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204 幼女と始まるショータイム

 サガーチャちゃんと別れてサルガタナスを追いかける私は、リリィの凄さを改めて実感していた。

 リリィはサルガタナスの2つ目の能力の触れた相手をジャグリングボールにしてしまう能力を受けてしまったのだけど、そんな状態になってしまったのにもかかわらず、襲いくる罠を全て体当たりで無効化しているのだ。

 そのおかげで、私は殆ど罠を気にせずに直進出来ていた。


 リリィは本当に凄いなぁ。

 って言うかだよ。

 アブソーバーキューブのせいで、さっきから魔法が上手に使えないんだよね。

 説明を受けた時は、どうにか出来そうって思ったけど、結構難しいなぁ。


 そう思った矢先に、罠が発動。

 上方に大きな岩が大量に現れて、私達目掛けて降り注ぐ。

 私は直ぐに魔法で水の盾を作って防ごうとするが、設置されていると思われるアブソーバーキューブで魔法を消される。

 だけど、私には大きな岩が当たる事は無い。

 何故なら、リリィが大きな岩を次々と体当たりで粉砕していくからだ。


 こんな感じで先程からリリィが力技で罠を突破してくれて、なんとかなっているけれど、私の魔法はアブソーバーキューブで無効化されてしまう。

 私がどうしたものかと考えながら真っ直ぐに進んでいると、サルガタナスの声が聞こえてきた。


「追いついたぞお前達! ケジメはつけさせてもらうよ!」


「ビリアを助けるのに時間をかけすぎたです。本当にめんどくさい奴です!」


「「上等だぜエロピエロ。ここで決着をつけてあげるぜ」」


 あれ? 3人共無事だったの?

 じゃあ、あの2つのジャグリングボールは……?


「主様、三人共無事なんだぞ!」


「うん」


 私はサルガタナスに追いつく事で、同時にバニーガール姿のままのラテちゃんとフウさんとランさんを見つけた。

 ラテちゃん達3人の側には、同じくバニーガール姿のニクスちゃんと、ボロボロなお洋服を着たブーゲンビリアお姉さんが一緒に立っていた。

 そして、私は更にそのすぐ側に倒れている人物に気が付いた。


 あれ?

 あの倒れてる人って、何処かで見た事があるような……。


 私が倒れている人物を見て首を傾げると、リリィが私の耳元で呟く。


「アモーレちゃんに絡んでたキモイ男が吹っ飛んだ時に、キモイ男を追いかけてた奴等の内の一人ね」


 そうだ。

 あの時の、ぼっちゃんとか言ってた人だよ。

 って、リリィの記憶力凄いなぁ。


 と、私が考えているその時。

 サルガタナスに追いついた私達に、ラテちゃん達が気が付いて声を上げる。


「ジャス!? よく来たです!」


「「おやおや? 追いつかれたのは私達だけでは無いようですな~」」


 ラテちゃん達が私を見て声を上げると、ブーゲンビリアお姉さんとニクスちゃんも私に気が付く。


「ジャスミンちゃん。本当に、ジャスミンちゃんも来ていたのね」


「……ジャス」


 サルガタナスが私を見て、本当に恨めしそうな顔をして睨む。


「ちっ。もう来たのか! 鬱陶しい子供だね!」


「リリィを元の姿に戻して!?」


「やなこった! それに、裏切者のせいで事情が変わったんだ。オイラは一刻も早く、そこの奴隷を殺さなきゃならないんだ。邪魔者を元になんて戻すわけが無いだろう?」


 奴隷を殺す?

 それって……。


 と、私が考えたその時、ラテちゃんが私の頭の上に座る。


「ジャス、事情は後で話すです。反撃開始です!」


「う、うん。よくわからないけど、わかったよ」


 私はラテちゃんに返事をして、土の加護を纏って両手に魔力を集中する。 


「させないよ!」


 アブソーバーキューブ……っ!


 私の魔力はサルガタナスの持つアブソーバーキューブによって、直ぐに吸収されてしまった。


 やっぱりダメだ。

 アブソーバーキューブで邪魔されちゃう。


 サルガタナスが私の魔力を吸収してニヤリと笑う。

 その時、ランさんがサルガタナスに向かって手をかざし、魔法陣が浮かび上がる。


「ストームカッター!」


 ランさんが呪文を唱えると、魔法陣から斬撃効果を持つ風が勢いよく飛び出して、それは暴風を巻き起こしてサルガタナスを襲った。

 サルガタナスはアブソーバーキューブを使うまでもないというような表情を見せ、ランさんの放った魔法を交わす。

 ランさんの魔法はサルガタナスにかわされると、そのまま勢いよく周囲の物を切り刻みながら進んで消えていった。


 だけど、まだ攻撃は終わっていなかった。

 サルガタナスがランさんの魔法を避けたと同時のタイミングで、フウさんがサルガタナスに接近して、剣を構える。

 その瞬間、フウさんが構える剣に魔力を帯びた風が纏う。


「スラッシュ!」 


 フウさんが魔法を唱えながら、サルガタナスを一閃。

 したかと思ったのだけど、サルガタナスは軽く避けて、フウさんに向かって手をかざす。

 サルガタナスが手をかざすと、フウさんのお腹に魔法陣が浮かび上がった。


「グラビティショック」


 サルガタナスが魔法を唱えると、フウさんは魔法陣から飛び出した衝撃を食らって、もの凄い勢いで吹っ飛ぶ。

 そして計算されたかのようにその先にランさんがいて、フウさんはランさんにぶつかって、2人がぶつかった拍子に転がり倒れた。


「フウさん! ランさん!」


 私が2人の名を叫ぶと、サルガタナスがニヤリと笑みを浮かべて指笛を吹く。

 すると、サルガタナスの周囲からボンッと煙が上がった。

 そして、煙の中からオライさんとマラクスさんが現れた。


「オライさんとマラクスさん……」


 2人は元々サルガタナスの部下だから、今日のサーカスの公演にも参加する予定だったみたいだし、敵対しちゃうのも仕方がないよね。

 でもだからって、せっかく仲良くなれたのに戦うなんて、私には出来ない……。


 私は2人に視線を送る。

 すると、2人はなんだか気まずそうにして、私から視線を逸らした。


 もしかして、オライさんもマラクスさんも、私と同じ気持ちなのかな?


 しかしそんな中、それに気が付いていないサルガタナスが2人に命令する。


「お前達は、あっちの兎の女共を殺せ。オイラは魔性の幼女を始末する」


「お任せを!」


「了解だぜ!」


 あっ。

 なんだか2人とも、凄くホッとした顔してる。

 やっぱり同じ気持ちだったんだ。

 って、フウさんランさんが危ない。


 私は2人に視線を向ける。

 フウさんとランさんはいつの間にか立ち上がっていて、オライさんとマラクスさんを向けて剣を構えていた。


 良かった。

 とりあえずは無事みたい。


 私がフウさんとランさんの無事を安心していると、私の耳元でリリィが声をイラつかせながら喋る。


「裏切りやがったわねアイツ等。風呂場で息の根を止めておくべきだったわ」


「それはダメ」


 私はサルガタナスに視線を向ける。

 すると、サルガタナスと目が合い、サルガタナスが私に向かって走り出した。

 それを合図に、オライさんとマラクスさんも、フウさんとランさんに向かって攻撃を仕掛けた。


「主様、サルガタナスが来るんだぞ!」


「うん!」


 私はプリュちゃんに返事をして、身構えて魔力を集中。

 今度は魔力をアブソーバーキューブで吸収出来ないように、魔力の波長を変える事に重点を置いて魔力を溜めていく。

 だけど、やっぱりサルガタナスの持つアブソーバーキューブの効果で魔力が溜まらない。


 ダメだ。

 ラテちゃんとプリュちゃんから送られてくる加護から変換された魔力を感じるのに、やっぱり全く魔力が溜まらないよ。


 私が焦り出すと、サルガタナスが私に向かって走りながら手をかざす。

 そして、サルガタナスの目の前に魔法陣が浮かび上がる。

 私の焦っている姿を見たサルガタナスは、察したのかニヤリと笑みを浮かべながら口を開く。


「魔力の波長を変えながら魔法を使おうとするなんて、流石と言ってあげるよ魔性の幼女。だけど、相手が悪かったね。オイラは魔族になる前はカザドの民だった。おかげでお前の魔力の流れは見えているのさ! だから、このアブソーバーキューブさえあれば、オイラにお前の魔法は効かないよ!」


 う、嘘でしょう!?

 それじゃあ、いくら魔力の波長を変えても、直ぐに対応されて魔法を使う事が出来ないよ!

 まさかの大ピンチだよ!


 サルガタナスから知らされたまさかの発言に私が焦る中、サルガタナスから魔法が放たれる。


「さあ! ショータイムの始まりだよ!」


 サルガタナスの魔法は、浮かび上がった魔法陣から現れた幾つもの円月輪。

 円月輪は回転しながら切れ味を高めながら飛翔して、私に勢いよく襲いくる。


「主様!」


「ジャス、避けるです!」


 ダメだ。

 全然魔法が使えない。

 アブソーバーキューブキャンセラーをこのタイミングで使うしか……っ!


 私が残り一回しか使えないアブソーバーキューブキャンセラーを早くも使おうとすると、リリィが勢いよく私の前に飛び跳ねる。

 そして、襲いくる円月輪を、全て体当たりで弾き飛ばした。


「だったら、私がアンタに引導を渡してあげるわよ! エロピエロ!」


「リリィ凄……」


 私がそう呟くと、それを聞いたラテちゃんがリリィに視線を向けて驚いた。


「あのボールはリリィだったですか!?」


「そうなんだぞ。リリさんはボールになっちゃったんだぞ」


「流石は常識が通じない変態おバカなリリィです」


 う、うん。

 そうだね。

 でもそれ言いすぎ? だよ。ラテちゃん。


 私がラテちゃんの発言に苦笑していると、ラテちゃんが驚きの発言をした。

 それは……。


「同じ様にボールにされてしまったスミレとは違うです」


 え!?

 スミレちゃんもボールにされちゃったの!?

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