表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/288

171 幼女のペットは実は強い

 アマンダさんがオライを撃った事で、観衆達が騒然となり混乱して逃げ惑う。

 そんな中、ドワーフの兵隊さん達が観衆をかき分けて、アマンダさんの所へと向かっているのが見えた。


 私がアマンダさんの姿を見て喜んでいると、加護の通信を通してプリュちゃんが私に話しかける。


『主様! アマンダさんがドワーフの兵隊を引きつけてるうちに、スミレさんを助けるんだぞ』


『うん! ありがとー!』


 私は急いでスミレちゃんの方へ向かおうと、視線を向けて気付く。

 スミレちゃんは既にビフロンスに解放されていて、自由の身になっていた。


「ビフロンス、ありがとうなのよ」


「はっはっはっ。これ位、当然だよ」


 私は一先ずスミレちゃんが自由の身になれた事に安心しながら、2人に駆け寄りながら、オライの様子を見る。

 オライはアマンダさんに撃たれたのがよっぽど悔しかったのか、弓をアマンダさんに向けて構えていた。


『プリュちゃん。オライがアマンダさんを狙ってるよ』


『わかったんだぞ』


 私がプリュちゃんに伝えたとほぼ同時のタイミングで、オライがアマンダさんに向けて矢を放つ。

 だけど遅い。

 アマンダさんはプリュちゃんに頷き、直ぐに構えてオライの放った矢を撃ち落とした。


「馬鹿な! 私の矢を撃ち落としただと!?」


 流石アマンダさん。

 かっこいい!


 アマンダさんの活躍を見て私が喜んでいると、ビフロンスが「おい」と、私の後頭部を小突く。


「今の内に脱出するぞ。俺の後に続け」


「あ、うん」


 私が返事をすると、ビフロンスは舞台の出入口に向かって走り出した。


「ビフロンス、幼女先輩を叩いたら駄目なのよ」


「い、今のは俺流のスキンシップで、そんなつもりじゃ……」


 私は前を走る2人の後を追いながら、プリュちゃんに連絡を入れる。


『プリュちゃん。舞台の出入口に来るように、アマンダさんに伝えて?』


『わかったんだぞ』


 その時、私達が逃げようとしている事に気がついたオライが、私達に向かって弓を構える。


「逃がしませんよ!」


「お断りなのよ!」


 オライが弓を構えて矢を放つ前に、スミレちゃんが一瞬でオライに近づく。


 スミレちゃん!?


 私が驚くのも束の間、スミレちゃんがオライのお腹を殴って、オライはもの凄い勢いで吹っ飛ぶ。

 そして、オライはそのまま闘技場の壁に衝突。

 もの凄い轟音が闘技場内に鳴り響き、オライは壁にめり込んで気絶した。


 え、えええぇぇーっ!?

 スミレちゃん凄っ!

 え? 何?

 スミレちゃんって、そんなに強かったの!?


「これで逃げやすくなったなのよ」


「流石はバティンさんだ」


「幼女先輩のペットとして、これ位は当然なのよ。でも、幼女先輩と比べたら、こんなの赤ちゃんパンチと大差ないなのよ」


 またペットって言ってる……。

 スミレちゃん、本当にそれで良いの?

 私は凄く嫌。

 と言うか、その赤ちゃんの例えは可愛いね。


 などと私が考えている間に出入口まで辿り着き、プリュちゃんとアマンダさんが私達に合流した。


「主様ーっ!」


 プリュちゃんが私の腕に飛びつて、顔をスリスリしてきたので、私はプリュちゃんの頭を優しく撫でる。


「プリュちゃんもアマンダさんも、無事で良かったよ」


「ええ。お互い無事で良かったわ」


「うん」


 私とアマンダさんがそう言って微笑み合うと、ビフロンスが私達を睨む。


「無駄口は後にしろ」


「う、うん」


「はい」


 私とアマンダさんはお互い目を合わせて苦笑する。

 すると、アマンダさんの苦笑が何かに驚く顔へと変わり、私達が進む道の先を見た。


「アマンダさん?」


 私がアマンダさんの名前を呼んだその時だ。

 ズシンッと、大きく鈍い音が前から聞こえてきて、私はその音の元を見て顔から血の気が引いて行くのを感じた。


「やってくれたな。ビフロンス。反逆者に命は無いぞ」


 ど、ドワーフの王様!?

 あわわわわ。

 やばい、やばいよ!


 私が慌てていると、ビフロンスが手で壁に触れる。


「この通路を選択して正解だったな」


 ビフロンスが触れた場所を中心に魔法陣が現れて、魔法陣が現れた場所が崩壊していった。

 そして、崩壊した壁の向こう側に、通路が現れる。


「こっちだ!」


 ビフロンスは叫ぶと、壁を壊して出てきた通路へと入って進む。

 すると、ドワーフ王が自らも壁を剛腕で破壊して進み、ビフロンスに掴みかかった。


「逃げられると思わない事だな! ビフロンス!」


「ば、馬鹿な!? 自分の城の壁を破壊しただと!?」


 うわぁ。

 おバカだなぁ。


 と、私が呆れて見ていると、スミレちゃんが私の手を取って走り出す。


「今の内にここを突破するなのですよ!」


「え? スミレちゃん。でも、ビフロンスは?」


「ビフロンスの覚悟を……自分を犠牲にして、王様を引きつけてくれた覚悟を、無駄にしちゃ駄目なのですよ!」


 いやいやいや。

 ここは俺に任せて先に行けーみたいな、絶対にそんなかっこいいものじゃないよアレ。

 でも……。


 私はビフロンスをチラリと見る。


「糞がっ! 離せ! 捕まえるなら、あっちのジャスミンとか言うガキにしやがれ!」


 うん。

 放っておこう。

 無視だ無視。

 今の内に逃げちゃおう。


「ビフロンス。私達を逃がす為に、わざとあんな嫌われ役を買って出てくれるなんて、とっても良い奴なのよ」


「魔族にも、あんなに素晴らしい方がいるのね」


 スミレちゃん、それにアマンダさん。

 そう言うのじゃないけど、私、2人の夢を壊さないように黙っておくね。


 私は2人に微笑みながら、ビフロンスを置いて駆け抜ける。

 背後から、ビフロンスの悲鳴が聞こえる気がするけど気にしない。


 ビフロンス、バイバイだよ。

 私、貴方の事、多分だけど忘れないよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ