表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
201/288

201 幼女を男の娘扱いしてはいけません

 私が髭付鼻眼鏡を取り外すと、ライオンさんがもの凄く驚いた顔をして口を開く。


「お、お前は魔性の幼女! まさか男だったのか!?」


 え? そっち?


「許さん! 許さんぞー! 俺は魔性の幼女を巨乳にしたいと思っていたのに!」


 しなくていいよ。


「ちっ。どうやら、こんなに可愛い子が女の子のはずがないと言う言葉は、迷信では無かったんだな」


「ジャスミンくん。私は動物虐待は、しない主義なんだ。そこにいる珍獣は、動物に入ると思うかい?」


「あれは魔族だから動物じゃないよ」


「そうだね」


 サガーチャちゃんがドレスのスカートの中から、キーホルダーサイズの金槌を取り出して、その金槌を親指で真上に弾いた。

 すると、真上に弾かれた金槌はみるみると大きくなっていき、2メートル位の大きさになってサガーチャちゃんがそれを取って担ぐ。


 な、何それ?

 って言うか、サガーチャちゃんもの凄く力持ちだったんだね。

 あっ。

 そう言えば、あの凄く重いイフリートさんの鱗を、教授のお爺ちゃんの鍛冶工房まで運んで来てたんだっけ?

 今思うと、結構凄いかも。


「さて、ジャスミンくんを男だと言った失礼な珍獣には、今すぐに消えてもらおうか」


 サガーチャちゃんがライオンさんに向かってそう言うと、ライオンさんは顔を青ざめさせて慌てだす。


「ま、待って下さいサガーチャ姫! 俺を殺せば、あのニクスって子供の夢が、叶えられなくなりますよ!」


 ニクスちゃんの夢?


「それはどういう意味だい?」


 サガーチャちゃんが訝しんで顔を顰めると、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに、ライオンさんが顔を綻ばせる。


「俺の能力は、おっぱいのサイズを変える事が出来る能力! 俺達の手伝いをすれば、おっぱいを大きくしてやると、あの子と契約を交わしたんだ!」


 おっぱいを……大きく?


 私はライオンさんの言葉を聞いて絶句する。


「胸を大きく……か。なるほど。あの人がお母様の胸を大きくさせる為に使わせようとした能力を持つ魔族は、君だったのか」


 本当にいた!

 本当にいたよおバカな能力の魔族!

 と言うか、ニクスちゃんが助けを拒んだ理由って、おっぱいだったの!?

 なんだか、聞いちゃいけない事を聞いてしまった気分だよ……。


 真実を知って、私がなんとも言えない気持ちになっていると、ライオンさんが調子に乗って笑いながら喋り出す。


「グルルルル。なんなら、お前のおっぱいも大きくしてやるぞ? その代わり、この先を通るのを諦めてもらうけどな!」


「お断りだね。脂肪のかたまりなんて貰っても、研究の邪魔になるだけだ」


「うんうん。私はおっぱいが小さい方が好きだもん」


 私がサガーチャちゃんに賛同すると、ライオンさんがもの凄く冷たい視線を私に送る。

 そして、深くため息を吐き出してから首を横に振って、私をゴミを見るかのような目で見つめてきた。


「何言ってんだ? 男には聞いてないぞ?」


 前世と違って女の子だもん!


 と、私が思った瞬間だった。

 サガーチャちゃんが2メートルサイズの金槌を振り上げ、更にそれと同時にライオンさんの顔に何かがぶつかり、ライオンさんの顔が地面にめり込む。

 そして、その何かはライオンさんにぶつかった拍子で砕け散った。

 私は目の前で起きた出来事を見て、あっ。となる。


「ぶっ殺すわよ?」


 声のした方へ振り向くと、そこには予想通りの口の悪い美少女リリィが立っていた。


 リリィ、そう言うセリフは、物を投げる前に言おうね?

 と言うか、そう言う汚い言葉は使わないでね?


 私は微笑みながら心の中でリリィにそう告げて、ライオンさんに近づく。

 ライオンさんは死にかけていて、ピクピクと体を痙攣けいれんさせていた。


 わぁ。

 リリィってば、本当に容赦ないんだから。


 私はリリィに振り返り、冷や汗を流しながら微笑んで口を開く。


「ねえ、リリィ? 何を投げたの?」


「アブソーバーキューブよ。説明を聞いたのだけど、私には使い方がわからなかったから、飛び道具として使ったのよ」


「なるほどだよぉ」


 私とリリィが微笑み合う。

 そして。


「リリィ、わからないからって投げちゃダメだよ! それに、ライオンさん死にかけだよ!? もうちょっと手加減して!?」


「え? でもジャスミン、可愛さで頂点に立つジャスミンの事を、そのゴミが男だとかなめた口をきいたのよ? むしろ殺されなかった事を、そのゴミも感謝してくれるわよ」


「そんなわけないでしょう!? と言うか、死んでないけど死にかけだよ!」


「あはははは。君達、面白いね~」


「笑い事じゃないよ! もぉー! ライオンさん本当に死んじゃうよ! どうしよー!?」


 私がおバカなリリィと大笑いしているサガーチャちゃんに背中を向けて、死にかけのライオンさんを見て半泣きになっていると、プリュちゃんとアマンダさんの声が聞こえてきた。


「主様ー」


「ジャスミン、何があったの?」


「プリュちゃん。アマンダさんー」


 私は駆けつけてくれたプリュちゃんとアマンダさんに半泣きで、今あった出来事を簡潔に説明した。

 すると、アマンダさんは私に優しく微笑んで、ライオンさんを回復してくれた。


「アマンダさん、ありがとー」


 私が涙目で感謝を述べると、アマンダさんは私の頭を優しく撫でてくれた。


「これ位の事、たいした事では無いわよ。それに、ジャスミンなら回復の魔法くらいなら、やろうと思えば出来るわよ」


 アマンダさんにそう言われると、私はハッとなって少し口ごもる。


「えっと……実は回復魔法の事、焦りすぎちゃって、すっかり忘れてたの」


「あら。そうだったのね」


 アマンダさんが苦笑する。

 私は落ち付いた事で、苦笑したアマンダさんを見て段々と恥ずかしくなって、顔を手で隠す。

 するとその時、ライオンさんが気が付いて、むくりと起き上がった。

 ライオンさんが起き上がると、リリィがライオンさんに近づいてニコッと笑う。


「アンタに聞きたい事があるんだけど?」


 リリィがライオンさんに話しかけると、ライオンさんはビクリと体を震わせて、顔を青ざめさせた。


「な、なんでしょう?」


 う、うわぁ。

 ライオンさんの心に大きな傷をつけちゃったよ。

 ライオンさん可哀想。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ