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194 幼女に忍び寄る変態達の断末魔

 エリゴスさんがお風呂場に登場した事で、場の空気が一変に凍りつく。

 そして、エリゴスさんはあの時と同じように、コップを取り出した。


「さあて、そろそろ味見といこうかあ」


 うわぁ。

 やっぱり飲むんだ?


「エリゴス! こんな事をして、ただで済むと思ってるなの!?」


「バティン、言っておくがあよー。俺はお前のだし汁も飲んでーみたいと、思ってーいたんだあぜえ」


 エリゴスさんの気持ち悪い発言に、流石のスミレちゃんも無言で後退る。

 するとその時、お風呂の扉が開かれて、私は扉が開かれる音に振り向く。

 扉を開けたのはアモーレちゃんだったようで、私はアモーレちゃんと目が合った。


「ジャスたーん」


 アモーレちゃん!?

 大変だよ!

 今ここには変態が!


「走ったら危ないですよ」


 私に向かって走って来るアモーレちゃんを、追いかけるようにアマンダさんが入って来た。


「アモーレ姫だと!? おいおいおいおい! どうするオレッチ!? 流石に三歳児は犯罪じゃあねーかあ!?」


 3歳児だとか関係なく、それ以前に既に犯罪してるよ。


 と、私がエリゴスさんに呆れていると、お風呂場で銃声が鳴り響く。


「がっ……は……っ!」


 エリゴスさんが撃たれ、その場で前のめりに倒れる。

 そしてアマンダさんがライフルを肩に乗せて、小さく息を吐き出して、汚物を見るような目でエリゴスさんに視線を向けた。


「息の根は止めれなかった様ね」


 倒れて体をピクピクと痙攣けいれんさせているエリゴスさんを見て、アマンダさんがそう呟いてライフルを構える。

 それを見て、私は慌ててアマンダさんの前に立った。


「待ってアマンダさん!? ストップストーップ!」


「どうしたの? ジャスミン。危ないからそこをどいて?」


「息の根を止めちゃダメだよ!」


 私がエリゴスさんの息の根を今にも止めそうな勢いのアマンダさんの前に立つと、リリィがエリゴスさんにゴミを見るような視線を向けて、私に話しかける。


「良いじゃない。アマンダがせっかく率先して、汚いゴミ掃除をしてくれているのだもの。邪魔したら悪いわよ」


「何言ってるのリリィ!? ゴミ掃除じゃないよ! たしかにエリゴスさんはゴミだけど、ゴミじゃないよ!」


「ゴミだけどゴミじゃない。ジャスミンくんは難しい事を言うね」


「幼女先輩の言いたい事が、私には分かるなのですよ。要するに、エリゴスは不燃ゴミではなく燃えるゴミだから、銃殺ではなく焼殺が良いって事なのですね。そう言う事なら、私がエリゴスに止めをさすなのですよ」


「そういう意味じゃないよ! って言うか、焼殺とか怖いよやめて!?」


 エリゴスさんに止めをさそうとする皆を、私が必死に止めていたその時だ。

 またもや、お風呂の扉が開かれる。

 そして……。


「ふっ。エリゴスを倒した程度で、勝った気になっていてもらっては困りますね」


「そうだぜ師匠! エリゴスは、俺達四人の中でも最弱! 倒せても当然ってもんさ!」


「はっはっはっはっ! まだまだケツの青いガキって事よぉっ!」


 お風呂に現れた3人。

 それはオライさんとマラクスさん。

 そして、教授のお爺ちゃんだった。


 え? 何?

 何この流れ?

 って言うか、4人の中でも最弱って、絶対それ言いたかっただけだよね?


 するとその時、お風呂場に入って来た3人を見て、ベッラさんとアモーレちゃんが驚きの発言をする。


「お義父様!?」


「じーじだー」


 え? お義父様!?

 じーじ!?

 え? 嘘?

 って事は、教授のお爺ちゃんって、元王様だったの!? 


 私が教授のお爺ちゃんの予想外の正体に驚いていると、サガーチャちゃんが呆れた様子で教授のお爺ちゃんに視線を向けた。


「親方。今幾つだと思ってるんだい? こんな事をして、恥ずかしいと思わないのかな?」


「馬っ鹿野郎ーっ! 俺はな、風呂に入ってる女をこそこそと覗くなんて事ぁしねーのよ! そんなもん子供がやる事ってもんだ! おとこぁ黙って混浴よおっ!」


 思考のそれが完全に子供だよ!


「流石は教授だぜ。俺達の中で、最強の座は伊達じゃねーな!」


「ええ。そうですね。やはり、教授は言う事が違います」


 マラクスさんとオライさんが微笑んで頷き合う。

 するとその時、教授のお爺ちゃんの背後に人影が現れる。


「はいはい。アナタ。もう年なんですから、子供みたいな事はもうしないで下さいね」


 背後から現れたのは、教授のお爺ちゃんの奥さん、お婆ちゃんだった。

 そして、お婆ちゃんは出て来るなり直ぐに教授のお爺ちゃんの耳を掴んで、そのまま引っ張ってお風呂場を去って行く。


「いてえっ! 婆さんやめっ……てててててて…………っ!」


 教授のお爺ちゃん達が去って行くと、その場はシーンと静まり返り、オライさんとマラクスさんは暫らく閉められた扉を見つめる。

 そして、2人は私達に振り向き直すと、ボソボソと話し出す。


「どうするんですかこれ!? あの方が俺に任せろって言うから、私はついて来たんですよ!?」


「俺が知るか! 俺だって一緒なんだ! あの爺がいなくなったらどうしようもねーよ!」


「仕方がないですね。せめて、魔性の幼女の写真だけでも、カメラで撮りましょう」


「ああ。それが良さそうだぜ」


 よーし。

 追い出そう。


 私はニッコリと微笑みながら、オライさんとマラクスさんを睨むリリィに顔を向ける。


「リリィ。私ね、昨日からずっと言いたい事があったの」


「言いたい事?」


「うん。本当は、私から言い出した事だから、とっても言いにくいんだ。でも、もう言っちゃうね」


 私はリリィの手を掴んで、リリィの目をジッと見つめる。


「勝手だと思うだろうけど、やっぱり私はいつものリリィが大好きなの。だから、暴力はダメとか言わないから、いつものリリィに戻って? そして――」


 一緒にあの2人を追いだそう。と、言葉を続けようとしたその時だ。

 リリィがパアッと明るく笑顔を私に向けて、私の顔に勢いよく胸を押し当てるように、ギュウッっと抱き付いた。


「私もジャスミンが大好きよ! 愛してる!」


 り、リリィ!?

 そういう意味で言ったわけじゃ……って、あれ?


 その時、私は顔から伝わる柔らかな感触に包まれて、気が付いてしまった。


 リリィってば、またおっぱいが大きくなってる!?

 って事は、私も早く成長を止めないと、理想の体型から遠ざかっちゃう!?


 私がリリィの成長の速さを顔で感じて、自分の将来を心配していると、パシャリとシャッター音が聞こえてきた。

 私は音の聞こえた方へ振り向いて、一気に顔から火が出るんじゃないかと言うくらいに、恥ずかしさで顔が熱くなった。

 何故なら、オライさんとマラクスさんがカメラを構えて、何度も私とリリィを激写していたからだ。


「きゃあーっ! 撮るなーっ!」


 私が悲鳴を上げると、リリィが私から離れて、オライさんとマラクスさんに向かって走り出す。

 そして……。


「あはははは。君の友人達は凄い人ばかりなんだね」


「う、うん」


 リリィの蹴りで、何度も壁にめり込むオライさん。

 アマンダさんのライフルから、何度も響き渡る銃声音。

 スミレちゃんの魔法で、マラクスさんを襲う業火の炎。

 何度も繰り返される拷問とも思われるその惨劇で、オライさんとマラクスさんがまるで断末魔のような悲鳴を何度も上げ続ける。

 まるで地獄絵図となったお風呂場の惨劇を目のあたりにしながら、私はポカーンと口を開けて立ち尽くすのだった。



「はぁ~。良い湯ッスね~。ボク達精霊もゆっくり楽しめるお風呂があるなんて、流石はお城のお風呂ッス」


「なあなあドゥーウィン。後ろの方が凄い事になってるんだぞ」


「あら? 本当ですわ」


「放っておくッスよ。ボク等はボク等で楽しむッス」


「がお~」

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