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019 幼女の顔も三度まで

 私が脱いだパンツを放り投げると、残念美人魔族が私のパンツに飛びつく。

 そして、それと同時に、何故かリリィとブーゲンビリアお姉さんまで飛びついた。


 私は醜い残念な3人から目を逸らして、ルピナスちゃんを連れて、秘密基地のトイレへと急ぐ。

 が、またもや行く先を阻まれた。


「何のつもり? ラーク」


「秘密基地は、俺の許可なく入る事は許されないんだよ!」


「許可? じゃあ許可頂戴よ」


「駄目だ! 女人禁制の男だけの神聖な場所だから、入る事は俺が許さん!」


「何が女人禁制の男だけの神聖な場所よ! ホモかあんたは!? さっきまで魔族のお姉さんが入ってたんだから、別に良いでしょ!?」


「駄目だ!それに、俺はホモじゃねえ!」


 と、そこでリリオペがラークに声をかける。


「ラーク。今は、そんな事言ってる場合じゃないだろ? ジャスミン達を呼んだのはラークなんだし、トイレを貸してあげる位良いじゃないか」


 ナイスフォローだよリリオペ!


 その時、私のパンツを取り合っていた残念な人達のいる方から、大声が聞こえて来た。


「このパンツの匂いは、あの時の!」


 え? 何?

 私のパンツの匂いが何だって?


 私は気になって3人の方を見ると、残念美人魔族が私のパンツの臭いを嗅いでいた。


 う、うわぁ。


「間違いないわ! あのお花畑で拾ったハンカチと、同じ匂いだわ!」


 ん? お花畑で拾ったハンカチ?

 それ、リリィが無くしたハンカチじゃん!

 でも、何でリリィのハンカチから私の臭いが?


「まさか、貴女が私のハンカチを盗んだ犯人だとはね。探しても見つけられないはずだわ」


 リリィがビシッと人差し指で、残念美人魔族に指をさした。


「じゃあ、このハンカチは、あの少女の?」


 残念美人魔族が、行方不明になっていたリリィのハンカチを取り出して、私を見る。


「そのハンカチは私の物よ!」


「どういう事?」


「あの日、私はお弁当を食べる時に、ジャスミンのお尻が汚れない様に下に敷いてあげたのよ」


「何ですって!?」


 うん。

 そうだったね。

 だから、私の臭いがついてたんだね。

 でも、その通りなんだけど、何だろう?

 そんな大袈裟な話じゃないよね?

 何で2人共、今まで隠されていた謎が解かれたみたいなノリなの?


「そうとわかれば、私のやる事は決まったわね!」


 そう言うと、残念美人魔族が私の目の前に猛スピードでやって来た。


「さあ、お嬢ちゃんの匂いを嗅がせてもらうわよ」


「きゃーっ! 変態だーっ!」


 私はルピナスちゃんの手を取って、秘密基地へと走る。


「だーかーらー! 入らせないって言ってるだろ!?」


「もう! どいてよ! ラークも今の聞いたでしょ!? 私は今変態に狙われてるし、ルピナスちゃんだってピンチなの!」


「うるせー! 知るか!」


「さあ! お嬢ちゃん、大人しく匂いを嗅がせなさい!?」


 ラークと残念美人魔族に囲まれる。

 おかげで私のストレスが全力で溜まり、とうとう私は我慢の限界をむかえてしまった。


「いい加減にしてーっ!」


 ルピナスちゃんの手を離して、両手に魔力を集中。


「凍てつく大地に縛られし親愛なる我が下部達よ。我を拒む愚かなる者共に罰を与え、今こそ全てを凍えあがらせろ! 凍てつけ! 氷結牢獄アイスヘル!」


「!?」


 呪文を唱えた瞬間、私を中心とした半径100メートル以内の地面が凍り付く。

 ラークの下半身は氷で埋め尽くされ、ラークの身動きを封じた。

 そして、残念美人魔族は下半身だけでなく、全身を凍らせた。


「行こっ。ルピナスちゃん」


「うん」


 私はルピナスちゃんを連れて、今度こそと秘密基地へ向かう。

 しかし、秘密基地を目の前にして、ルピナスちゃんが立ち止まってしまった。


「どうしたの?」


「怖い」


 ルピナスちゃんが指をさす。


「え?」


 ルピナスちゃんが指をさした先にあったのは、獣がまるで口を開けてるかのように見える作りをした出入口だった。


 あれ? と言う事は、もしかしてルピナスちゃんが怖いって言ってたのって。


「ルピナスちゃん。さっきの魔族は怖かった?」


「ううん。怖くないよ」


「じゃあ、これが最初から怖かったの?」


 私は出入り口に指をさす。


「うん。怖い」


 ルピナスちゃん可愛い。

 って、言ってる場合じゃない。

 そうかー。

 最初からこれが怖かったのか。


「よーし。お姉さんに任せてね!」


 私は再び魔力を溜めて放つ。


「その一粒は槍よりも鋭く銃弾よりも速く、全てを貫く滴。我が命に応え邪悪なる偶像を打ち滅ぼせ! 散弾雨スルードロップ!」


 私が呪文を唱えると上空に魔法陣が生成されて、秘密基地の入り口を狙って水の弾丸がマシンガンの様に大量に放たれた。

 周囲には轟音が鳴り響き、ものの数秒で秘密基地の入り口は破壊された。


「これでよし!」


「よくねーっ!」


 背後からラークの悲痛な叫び声が聞こえるけど、気にしないでおこう。

 ルピナスちゃんの為だ。

 多少の犠牲は仕方ないよね?


 私はルピナスちゃんをトイレに連れて行く事に無事成功し、1人で秘密基地の外へと出た。

 そこで私を待っていたのは、リリィとブーゲンビリアお姉さんだった。

 リリオペはラークの所で、私が魔法で作ったラークの下半身の氷と睨めっこしていた。


「ジャスミン素敵!」


 リリィが満面の笑顔で、私に抱き付いて来た。


「ね、ねえジャスミンちゃん。さっきの魔法は?」


 ブーゲンビリアお姉さんが、恐る恐ると言った言葉が似合う表情をして、質問してきた。


 ひぃー!

 やっぱり気になっちゃうよね?

 聞いちゃうよね。


「え、えーと、本当はあんな長々と呪文を言う必要が無いのはわかっているんだけど、厨二を拗らせてしまった結果と言うか何と言うか」


 私が早口で捲し立てると、ブーゲンビリアお姉さんは困惑してしまった。

 そして、ブーゲンビリアお姉さんは少し考える素振りを見せてから、また私に質問をした。


「よくわからないけど、呪文の長さの事じゃなくて、さっきの魔法って水属性の上位魔法の氷魔法よね?」

「へ? あ。そう言う事?」

「私を含めて村の大人でも、上位魔法を使える人なんていないわよ。ジャスミンちゃん凄いよ!」


 ブーゲンビリアお姉さんは興奮して、若干鼻息が荒くなる。


 氷の魔法って、上位の魔法だったんだ?

 前世の記憶が甦った時に、思いつく限りに試した魔法の1つだったからなあ。

 前世の記憶が無い頃は、私は魔法に苦手意識があったから、魔法に詳しくなかったんだよね。

 だから、凄いと言われても、その凄さに実感がわかない。


「まさか、お嬢ちゃんが氷の魔法を使えるなんてね」


「!」


 その時、凍っていた残念美人魔族が、赤黒い炎で燃え上がる。

 そして、赤黒い炎は私の放った魔法の氷を溶かし、残念美人魔族が私の魔法から解放された。


「でも、残念だったわね。私は炎の魔法を操るのよ。氷じゃ私は止められないわ」


 残念美人魔族が、ゆっくりと私に向かって歩き出す。


「私は、魔軍三将が一人ベルゼビュート様直属の配下フルーレティ様に仕える三幹部の一人バティン。そこらの魔族と一緒にしない事ね」


 残念美人魔族の言葉で、周囲に緊張が走る。


「う、嘘でしょ?」


 ブーゲンビリアお姉さんもリリィも驚きを隠せないでいる。

 もちろん私も驚いた。

 だってそうでしょう?

 今更、残念美人魔族のお姉さんの名前が判明したのだから!


「貴女、魔族の幹部だったの!?」


 あ。違った。

 そっちだったかー。

 うーん。

 まあでも、そりゃそうだよね。

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