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212 幼女の別れは笑顔を添えて

 私達はエルフの里へ向かう為にお城を出ると、サガーチャちゃんが大きな荷物を抱えて外で待っていた。


「サガーチャちゃん、その荷物どうしたの?」


 私が驚きながらもそう訊ねると、サガーチャちゃんは、さも当たり前かのように答える。


「私もジャスミンくんの旅について行こうと思ってね」


「え!?」


「元々今日の作戦を立てていた時に、ジャスミンくんがそのままここを出るような話し方をしていたから、直ぐに旅立つんじゃないかと思っていたんだ。だから、急いで支度して来たんだよ。様子を見るに、私の予想はあたっていたわけだ」


 そう言って、私達のお見送りに来たコラッジオさんとベッラさんとアモーレちゃんを、サガーチャちゃんは見た。


「いやいや。ダメだよ。サガーチャちゃんはお姫様なんだよ? ねっ。コラッジオさん」


 私がサガーチャに話している途中で、コラッジオさんが私の前に出たので、私はコラッジオさんに同意を求めた。

 すると、コラッジオさんはサガーチャちゃんの横に立ち、私に頭を下げる。


「コラッジオさん?」


「不束者な娘ですが、どうぞよろしくお願い致します」


「えええぇえぇぇぇっっ!?」


 そんな娘を嫁に出すかのように!?


 私が驚く中、更にベッラさんがサガーチャちゃんの隣に立つ。


「ジャスミンちゃん、サガーチャの事をお願いね」


「ベッラさん!?」


 そして止めと言わんばかりに、アモーレちゃんがサガーチャちゃんの前に立ち、私に笑顔を向ける。


「ジャスたん、おねさまをよおしくおねがいします」


 う、嘘でしょう?


 私がまさかの展開に困惑していると、リリィが私の肩に触れた。


「賑やかになるわね」


「あはは……。うん」


 私は苦笑交じりに返事をして、サガーチャちゃんと目を合わせる。


「サガーチャちゃん、よろしくね」


「ああ。こちらこそよろしく頼むよ」


 こうして私は新たにサガーチャちゃんを仲間に加えて、コラッジオさん達やサルガタナス一味と別れて、鉱山街を後にした。

 ちなみに、馬車の馭者ぎょしゃは、エルフの里に一緒について来てくれるニスロクさんが担当してくれた。

 道案内はもちろん、エルフの里までの道を知っているブーゲンビリアお姉さんだ。


 それと、これはどうでも良い話なのだけど、ビフロンスまで一緒について来ると言い出したので、私とリリィが嫌がっていたのだけど、スミレちゃんの一言で無事に事無きを得た。

 その一言とは。


「ビフロンスはアモーレちゃんの護衛をこれからもしっかり頑張るなのよ」


 だった。

 しかもそれが別れを惜しむでも無く、もの凄く良い笑顔で言うので、ビフロンスは涙目で頷く事しか出来なかったという、そんなどうでも良いお話だ。




 

 暫らくして鉱山を出ると、アマンダさんとフウさんとランさんが、ニクスちゃんを集落に送ると言って、別れる事になった。


「ジャス、ホンマ助けに来てくれてありがとうな」


「うん。ニクスちゃんが無事で、本当に良かったよ。でも、本当におっぱいを大きくしてもらわなくて良かったの?」 


「ええんよ。ウチは、おっぱいより愛に生きるんや。せやから、いつかウチもジャスと一緒にいられる様に、立派になるんや」


「あははは」


 私は返す言葉に悩んで、とりあえず苦笑しておく。


 願わくば、離れているうちに真っ当な道へと戻ってほしいなぁ。


 と、思いながらも、そこで私はニクスちゃんとのお話で思い出す。


「アマンダさん、サルガタナスと決着をつけるって言ってたよね? 結局、私のせいでつけれなくなって、ごめんなさい」


 私がアマンダさんに目を合わせて謝ると、アマンダさんは私に優しく微笑んだ。


「気にしなくていいのよ。それに貴女と出会った時に、なんとなくこうなるのではないかって、予想していたもの」


「アマンダさん……」


「「ジャスミンちゃん達に、私達姉妹の活躍をあまり見せられなかったのが悔やまれますな~」」


 フウさんとランさんが左右対称にポーズを取って言うと、プリュちゃんとラヴちゃんが真似をする。


「まあ、そうは言っても、ニクスを助けたのはラテとアンタ達姉妹の功績よ」


「それなりに楽しかったです」


「「それ程でもありますぜ。イエーイ」」


 フウさんとランさんがポーズを取ってドヤ顔になり、プリュちゃんとラヴちゃんがポーズの真似をしてドヤ顔になる。


 カメラ!

 カメラは何処!?


 私がプリュちゃんとラヴちゃんのドヤ顔を写真に残したくて、カメラを探そうとすると、丁度そこでアマンダさんが私に話しかけてきた。


「それでは、私達はこの辺で」


「うん。アマンダさん、ニクスちゃん、フウさん、ランさん、また会おうね」


「ええ。また会いましょう」


「ジャス、またな」


「「ジャスミンちゃんも皆さんもお元気で」」


 私はなんだか少し寂しくなって、泣きそうになってしまった。

 だけど、私は泣く事も無く笑顔で別れる事が出来た。

 何故なら、別れ際に見せたアマンダさんのカーテシーの挨拶に合わせて、フウさんとランさんがアマンダさんを囲って左右対称にポーズをとったからだ。

 それがなんだか可笑しくって、私も皆も笑い出す。

 アマンダさんだけは、フウさんとランさんを睨んでいたけれど、それがまた可笑しかった。

 おかげで私は、笑顔で別れる事が出来たのだ。


 私達は大きく手を振って、そして、それぞれの目的に向かって進んで行く。

 次に目指すはエルフの里。


 ルピナスちゃん、待っててね!

 ロリコンエルフとの結婚なんて、絶対に阻止してあげるんだから!

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