020 幼女はやっぱり強かった
バティンと名乗った残念美人魔族が、不敵な笑みを浮かべて私達3人に近づく。
「さあ、お嬢ちゃん。私との力の差は歴然。大人しく言う事を聞きなさい」
「ジャスミンの匂いは嗅がせないわよ!」
「ジャスミンちゃん逃げて!」
私と残念美人魔族の間に、リリィとブーゲンビリアお姉さんが立つ。
「へえ。私をバティンと知って、立ち向かうと言うの?」
3人が睨み合う。
そんな中、私は呑気に別の事を考えていた。
ベルゼビュートって、あの有名なハエの王様のベルゼブブだよね?
じゃあ、その凄いのの配下の配下って事だから、結構偉い人って事かな?
だったら、もしかしてもしかしなくても、オークより成長を止める能力があるかどうか知ってるかも!
出て来たのがオークじゃなかった時点で、聞きだすのは無理だろうなーって、流れで思っちゃったけど、むしろチャンスじゃない!
これは聞きださずには、いられないよ!
私は、そうと決まればと、目を輝かせて2人をかき分けて前に出る。
「残念美――じゃなかった。バティンお姉さん! 成長を止める能力を使える魔族っているの!?」
「え?」
目を輝かせて勢いよく尋ねる私を見て、残念美人魔族改めバティンお姉さんが驚いた。
「いない事も無いけれど……」
「え!? いるの!? その魔族は今どこにいるの!?」
私のテンションは最高潮だ。
だけど、そんな私を見てバティンお姉さんは、ニヤリとゲスな笑みを浮かべた。
「教えてあげない事も無いけれど、そうねえ。お嬢ちゃんの態度は、私を甘く見ているそれに等しいから、一度お仕置きをしないといけないとは思っていたし丁度良いわ」
バティンお姉さんが私に指をさす。
「この私に、勝てたら教えてあげるわよ」
「やったー! ありがとう!」
私は大喜びで両手を上げた。
そして、そのまま魔力を両手に集中させる。
「ジャスミン! 駄目よ! いくらジャスミンでも、こんな強い奴には敵わないわよ!」
「そうよジャスミンちゃん! 無茶な事は止めて逃げて!」
「どうやら、状況を把握できてないのは、お嬢ちゃんだけみたいよ?」
バティンお姉さんが不敵に笑う。
だけど、私は止まらない。
「全をも包む偉大なる星々よ。全てをひれ伏せさせるその偉大なる万物の力をもって、我にあだなす愚かなる者を封じ自由を奪え! 重力過多」
呪文を言い終えると同時に、私は勢いよく上げた両手を下げる。
そして、それを合図に、バティンお姉さんへ通常の10倍にも及ぶ重力が襲い掛かった。
「なっ!?」
バティンお姉さんは驚愕したと同時に、重力に押しつぶされて、地面へとへばりついた。
「これ位でーっ!」
「あ。凄い」
私は驚いた。
バティンお姉さんには10倍の重力がかかっているというのに、立ち上がろうとしていたからだ。
流石魔族って感じで、ちょっと感心しちゃうな。
でも、世の中そんな甘くありません。
私も情報を得る為に、手を抜く事は出来ないんだからね!
「えい」
私は掛け声と同時に、重力を20倍に増やした。
「ぎゃふん」
「あ。痛そう」
重力を増やしたその時だった。
流石にきつかったようで、バティンお姉さんが頭から地面に突っ伏する。
そして、そのまま地面に倒れて、指の一本すら動かなくなってしまった。
もう良いかな?
私はバティンお姉さんに近づき、しゃがんで話しかける。
「私の勝ちで良いよね?」
「思い……だしたなのよ。もう、戦う理由も無くなっちゃったし、君の勝ちなのよ」
「え? 思い出した?」
突然の一言に驚いて、私は重力の魔法を解いて尋ねる。
「何を思い出したの?」
「私はこことは別の世界で死んで、この世界で魔族に転生したみたいなのよ」
「えーっ!?」




