023 幼女になったので不老不死になりに行きます
フラワーサークルに到着すると、まずはお話をする場所を決める。
そうして、あたり一面に広がる綺麗なお花畑の絨毯の上に、私達は腰を下ろした。
「まずは、何からお話しますなのですよ」
「う~ん。簡単な自己紹介をしようよ。スミレちゃんは、皆の事知らないでしょう?」
「はい! 是非是非お願いしたいなのですよ!」
スミレちゃんが目を輝かせて乗り出す。
この反応を見るに、きっと気になっていたんだろうなって感じる。
自己紹介の内容は、各々の名前と年齢。
それと、どういう関係なのか紹介というものになった。
年齢は言う必要も無かったかもしれないけど、最初に自己紹介したルピナスちゃんが、元気に年齢を話したので私もリリィも話す事にしたのだ。
その時の、はなまる笑顔のルピナスちゃんの「8才だよ」が、もの凄く可愛かったから仕方がない。
一通りの自己紹介を終えると、リリィがスミレちゃんに問いかける。
「それでスミレは今、私のハンカチは持っているの?」
「もちろんなの! 肌身離さず持ち歩いてるなのよ!」
スミレちゃんはそう言うと、その豊満な胸の谷間から、袋詰めにされたハンカチを取り出した。
取り出す時に、ちょっとおっぱいが揺れたのを見て、エッチだなぁとぼんやり私は考える。
「ちゃんと匂いが消えない様に、袋に入れて大切にしてるなのよ」
スミレちゃんは、フン。と、鼻息を出してドヤ顔だ。
そんなスミレちゃんの態度を見るなり、リリィはニコッと可愛らしい笑顔を見せて、スミレちゃんの前に手を出して「じゃあ」と続ける。
「それ返してくれないかしら?」
「嫌なのよ」
「は?」
笑顔は急変。
いや。顔はそのままだ。
リリィの顔は笑顔を維持して、スミレちゃんを凄む。
ひいぃ!?
いきなり火花散ってるよ。
「前世の記憶が戻ったなら、もう必要ないわよね?」
「私は前世でも、今と同じで幼女大好きな匂いフェチだったから、何も問題はないなのよ」
いやいや。
それって、問題しかないんじゃないかな?
「どうやら、スミレ。アンタとは、一回ケリをつける必要があるようね」
「望む所なのよ。どちらがこのハンカチの持ち主なのか、勝負なのよ!」
「ジャスミンのお尻の匂いは、私のものよ!」
言い方!
言い方気をつけよう?リリィ。
もう、本当に気持ち悪いよ?
と言うか、スミレちゃん。
持ち主は間違いなくリリィだよ?
ほら。
2人がお馬鹿な事言い合ってるから、ルピナスちゃんも呆れて……あれ?
すっごい笑ってる。
お腹を抱えて笑っちゃう位に、ルピナスちゃん的には面白いの?
ルピナスちゃんが楽しんでいる所悪いのだけど、話が進まないので、私は2人の間に割って入る事にした。
「今はそんな事より、私の質問をさせてほしいんだけども!」
そう言って、スミレちゃんの手を取った。
すると、スミレちゃんは顔をほんのり赤らめて、「仕方がないなのですよ」と言って、私の手を解いてほっぺを手で押さえた。
リリィも私に話題を逸らされて、「ぐぬぬ」と言いながら、この場は引いてくれた。
「それで質問と言うのは、あそこで言っていた、成長を止める能力を持つ魔族の話なのですか?」
「うんうん。それそれ」
さっきの話をスミレちゃんは覚えていてくれたみたい。
話が早くて助かるよ。
私は笑顔で話を続けた。
「さっきもお話をした通り、私もスミレちゃんと同じ転生者でしょう? それで、前世の私が言っているのよ。このまま、自然に任せて、成長を続けていいのかって!」
スミレちゃんも、リリィもルピナスちゃんも、私の話を「うんうん」と真剣に聞いてくれている。
「そして、私は思ったの! このままじゃ駄目なんだって!いえ。このままじゃないと駄目なんだと!」
「「おおー」」
3人が拍手をして、私を盛り上げる。
「そんなわけだから、スミレちゃんが知ってる事を、教えてほしいの!」
「わかりましたなのですよ! そう言う事なら、先輩の力になりますなのです!」
私はスミレちゃんと、ガシッと力強く手を取り合った。
そして、スミレちゃんが「こほん」と、軽く咳をついて話を続ける。
「具体的に話すと、正確には成長を止める能力ではなく、不老不死にする能力なのですよ」
「不老不死?」
その単語を聞いて、思わずリリィがそのまま聞き返す。
「そうなのよ。不老不死なのよ。能力を持っている魔族は『フェニックス』なの。今は何処にいるかはわからないけど、その不老不死の能力は本物なのよ」
これって、思っていた以上に、もの凄い能力なんじゃないかな?
私としては成長を止めるだけで良かったんだけど、不老不死だもん。
成長もしないし、死なないって事だよね?
それに、その能力を使える魔族が『フェニックス』と言う名前なら、これは間違いないかも。
私は、その名前を前世で何度も見たもん。
あらゆる作品で登場し、どの作品でも取り上げられるのが、全部と言っていい程に不死なんだよね。
私の偏見かもだけど、不死と一緒に連想されるものが不老だし、不死に不老がついてもおかしくないよね?
私が驚きと興奮で考え事をしていると、今まで黙って聞いていたルピナスちゃんが、「はい!」と元気よく手を上げた。
「不老不死になったら、ジャスミンお姉ちゃんはどうなるの?」
「不老だから年を取らなくなって、見た目もこの先変わらなくなるし、不死だから年を取って死ぬこともないなのよ」
「じゃあ、ジャスミンお姉ちゃんは、ずっと可愛いままなの?」
可愛い!?
今、ルピナスちゃんに可愛いって言われた!?私!
ルピナスちゃんに、そんな風に思われてたなんて、嬉しい!
これは、是が非でも、絶対に不老不死にならなければ!
ルピナスちゃんからの思わぬ発言が飛び出して、私は思わずニヤケ顔になってしまう。
「ありね……」
リリィも真剣な顔で呟いて、鼻血を出していた。
あの? リリィ?
ついに鼻血キャラの領域にまでいってしまったの?
って、いやいや。
そんな事よりだよ!
私は決意して、その場に立ち上がった。
「決めたよ! 私!」
皆が私に注目する。
「前世では、冴えないおじさんとして生きてきた私だけど、今こうして女の子として産まれてきたのは、きっと神様がそんな私に与えてくれたチャンスなんだよ!」
「え? 先輩って、前世では男だったなのですか?」
「うん」
そう言えば、前世が男って事は、まだ話していなかったんだっけ?
あ。じゃあ、もしかしたら引かれちゃうかもしれないよね?
リリィみたいな子は特殊だもん。
「幼女なのに中身が男なのですか……? ロリとショタと成年を兼ね備えているなのですか?」
え? 何それ怖い?
色々おかしいけど、とりあえずスミレちゃん、ショタではないでしょ?
意味が分からないよ。
「わかってしまったなのですよ! 女同士でも合法なのです! しかも、おじさんだったという事は、成年要素もあるから何をやっても許されるなのです! 合法なのです! さすが先輩、パーフェクト幼女なのですよ!」
言いたい事は、うん。
わかったような気がする。
とりあえず、引かれちゃうかもなんて少し不安だったけど、大丈夫そうで良かった。
むしろ、私が若干引いてるもん。
「貴女、わかってるじゃない」
リリィとスミレちゃんが頷き合う。
私は話を戻す為に一度「こほん」と咳払いをして、「とにかく」と続けて、改めて声を高らかに宣言した。
「幼女になったので、不老不死になりに行きます!」
その時、決意を示し宣言した私を気持ちの良い風が、まるで祝福してくれるかのように吹き抜ける。
リリィもルピナスちゃんもスミレちゃんも、私を笑顔で拍手してくれていた。
私は皆の拍手を浴び、そして気持ちの良い風を肌で感じて、心の底から確信したのだ。
あ。
私、今ノーパンだった。
と……。




