↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
207/288

207 幼女の新たなる伝説の幕が上がる

「「ゾンビ達のあの怯えよう……。サルガタナスはジャスミンちゃんに任せても大丈夫そうですな~。念の為にゾンビ達が街の人を襲わないか見て来るぜい」」


「え!?」


「主様がいれば大丈夫なんだぞ。任せるんだぞ!」


「フウ、ラン、そっちは任せるわね!」


「「任せたまへ~」」


 フウさんとランさんは逃げたゾンビを追いかけて行ってしまった。

 私が若干の不安を感じながら2人の背中を見送っていると、ゾンビ達から取り残されたサルガタナスが、もの凄く怒りをあらわにして私を睨んだ。


「くそっ。あの恐れを知らないゾンビ共が、まさかお前の顔を見て逃げるなんてね! やっぱりビフロンスの子分なんか、あてにならないね」


「あ、あはは……」


 サルガタナスの言葉に私が苦笑していると、リリィが弾みながら私の前に出る。

 そして、突然光り出した。


「ジャスミン、心配かけたわね」


「え?」


 私は目を疑った。

 何故なら、リリィは光りながら、みるみると元の人間の姿に戻っていくからだ。

 リリィが人の姿に戻ると、次第にリリィを覆っていた光が消えて、全裸のリリィが姿を現す。

 そして、それを目のあたりにしたサルガタナスが、目を見開いて驚愕した。


「リリさん凄いんだぞ!」


「凄くなんかないわ。ゾンビ達の姿を見て、そして言葉を聞いて、私はただ思い出しただけよ。アイツ等には感謝しないといけないわね」


「馬鹿な! オイラは能力を解いた覚えはないぞ! いったいどうやって!?」


 うんうん。と、私はサルガタナスの言葉に首を縦に振る。


「おかしな事を言うのね。わからないの?」


「何だと!?」


 サルガタナスがリリィを睨み、リリィがサルガタナスを失笑する。


「以前ビフロンスがゾンビに包帯を巻かせて、ミイラに見せかけていたのよ」


 え? うん。

 そんな事もあったけど、それになんの関係が?


「でも、結局それは、包帯を取ってしまえばゾンビに戻る。何故だかわかる?」


「わかったんだぞ! 包帯の下は、ゾンビだからだぞ!」


「そうよプリュ。賢いわね」


 リリィがプリュちゃんに微笑んで、優しく頭を撫でる。

 そして、サルガタナスに視線を向けて、勝ち誇ったような顔をして言葉を続ける。


「つまり、ボールに姿を変えられても中身は私だから、ボールの皮を取ってしまえばいいのよ!」


 ええぇぇーっ!?

 意味わかんないよ!

 

「リリさん、すっごくすっごく凄いんだぞ! かっこいいんだぞ!」


「意味のわからない御託を並べて、オイラの能力を解きやがって! 何て奴だよ!」


 うん。

 本当に私もそう思うよ。

 ボールの皮を取ってしまえばって何?

 って感じだよね。


 私は相変わらずのリリィの常識外れっぷりに肩を落としながら、着ていた上着を一つ脱いで、リリィに後ろから着せてあげる。

 それと、男装用に穿いていたズボンも脱いで、リリィに穿かせてあげた。


 本当に、スカートも穿いて来て良かったよ。

 流石に私も、仕方なくてもパンツだけになるのは嫌だもん。


「リリィ、女の子なんだから、ちゃんと隠さなきゃだよ」


「ジャスミン、ありがとう」


 リリィが笑顔で私にお礼を言うと、それを見ていたサルガタナスが眉根を上げて、虹色に輝く宝石を取り出した。


「お前達は本当に腹の立つ連中だよ……。だけど、まあいいよ。オイラにはこれがあるんだ」


 特殊能力を一時的に無効化する装置……。

 もしかして、私の能力を防ぐつもりなのかな?

 でも私の能力って、まともなのは2種類以上の魔法を使えるってだけだよね?

 防がれても、あまり意味無いような……。


「リリィとか言ったね? お前のその常人離れした力は、能力以外に説明がつかない! お前は間違いなく転生者だ!」


 リリィが転生者!?

 そんな……ううん。

 たしかに、それなら今までの事に全部説明がつく。


「はあ? 私が転生者? そんなわけないじゃない。私には前世とか言う記憶なんてないわよ」


「それは、お前がまだ転生者として目覚めきってないからだ! だからこそ目覚める前に、この装置を使ってお前の能力を封印するんだよ!」


「主様!」


「うん!」


 もし、本当にリリィが転生者だったら、あの装置を使われたら不味いよね。

 止めなきゃ!


 プリュちゃんが水の加護を魔力に変換して、私は魔力を両手に集中する。


「もう遅いよ魔性の幼女! オイラの魔法は既に発動済みだよ!」


「え!?」


 サルガタナスの言葉を合図に、私を上下から挟むように魔法陣が浮かび上がる。


「ジャスミン!」


 私を上下に挟む魔法陣から大きな鉄の塊が現れて、私を押し潰すように迫りくる。


 ダメだ!

 これじゃあ防ぐのがせいいっぱいで、リリィを助けられない!


 私がサルガタナスの魔法を防ごうとしたその時、リリィがサルガタナスに向かってもの凄い速度で走り出す。


「アンタァッ! 私のジャスミンにーっ!」


「馬鹿め! お前の能力は最早脅威ではないんだよ!」


 サルガタナスがリリィに向かって装置をかざし、そして装置が光り出す。


「リリィだめ! 逃げてーっ!」


「手ぇ出してんじゃーっないわよおーっ!」


「さあ! これでもうお前は終わ――びぶぁっ!?」


 なんという事でしょう。

 サルガタナスは装置を起動するも意味が無く、転生者では無かったリリィがサルガタナスを装置ごと蹴り飛ばし、装置は粉々になりサルガタナスは吹っ飛んでいきました。


 サルガタナスが吹っ飛ぶと、私を襲うサルガタナスの魔法も姿を消した。


「リリさん凄いんだぞ! 憧れるんだぞー!」


 さっすがリリィ。

 やっぱり転生者じゃなかったんだね。

 うんうん。

 やっぱり、リリィはただの変態だったんだ。

 と言うかだよ。


「サルガタナスが本当に死んじゃうよ!?」


 サルガタナスは私達がいる北側の魔科学研究地区から、南側の居住地区の方へ向かってお城の屋根を破壊して、それはもうもの凄い勢いで吹っ飛んでいったのだ。


「大丈夫よジャスミン。ジャスミンに手を出したんだもの。あれ位で済んだ事を、きっとアイツなりに感謝してくれるわ」


「またそれ!? 大丈夫じゃないし、するわけないよ!」


 私が慌てていると、トンちゃんから加護を使った通信が入る。


『ご主人、死にかけのエロピエロが、空から降ってきたッスよ。そっちで何があったッスか?』


 し、死にかけ!?

 急がなきゃ!


『トンちゃん、そこ何処!?』


『ドワーフ鉱山街の入口ッス』


『ありがとうトンちゃん!』


 私はトンちゃんにお礼を言って通信を切ると、直ぐに魔力を集中する。


「ごめん、リリィ。私、ちょっと行って来るから!」


「ジャスミン?」


 私はリリィに背を向けて、勢いよく空を飛んで、全速力で鉱山街の出入口へと向かう。


「プリュちゃん。お願い」


「わかってるんだぞ」


 プリュちゃんが私に返事をして、水の加護を魔力に変換してくれて、私も魔力を両手に集中させ詠唱を始める。


「慈悲深き癒しを司る水の神々よ」


 私はお城を飛び越えて、鉱山街の出入口を確認しながら飛び進む。


「生命の息吹を我が力を糧とし」


 設置型のアブソーバーキューブの影響で、魔力が吸収されていく感じがする。

 でも、アブソーバーキューブキャンセラー無しで、魔法を使うんだ。

 魔力の流れを複雑に細かく絡め、そして限りなく広げるイメージ。

 今ならわかる。

 加護を利用して、トンちゃん達にお話をする時と一緒なんだ。

 真っ直ぐじゃダメなんだ。


「悪を憎まぬ憂いに満ちたその御心をもって、彼の悪を慈愛で包み癒したまえ」


 鉱山街の出入口に到着し、全身が何故かひび割れて倒れていたサルガタナスを見つけた。

 そして、サルガタナスに向かって私は手をかざして、魔法陣を浮かび上がらせて狙いを定める。 


 今度こそ、アブソーバーキューブの妨害を超えて見せるんだから!


「聖雫神癒《ヒールシャワー》」


 私が詠唱を終えると、魔法陣から光る大量の泡が飛び出して、次々とサルガタナスを包んでいく。

 私の魔法に包まれたサルガタナスから、全身にあったひび割れが消えていく。


 私は間に合った事に安堵して、ゆっくりとサルガタナスの側に降り立った。

 すると私を囲むように、コラッジオさんや兵隊さん達がやって来た。

 そして私は周囲を見て気が付いた。

 周りにはコラッジオさんや兵隊さん達だけでなく、街の人々や、サーカスを見に来た人達が集まっていた事に。


 必死で気が付かなかったけど、ここには人がいっぱいいたんだね。

 それなら、こっち側で戦闘が無くて逆に良かったかも。


「ご主人ー!」


「ジャチュー!」


「あっ。トンちゃん、ラヴちゃんも」


 私は飛びついて来た2人を抱きしめて、笑顔を向けた。

 するとその時、私は私の耳を疑ってしまうような声を聞いてしまった。


「女神様だ! パンツの女神様が降臨なさった!」


 ……え?


 私がその声に耳を疑うのも束の間、次第に周囲が騒めき出し、人々が声を上げる。


「パンツの女神様万歳ー!」


「ありがたや。ありがたや」


「うおおぉぉっ! パンツの女神様だー!」


 待って?

 本当にちょっと待って?

 魔性の幼女から純白の天使で、次はパンツの女神?

 やめて?

 本当にやめてよそれ。

 どうしてそうなったの?


「ぱ、パンツの女神。ぷぷぷ。ご主人、ボクを笑い殺す気ッスか? ぷぷぷ」


「主様、かっこいいんだぞ」


「ジャチュ、パンチュ?」


「ジャスがまた一つ、変なあだ名を増やしたです」


 ラテちゃんいつの間に起きてたの!?

 って、そんな事より本当に勘弁してよぅ。

 もうやだお家帰りたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。