ……。

 うーん……でも、サガーチャちゃんなら本当に楽しむのかも?

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