220 幼女も見惚れる和服美人
私は馬車から降りて、エルフの里の美しさに目を奪われていた。
すると、後ろからスミレちゃんに声をかけられる。
「幼女先輩、エルフの里には、雪があまり積もってないなのですね」
スミレちゃんに言われて、私はエルフの里に雪がそれ程積もってない事に気が付く。
「あ。本当だ」
フルーレティさんの能力で雪を降らせてるみたいだし、もしかしたらエルフの里には雪が積もらないようにしているのかな?
などと私が考えていると、リリィがスミレちゃんに訊ねる。
「スミレ、それよりオぺ子ちゃんの匂いはするの?」
あっ。
そうだよね。
早く助けに行かな……いやいやいや。
オぺ子ちゃんは男の子なんだから、スミレちゃんも匂いなんてわからないでしょ。
「あっちなのよ」
え!? するの!?
私が驚いていると、スミレちゃんが首を傾げて私を見た。
「幼女先輩?」
「う、ううん。なんでもないよ。あはは……」
そんなわけで、早速オぺ子ちゃんの匂いのする方へ向かおうとすると、ブーゲンビリアお姉さんがフード付きの大きなローブを羽織って顔を隠しながら、私に話しかけてきた。
「ジャスミンちゃん、ちょっと待って?」
「うん?」
私がブーゲンビリアお姉さんに振り向くと、ブーゲンビリアお姉さんはキョロキョロと周囲を警戒しながら私に近づいて来た。
「これを渡しておくわ」
そう言って、ブーゲンビリアお姉さんは私に二つ折りの紙を渡す。
私は渡された紙を広げて確認した。
「エルフの里の地図?」
「ええ。そうよ。ここに宿屋が書いてあるでしょ?」
「うん」
「私とサガーチャちゃんは長のマンゴスチン達に面が割れてるから、下手に動き回ると足手纏いになりかねないでしょ? だから、ニスロクさんに頼んで宿屋まで連れて行ってもらって、そこで待機する事にしたの。今後の集合場所は、宿屋って事で良いかしら?」
「そうだよね。うん。わかったよ」
そんなわけで、私はブーゲンビリアお姉さんとサガーチャちゃんとニスロクさんと別れて、地図を見ながら、スミレちゃんの後をリリィとついて行く事にした。
地図を見てわかったのだけど、私達が馬車を降りた場所はエルフの里の中でも人があまりいない外れの方だったようだ。
私達が馬車から下りた場所から見えた大木の反対側は、エルフ達のお家が沢山あって、長の家などもそこにあるようだった。
それとエルフの里には川も沢山流れているようで、地図にも描かれているのだけど、私が歩く直ぐ横にも綺麗な川が流れている。
その川もとても綺麗で、凄く透き通っているから川の底が見えていて、魚が泳いでいるのが見えた。
結構気温が低いと思うけど、川の中は大丈夫なのかな?
私は試しに川に指先を入れてみる。
冷たっ!
思ったより凄く冷たいよ!
お魚さん大丈夫なの?
私は魚を見つめる。
大丈夫そう。
不思議だなぁ。
そんな事を考えながら、少し歩いて私達は湖に囲まれた大木の根元に辿り着く。
大木は側まで来ると想像以上に大きくて、横幅だけでも東京ドーム位はありそうだ。
何人かエルフの人達を見かけたけど、皆金髪で肌が白くて、それに身長も高いんだなぁ。
それに、顔が綺麗な人ばっかりで驚いちゃった。
男の人はイケメンばかりで、女の人は美少女と言うより美人って感じ。
アマンダさんみたいに、体がすらっとしていて細い人ばっかりだったなぁ。
それに、何より驚いたのは服装だよね。
ここに来るまでに目にしたエルフ達の服装を見て、私は少し驚いていた。
何故なら、エルフの男性はオライさんと同じ狩人が着るような緑色の服を着ていて、女性が和服を着ていたからだ。
私のエルフが着るお洋服のイメージだと、男の人はイメージ通りだったけど、まさか女の人が和服だったなんてなぁ。
でも、なんで男と女で来ている服の種類が違うんだろ?
流行ってるとか……?
そんなわけないか。
そう言えば、エルフの人達も私達を見てたなぁ。
すれ違いざまに何度か目が合っちゃった。
やっぱり、エルフの里に他種族がいるのは珍しいのかも。
私がボーっと、そんな事を考えていると、スミレちゃんが首を傾げて口を開く。
「おかしいなのよ。オぺ子ちゃんの匂いは、ここで消えているなのよ」
「ここで神隠しにあったのかしら?」
「それだとおかしくないッスか? あねさんの話では、少なくともボク達と出会う前に神隠しにあってるんスよ。最低でも七日は時間が経ってるッス」
「そうだよね。でも、それならなんでなんだろう?」
「ジャス、この大木が怪しいです」
「どういう事?」
「この大木から、何か不思議な加護を感じ……っ!?」
ラテちゃんが大木を見上げながら話していると、途中で声を詰まらせて目を見開いて驚く。
私は首を傾げてラテちゃんの視線を追った。
するとそこには、一際綺麗な着物を着ている身長の高い女性が宙に浮いて、私達を見下げていた。
私は女性の姿に驚きながらも、少し見惚れてしまった。
その女性は顔が綺麗に整っていて、凄く美人さんだった。
つり目の瞳はエメラルドグリーンで、髪は綺麗な緑色でとても長く、膝下あたりまで伸びていた。
そして着物を着崩すように着ていて、両肩と胸の谷間、そして着物が風になびいて生足が見えていた。
と言うか、両肩と胸の谷間、更には生足が上の方まで見えているからわかる事なのだけど、上も下も下着を着けていない。
私がロリコンでなければ、完全に目を奪われていた事だろう。
綺麗な人。
と言うか、ボンキュッボンで多分下着も着けてないし、凄くエッチな感じだよ。
身長も凄く大きいなぁ。
180……ううん。
190センチ位ありそう。
この人がエルフの長のマンゴスチンさんなのかな?
宙に浮いていた女性は地面に下りると、私達全員と順に目を合わせてから、少し目を鋭くした。
「ここは妾の領域。其方等、何用じゃ?」
「何こいつ? 偉そうね」
「本当なのよ」
リリィとスミレちゃんが女性を睨み、ラテちゃんが慌てだす。
「2人とも待つです。この方に失礼な事を言っては駄目です!」
この方?
「え、えっと……」
私が慌てる様子のラテちゃんに困惑していると、トンちゃんが私の耳元で呟く。
「ご、ご主人、この方は、木の大精霊ドリアード様ッス……」
「木の、大精霊!?」
私が声を上げて驚くと、ドリアードさんが私を見て目を細めて睨む。
どうやらルピナスちゃんとオぺ子ちゃんを助けるのは、一筋縄ではいかないのかもしれないと、私はこの時感じたのだった。




