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178 幼女の為に争うおバカ

 突然ドアを爆破させて現れたオライの告白を受けて私が後ずさると、スミレちゃんが私の前に立って、オライを睨みつけた。


「オライ。お前は年上好きだったはずなのよ! それが何故、幼女先輩に結婚を申し込んだなのよ!」


 スミレちゃんとオライが睨み合い、オライは鼻で笑って、スミレちゃんの後ろにいる私を見る。


「何故でしょうか? 昨日見たその少女、純白の天使のパンツにニーソを合わせた姿が、忘れられないのです」


「確かに幼女先輩のあの姿を見た時は、私も一瞬だけ自分がいつの間にかに殺されて、天国に来てしまったかと錯覚したなのよ!」


 スミレちゃんもそう言って私を見る。

 すると、オライが首を横に振って微笑した。


「まさに純白の天使……いいえ。魔性の幼女の名に相応しい幼女だったわけです。それならば、昨日の処刑失敗の汚名を返上する為に、結婚を申し込むしかないとは思いませんか!? バティン!」


「その通りなのよ! オライも幼女先輩の魅力に気が付いたなのね! だけど、幼女先輩はお前なんかに渡さないなのよ!」


「ふん! 渡してもらいますよ! 純白の天使を!」


 スミレちゃんが手で拳を作り炎を纏わせて、オライに殴り掛かる。

 オライはスミレちゃんに弓を構えて、矢を放つ。

 2人の激しい戦いが始まり、鍛冶工房が一瞬にして戦場へと変わってしまった。

 私はラヴちゃんの頭を撫でながら、2人の激しい戦いを見て思う。


 なんだこれ?


 と。


 なんか、2人とも鬼気迫る感じで喋ってたけど、内容がおバカすぎてついていけないよ?

 と言うかだよ。

 失敗の汚名返上で出た答えが結婚って、本当に意味がわからないよ。


「がお」


 私が2人の戦いを見ていると、ラヴちゃんが吹っ飛ばされたお爺さんの方に指をさす。

 それでハッとなって、お爺さんを見ると、お爺さんがお婆さんに支えられながら立ち上がっていた。

 私はお爺さんとお婆さんに急いで駆け寄る。

 すると、私の顔を見てお爺さんが話しかけてきた。


「嬢ちゃんも災難だな。あんな礼儀も知らねえ馬鹿に求婚されちまってよ」


「う、うん。そんな事より、お爺さん大丈夫?」


「ふん。このくらい平気だ。実験中に起こる爆発の方が、よっぽどやべーってもんよ。それと、俺の事は教授と呼べやい」


「え? うん」


「ごめんなさいね。この人、教授って呼ばれるのが好きなのよ」


 そうなんだ?

 お爺さん、なんだか可愛いなぁ。


「余計な事を言うんじゃねーよ」


「うふふ。ごめんなさい」


 とにかく、お爺さんが無事そうで良かったよ。

 それにしても……。


 と、私は再びスミレちゃんとオライの激しい戦いに視線を向ける。

 炎と風が激しくぶつかり合い、お互い一歩も引かずに攻撃を繰り返す。

 その戦いは、今にもこの鍛冶工房を吹き飛ばしてしまいそうな位に、凄まじく恐ろしい程に激しかった。


 凄い事になってるなぁ。

 闘技場ではスミレちゃんが圧勝だったけど、今は凄く良い勝負になってる。

 でも、なんでだろう?

 スミレちゃんの魔法が無効化されてない。

 うーん……って、大変!

 スミレちゃんが腕と足に怪我してる!


 私は鍛冶工房内の窓を確認して、外を見る。

 そして、窓の向こうのかなり遠い場所で、ライフルを構えて銃口をこちらに向けているアマンダさんの姿を見つけた。


 いた!

 アマンダさんだ!

 プリュちゃんもいる。

 凄いなぁ。

 いつでも撃てるように構えてる。

 あの位置からなら……よし。

 オライに気づかれずに、スミレちゃんを誘導出来れば……。


「スミレちゃん! 右に走って!?」


「幼女先輩? わかりましたなのですよ!」


 スミレちゃんが私に言われた通りに右へと走り出す。

 すると、オライが窓を一瞬だけチラッと見て、ニヤリと笑う。


「窓を見て何かを企んでいた様ですが、純白の天使、貴女から香る甘い匂いの様に甘いですね」


 え? 何それ?

 例えが気持ち悪いよ?


「見え見えの作戦などには引っかかりませんよ! 私は弓使い! 移動せずとも攻撃が――」


 オライが笑いながら話している途中、窓の外から放たれた銃弾がオライの足を撃ちぬいた。

 銃弾を受けたオライが膝をつくと、更に続けてオライの左肩を銃弾が撃ちぬく。


「ぐおおぉっ!」 


 オライが叫んで弓を床に落とし、左肩を押さえてうずくまる。

 その時、私は何か嫌な予感がしたので、窓から見えるようにオライの前に立って、両手を広げた。


『プリュちゃん!』


 私が加護の力を使って、プリュちゃんに呼びかけた。

 すると、プリュちゃんが慌てた様子で私の呼びかけに答える。


『あ、主様! 急に前に立つから危なかったんだぞ! アマンダさんが後もう少しで、主様を魔族と一緒に撃っちゃう所だったんだぞ!』


『あはは。やっぱりだよ。プリュちゃん、アマンダさんには、もういいよって伝えて?』


『わかったんだぞ』


 私はプリュちゃんとの通信を終えると、オライに振り向いてしゃがんだ。


「ごめんね。直ぐに止血するから、痛いかもだけど我慢してね」


 そう言って私が止血の為に傷口を手当てしようとしたら、スミレちゃんが私の横にしゃがんで、傷口をペチンっと叩いた。


「っつぅぅっ! バティン! 何をするのですか!?」


「幼女先輩。この通り元気が有り余ってるので、放っておけば良いなのですよ」


「す、スミレちゃん。流石に撃たれた所に、そんな事したら駄目だよ」


「純白の天使。そいつは教授に怪我を負わせた悪人なんだーぜえ? バティンの言う通り、放っておけばーいぃんだよ」


 私をスミレちゃんと2人で挟むように、突然エリゴスさんが私の横に現れて、しゃがみながら喋った。


 ひぃっ!?


 私は突然現れたエリゴスさんに驚いて、スミレちゃんに抱き付く。

 私に抱き付かれたスミレちゃんは、笑顔で私を抱きしめる。


「え、エリゴスさん!? 気が付いたんだね」


「心配かけたな。本当の事言うとよお。こいつがドアをぶっ壊しちまったー時には、気がついてーいたんだ」


 あれ?

 そうだったんだ?


「だけどよぉ。こいつはオレッチより強い魔族だ。死んじまった教授にはー悪いけどーよお。怖くて、ずっと死んだふりをしてたってーわけだ」


 そう言ったエリゴスさんの顔は、とても凄く晴れやかで、まるで遠く懐かしい思い出を語るような顔だった。

 そんなエリゴスさんの晴れやかな顔を見て、私はなんとも言えない残念な気持ちになる。


 う、うわぁ……。

 って、お爺さん死んでないからね!


「勝手に殺すんじゃねーよ!」


 ポカンッと、エリゴスさんが頭をお爺さんに叩かれる。

 その様子を私が苦笑して見ていると、オライが「ははは」と失笑しながら話し出す。


「やはり純白の天使一行は、一筋縄ではいきませんね。城の兵も全て、あの少女一人に苦戦していますし、噂以上と言って良いでしょう」


 あの少女1人?

 それって、もしかして!?


「リリィは、リリィはお城にいる兵隊さん達を相手に、今も戦っているの!?」


「ええ。そうですよ。私は直接現場を見て来たわけではないので聞いただけの話でしかありませんが、同胞マラクスとドワーフ全ての兵が束になっても、その少女との決着がつけられないと聞きました」


「リリィ……」


「凄いなのよ。流石はリリィなのよ」


「がお」


「たまにですが、城中に兵達の叫び声が聞こえていました。私には想像もつかないような、激しい戦いは今も続いているのでしょう」


 トンちゃんからの連絡はまだこないし、やっぱり2人の事が心配だよ。


 私が2人を心配していると、そこにプリュちゃんとアマンダさん、そしてここの建物の研究員さん達がやって来た。

 そして、アマンダさんは私の顔を見ると、柔らかく微笑んで口を開く。


「貴女には敵わないわね。あまり危険な事は、しないでね?」


「う、うん」


 私がアマンダさんに返事をすると、プリュちゃんが私の胸に飛び込んできた。


「主様ー!」


「プリュちゃん」 


 私はプリュちゃんを抱きしめて、頭をなでなでする。

 そんな中、プリュちゃんとアマンダさんと一緒に入って来た研究員さん達が、お爺さんに駆け寄った。


「教授っ! 大丈夫ですか!?」


「あったりめえよ!」


「やはり、この者達を王につき出した方が!」


「馬っ鹿野郎ーっ! 何言ってやがる! 嬢ちゃん達は大事な俺の客人だ! んな事してみろ? 俺が許さねーよい!」


「お爺さん……」


「だから嬢ちゃん。お爺さんは止めろって言ってんだろ? 教授と呼べ教授と!」


「あはは。うん。教授のお爺ちゃん」


 私が笑顔でそう答えると、教授のお爺ちゃんはもの凄く嫌そうな顔をして、顔を横に向けた。


「ったくよー。これだから礼儀を知らねえガキは嫌いなんだよ!」


「あらまあ」


 お婆さんが教授のお爺ちゃんを見てクスクス笑う。

 私も嫌味を言って顔を顰めながらも、耳を真っ赤にさせた教授のお爺ちゃんを見て、お婆さんと一緒に微笑んだ。

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