表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
195/288

195 幼女は精霊達の動向を知る

「昨日の夕食の時も思ったのだけど、ここの料理って美味しいわよね」


 心なしか、若干少し艶っぽいリリィが私に話しかける。

 リリィはお風呂でのおバカ4人の騒動の後から、とても活き活きとしている。

 そんなリリィの様子を見て、正直私は本当にリリィの将来が心配である。


 それはともかくとして、今はお風呂の騒動から時間が経過して、次の日の朝だ。

 私はお城で皆と朝食を食べていた。

 皆と言っても、昨日の晩にお風呂に侵入した4人はいない。

 話によると、あの後牢屋に入れられて、反省文を書かされているらしい。


 何故反省文?


 とも思ったのだけれど、教授のお爺ちゃんにはこれが一番効くらしくて、お婆ちゃんが書き終わるまで見張っているみたいだ。 


「うん。流石はお城のごはんって感じだよ」


 私は料理を一つ口に運んで、パクリと口に入れる。

 リリィの言う通り料理はどれも美味しくて、一口食べるごとに思わず顔が綻ぶ。


「ジャスたん様のお口に合って何よりですな」


 私が食べている姿を見て、コラッジオさんが嬉しそうに微笑んだ。

 そんな中、私はリリィとは反対側に座っているサガーチャちゃんの食事風景が気になって、ごっくんしてから視線を向ける。


「こんなに美味しいのに、なんでサガーチャちゃんは食べないの?」


 私がそう訊ねると、サガーチャちゃんは例の栄養ドリンクを片手に答える。


「必要な栄養は、これで十分だからね。それに、私には食事をする時間も惜しいからさ」


 サガーチャちゃんはそう言って、栄養ドリンクを飲まずに、私が焼いたパンケーキを美味しそうにパクリと一口食べた。


 食後のデザートに食べるのかと思ったら、まさか主食だったなんて……。


 冷や汗を流しながら、私がそれをなんとも言えない気持ちで見つめていると、背後から誰かが近づいて来た。


「いやはや。あの食わず嫌いのサガーチャ王女が、まさかこれほどまでに美味しそうに食事をするとは、魔性の幼女様は噂に違わぬ素晴らしいお方でございますね」


 私の背後から現れたのは、ここのお城で料理を提供してくれているコックさんのニスロクさん。

 ニスロクさんはコラッジオさん程ではないけれど、170センチとドワーフにしては身長が少し高い人だ。


 リリィがニスロクさんを見るなり、勢いよく立ち上がる。

 そして、リリィがニスロクさんの耳元で、なにやら話し出した。

 それを見て、なんだろう? と、私が首を傾げると、リリィが首を傾げた私に気が付いて、ニッコリと微笑む。


「ちょっと席を外れるわね」


 リリィは一言そう言うと、来たばかりのニスロクさんを連れて、キッチンへと向かって行ってしまった。


 料理でも教えてもらうのかな?


 私が料理を食べながらキッチンへ消えていくリリィを見つめていると、アマンダさんが真剣な面持ちでコラッジオさんに話しかける。


「ところで陛下、一つお伺いしたい事があるのですが、構いませんか?」


「ふむ? なんだ? 言ってみよ」


「アナタ、態度が悪いわよ。アマンダちゃんはジャスミンちゃんのお友達なのだから、もっと優しく話さなきゃダメじゃない」


「そ、そうだな。すまん」


「いえ。私などに気を使って頂く必要はございません」


 コラッジオさんって、本当にベッラさんには頭が上がらないんだなぁ。


「お伺いしたい事ですが、フウとランはどうしているのかと気になりまして」


 そう言えばラテちゃんとフウさんとランさんって、潜入捜査するとか言ってたけど、ここにはいないみたいだよね。


「フウとラン?」


 コラッジオさんはそう呟くと、暫らくの間考え込む。

 そして、コラッジオさんの反応を見て、サガーチャちゃんがパンケーキを刺したフォークをお皿に置いて代わりに答える。


「その二人なら、サーカス団に入団したよ」


「「「サーカス団に入団!?」なのよ!?」」


 私とスミレちゃんとアマンダさんの声が重なる。

 すると、私達3人の反応を見たサガーチャちゃんは楽しそうに笑った。


「わたくしもラテから話を聞いた時は驚きましたわ。でもこの話は、ビックリさせたいから黙っててと、頼まれた筈ですの」


 フェルちゃんがそう言って、楽しそうに笑うサガーチャちゃんをジトーっと見つめる。


「あはははは。そうだったかい? ああ。それは悪い事をしたね。なら、今のは聞かなかった事にしてくれないかい?」


 聞かなかった事にしてくれとか言われても……。


「そうですか。フウとランの事だから、何かやらかすとは思っていたけれど、まさかそんな行動に出るとは……」


 そう呟くと、アマンダさんが額を押さえながら、ため息を一つ吐き出した。

 その時、トンちゃんが私の肩の上に座って、オレンジジュースを飲みほして話しかける。


「ご主人、サーカス団と言えば、サルガタナス対策に特殊能力無効化の装置を勘違い王から借りるッスよ」


「え?」


「昨日お風呂に入ってる時に、フェールとプリュイから、転生者が使う特殊能力を無効化出来る装置があるって聞いたッスよ。これがあれば、サルガタナスの透過能力に対抗出来るかもしれないッス」


「え、えーと……」


 私はトンちゃんから話しかけられて、言葉に詰まった。

 何故なら、何故ならそれは。


「実は昨日お風呂に入る時に、お洋服を脱いだ時にこっそり使っちゃったの……」


「え? 使っちゃったんスか!?」


「う、うん」


「そう言えば言われてみると、ご主人昨日は長風呂だったッスね」


「だって、だってたまには、いっぱいお風呂に入りたかったんだもん!」


「馬鹿ッスね。一度使うと、時間でだいたい丸一日分は使えないって聞いたッスよ。それだと、今日はもう使えないようなもんッスよ」


「だってぇ……」


 私は俯いて半泣きになる。

 すると、サガーチャちゃんが私を見て、ニマァッっと笑みを浮かべた。


「ジャスミンくんは本当に良いね。一緒にいて飽きないよ」


 うぅ。

 褒められてる気がしないよぅ。


「主様、元気出すんだぞ」


「ジャチュ、いいこいいこ」


「ジャスたん。いいこだお」


 私は、プリュちゃんとラヴちゃんとアモーレちゃんにいい子いい子と撫でられて、段々と気持ちが和らいできた。

 するとその時、兵隊さんが1人、この場にノックをして入って来た。

 兵隊さんは早歩きでコラッジオさんに近づくと、耳元で何かを告げる。

 すると、コラッジオさんはわずかに顔を顰めて、ため息を一つ吐き出した。


「ジャスたん様」


「うん?」


「サルガタナスが公演前の挨拶に来たようです」


 そっかぁ。

 サルガタナスって、意外と律儀なんだね。


「ジャスたん様。食事の最中ですが、私は一度席を外します」


 コラッジオさんが椅子から立ち上がり、サルガタナスに会う為に兵隊さんと一緒に出て行った。

 すると、スミレちゃんが真剣な面持ちで私に話しかけてきた。


「幼女先輩。こっそり見に行きましょうなのです」


 え?


「そうね。行きましょう」


 アマンダさんまで!?


「ジャスミンくん、いってらっしゃい」


 と、そんなわけで私はサガーチャちゃんに見送られながら、スミレちゃんとアマンダさんに連れられて、コラッジオさんとサルガタナスの様子を見に行く事になった。


 だ、大丈夫かなぁ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ