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210 幼女はブーメランで自爆する

「ジャスたん様、表の像は見て頂けましたかな?」


「……うん」


 お城の城門をくぐると、コラッジオさんが両手を広げて私達を出迎えた。

 コラッジオさんは城門前の像を私に見せたくて、お城に呼んだらしい。

 マラクスさんも一緒にいて、今までで一番の出来だと喜んでいた。

 と言うか、何故か城門からお城へと続くこの庭園に、この街のドワーフの人々が数多く集まっていた。


 コラッジオさんから説明を聞いたところによると、サルガタナスのサーカスが公演開始と同時に中止となった時、暴動が起こりかけたらしい。

 でも、それを鎮めたのがベッラさんとアモーレちゃんだった。

 2人は混乱している人達や、怒り暴れ出そうとしていた人達をなだめて、お城に避難させようとしたのだ。


 だけど、問題が起こってしまった。

 サーカスを見に来た観光客の何人かが、私達の事を伝えに来たアマンダさんと兵隊さん達の話を聞いてしまったのだ。

 そして聞いてしまった人達が、魔族が暴れているから、街を出た方が安全だと言い出した。

 そのせいで、結構な人数が街の出入口に押し寄せてしまった。


 それから、出入口付近が大混乱となった所に、サルガタナスが吹っ飛んで来た。

 サルガタナスは魔族では無くサーカス団の団長として認識されていて、そのサルガタナスが死にかけていたので、やっぱり魔族の仕業なのだと事態は更に悪化した。

 一触即発となって、ドワーフの人達や観光客は自分達を鎮めようとしている兵隊さん達に、今にも飛びかかりそうな勢いになってしまった。

 だけど、そこで私が飛んでやって来た。


 そして私が皆の前で回復魔法を使って、サルガタナスを助け出した。

 その結果、一瞬にして皆の心は晴れやかになって、私は空から舞い降りたパンツの女神様となったらしい。


 その後は、コラッジオさんが皆をここまで連れてきて説明をして、サルガタナスの正体が実は魔族だったと全員が理解したようだ。

 そして、何故か全員が一致団結して、マラクスさんに頼んで城門前に立っていた私の像を作り上げたのだ。

 何がどうなったら、そこから私の像を作るとなるのかわからないけれど、正直本当に勘弁してしてほしい。


「パンツの女神様~。ありがたや~」


 といった感じで、私は今、庭園に集まった人達から、もの凄く拝まれている。

 私はそれはもう困惑しっぱなしで、本当にどうしようかと頭を悩ませた。

 すると、トンちゃんが私の耳元で、わざとらしくボソリと呟く。


「別に呼ばれ方なんて、なんだって良いんだよッス。大事なのは、自分がどう生きるかなんだよッス」


 そ、それは!?


「別に呼ばれ方なんて、なんだって良いんだよッス。大事なのは、自分がどう生きるかなんだよッス」


 繰り返さないでー!?


 私は羞恥心で頭の血が沸騰するんじゃないかと思えるくらいに、頭に血が上るのを感じながら、その場でしゃがんで両手で顔を隠した。


 私、おもいっきりブーメランだよ!

 コラッジオさん、偉そうな事を言ってごめんなさい!

 やっぱり呼ばれ方は、絶対凄く大事だよ!


 私とトンちゃんのやり取りを見ていたリリィが、トンちゃんの頬っぺたをこれでもかと言うくらいに引っ張る。


「ハニーやへふッスー。ひはひッフホー」


「あ~ら何かしら? 何を言ってるのかわからないわ~」 


「トンペットは本当にバカです」


「何かあったのか?」


「がお?」


「プリュもラヴも気にしないで? ドゥーウィンがおいたしたから、優しく躾ているだけよ」


「わかったんだぞ」


「がお」


 私は段々と羞恥心が薄れてきて、ある程度平常心を保てるようになったので立ち上がる。

 すると、そこでアモーレちゃんが私の側までやって来た。


「ジャスたーん!」


 アモーレちゃんは私に抱き付いて、覗き込むように顔を上げて、私と目を合わすとニコッと笑顔を見せてくれた。


 やーん!

 可愛すぎるよ!

 癒されすぎて、もうなんでもいいや~。


「ジャスたん、はやくおしおいこ」


 アモーレちゃんが私の手を握って、お城に行こうと引っ張り出すので、私は拒む理由も無いのでついて行く事にした。

 そうして、私が庭園に集まった人達に拝まれながらお城の中に入ると、アモーレちゃんは手を繋いだまま何処かへ向かって歩き出す。

 すると向かっている間に、いつの間にか後ろをついて来ていたサルガタナスに、スミレちゃんが話しかける。


「サルガタナス様、何でサーカスなんて開こうとしてたなの?」


「ん? ああ、それはベルゼビュート様と手を組んだ時に、オイラが金銭面の担当を任されたからさ。オイラの他にも、ベルゼビュート様はエルフ達と手を組んでいるけど、オイラの方が金の稼ぎが上手いからね。エルフ達は他の事を何かやってるらしいよ」


 やっぱりエルフとベルゼビュートさんって、そういう関係だったんだね。

 今まで、直接仲間って本人から聞いたわけでは無かったけど、なんとなくそんな感じはしてたんだよね。

 あの時、たっくんがエルフに能力を封印されてるって言った時に、ベルゼビュートさんは都合がいいって言ってたもん。

 それって、ベルゼビュートさんとエルフの間には、なんらかの関係があるって考えれるもんね。

 だから、奴隷にされたブーゲンビリアお姉さんをラテちゃんが助けた時に、関係をばらされないようにサルガタナスが殺すって言い出したんだろうなぁ。


「お金が必要だったなの?」


「まあね。元々はフルーレティの担当だったけど、アイツが一度裏切ったからね。おかげで、オイラはケット=シーの連中を連れて金稼ぎさ」


「そう言えば、何で銭湯なんて始めたのか知らなかったけど、そう言う事だったなのね」


「集めたお金を何に使うかは知らないけど、オイラとしては楽な仕事でラッキー位の気分だったんだよね。結果としてはご覧の通りさ。楽な仕事のはずが、パンツの女神様のおかげで台無しだよ。まあ、おかげでオイラも、今ではパンツの女神様の虜になったわけだけどね」


「幼女先輩は罪な幼女なのよ」


 嫌な幼女だねそれ。

 って、あれ?

 そう言えば、ケット=シーちゃん達って、サーカスの公演が中止になってから見てないな。

 もしかして、駄目になっちゃった事をアスモデちゃんに伝えに行ったのかな? 


 暫らく歩いて、玉座の間に辿り着く。

 玉座の間へ入ると、いつの間にか先回りしていたコラッジオさんが玉座に腰かけていて、私を迎える。

 ベッラさんも玉座の横に立っていて、私と目が合うと優しく微笑んだ。

 私がアモーレちゃんと一緒にコラッジオさんに近づくと、コラッジオさんは立ち上がり私に頭を下げた。


「ジャスたん様、この度は誠にありがとうございました。まさか、サーカスの公演が、ここまで大事になるとは思いもしませんでした」


 大事になったのはサーカスと言うより、ラテちゃんとフウさんとランさんのせいなんだけど、黙っておこう。


「しかし、ジャスたん様のおかげで、観光に来た者はもちろん、我々ドワーフの怪我人も深手を負うものはおらず、かすり傷程度の者しかおりませんでした。本当に何とお礼を申せば良いのか……」


「ううん。気にしないでよ。カザドの民の人達も、皆が無事で良かったよ」


 私が笑顔を向けて言葉を返すと、コラッジオさんが何故か眉根を下げた。


 あれ?

 どうしたんだろう?


「ドワーフとは呼んで下さらないのですか?」


 え? えーと……。


「……ドワーフの皆も無事で良かったよ」


「はい!」


 コラッジオさんが今度は、とても良い笑顔になった。

 私がそれを複雑な気持ちになって見ていると、コラッジオさんが私の後ろをついて来たリリィ達を見て、私に視線を戻す。


「ところで、サガーチャは一緒ではなかったのですかな?」


 え?

 サガーチャちゃん?


 私は後ろに振り向き、サガーチャちゃんの姿を捜す。

 だけど、コラッジオさんの言う通り、サガーチャちゃんの姿は見当たらなかった。


「おねさまなら、おへやにいったよ」


「あらそうなの? サガーチャったら、また何か思いついたのかしら?」


 アモーレちゃんが答えると、ベッラさんが眉根を下げて困り顔になる。

 コラッジオさんは「そうか」とだけ呟くと、私に真剣な面持ちで視線を向けた。


「少し、昔の話をしてもよろしいか?」


「え? うん」


「感謝します。では、お話させて頂きます。我々とエルフ族、そしてフェニックスの遠い昔の話です」

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