170 幼女も驚く処刑内容
オライを応援するスミレちゃんをジト目で見ると、スミレちゃんがそれに気がついて、私から目を逸らしてボソボソと呟く。
「幼女先輩頑張れなのですよー」
私はその様子を見て、ため息を一つしてオライに視線を向ける。
「スミレちゃんは返してもらうんだからね!」
「そうはいきませんよ。女性を処刑するこの日を、どれだけ私が待ち望んできたか、お嬢さんにはわからないでしょう」
女性の処刑を待ち望む?
何言ってるのこの人?
良い人だと思っていたけど、やっぱり凄く性格悪い人だよ!
オライがわなわなと震えだし、大声を上げて叫び出す。
「今まで処刑して来た者は、全て男だったんですよ! 貴女にはわかりますか!? この屈辱が!」
……うん?
ど、どうしよう。
話が見えないよ?
「この私の能力を使った処刑で、見たくもない男の裸ばかりを、何度も見させられてきた私の悲しみが貴女にわかりますか!?」
わかりたくもないよ!
って言うか、処刑って、私がされたみたいな服を脱がす事だったの!?
おバカなの!?
おバカなのドワーフ族の処刑内容!?
くだらなすぎるよ!
服を脱が……あれ?
でも、よく考えてみると、これだけ大勢の前で見世物にされた状況で全裸とか、凄く女の子には残酷だよね?
実際に私も、今は凄く恥ずかしくて気分最悪なんだもん。
やっぱり、なんとしてもスミレちゃんを助けないとだよ!
と、その前に……。
私は周囲を確認して、背後に落ちている私の服を見つける。
そして、私はシャツを取って、直ぐにシャツを着た。
「どうやら、また脱がされたいようですね」
オライが私に向かって弓を構えたので、私はオライに目を合わせて口を開く。
「能力が2つあるって事は、前世の記憶があるんだよね? だったら、小さい女の子を脱がすのは、ダメな事だってわかるでしょう!?」
私の言葉を聞くと、オライは呆れた顔で私を見て鼻で笑い、首を横に振る。
そして、可哀想な者を見るような目で私に目を合わせた。
「生憎ですが、それはあくまで前世の世界のルール。この世界、少なくともこの国では、そんなルールは存在しません!」
「その通りなのですよ! 幼女を脱がしても誰も怒らないなのですよ!」
ひっどい世界だなぁ……ここ。
って、スミレちゃん、本当にもう助けなくて良い?
どっちの味方なのさって、あれ?
そう言えば、ビフロンスは何をやってるんだろう?
もう何度もチャンスはあったと……え?
私はその時気がついた。
よく見ると、スミレちゃんは上着は着ているものの、腰から下は既にオライの能力を食らっていて、パンツがチラ見していたのだ。
上着のおかげでパンツが隠れていたけれど、それが逆にエッチな感じになっていた。
そして、そんな姿になってしまっているスミレちゃんの近くで、よく見ると空中から赤い液体が流れて地面に落ちていた。
ま、まさか。
私がそう思ったその時だ。
赤い液体の発生源、ビフロンスがうっすらと姿を現してしまった。
「貴様は!」
オライがそれに気がついて、実物の矢を手に取って、ビフロンスに向けて弓を構える。
「くそ! ばれちまった!」
ビフロンスが鼻血を拭って、オライから距離をとって私の横に立つ。
「おいお前! お前がろくに注目を集められなかったせいで、ばれちまったじゃねーか! 作戦が台無しだ!」
「そっちがもたもたして、鼻血なんか出してるからでしょう!? 人のせいにしないでよ!」
私がビフロンスに思わず言い返すと、ラヴちゃんが私の顔に飛びついて、頬っぺたをペチリと叩く。
「ジャチュ、やー」
「え? やー? 矢!?」
私がラヴちゃんの言葉の意味に気がついた時には、既にオライが矢を私達に向けて放った後だった。
う、嘘でしょう!?
何これーっ!
私は放たれた矢を見て驚愕する。
それは、1本だけじゃなかったからだ。
数えられない程の数の矢が、大量に私達に向かって襲い掛かる。
今度は魔法じゃないから、この炎で燃やせるはず!
と、私は慌てて魔力を集中して、炎の壁を前方に発生させる。
だけど、何故かオライの放った矢が燃える事は無く、それどころか勢いも治まらずに炎の壁を貫通した。
「馬鹿野郎! それは魔法を防ぐ特別製だ!」
寸での所で、私は胸倉を掴まれて、ビフロンスのおかげで襲い来る矢からそのまま逃れる。
「あ、ありがとー」
まさか助けられるなんて。
ビフロンスって、実はいい人だったの?
「お前の事は嫌いだが、お前を助ければバティンさんからの好感度が上がるからな」
うん。
知ってた。
「ビフロンス、ナイスなのよ!」
ビフロンスの狙い通りに、ビフロンスの好感度がスミレちゃんの中で、また一つ上がったようだ。
私は苦笑しながら、オライを見て驚く。
え? 上?
何故か、オライは矢を大量に手に取って、弓を上に向かって構えていたのだ。
うわぁ。
嫌な予感がするよ。
あんな感じなの、ゲームだとかで見た事あるもん。
「さあ! 存分に踊って頂きますよ!」
オライが声を上げると、オライの手元に魔法陣が浮かび上がり、風が矢を包み込んで勢いよくオライの手元から天に向かって放たれる。
そして、天に向かって放たれた矢は弧を描き、次々と勢いよく私達を襲う。
ひぃぃっ!
矢の雨が降って来たよー!
私は矢を燃やそうと、魔法で炎を放つが、当たり前のように矢は燃える事なく私に迫る。
魔法が効かないと察した私は、慌てて逃げ回る。
魔法で防げないなんて、反則だよぅ!
「幼女先輩、危ないなのですよ!」
「えっ?」
頭上から襲い来る矢の雨から逃げ回っていると、スミレちゃんの声が聞こえて振り向くと、いつの間にかオライが私の目の前まで来ていた。
「噂程ではないですね! 魔性の幼女!」
私は慌てて目の前に来たオライに手をかざして、魔力を集中する。
「遅いんですよ!」
ダメだ!
間に合わない!
私がそう思い、オライの手が私の肩に触れたその時、目を疑う出来事が起こる。
「なっ……!?」
オライの腕が何かに撃たれ、オライは腕を抑えて後ろへ後退って、私から距離をとった。
え!?
何っ!?
何が起きたの!?
「がお!」
ラヴちゃん?
ラヴちゃんが観衆達がいる客席に指をさす。
私はラヴちゃんの指をさした方へ視線を向けて驚いた。
そして、驚きは直ぐに喜びに変わり、思わず笑みが零れた。
「アマンダさん!」
客席にいたのは、ライフルのような武器を構えたアマンダさんだったのだ。
そして、アマンダさんは私が名前を呼ぶと、柔らかく微笑を浮かべた。
きゃーっ!
アマンダさんかっこよすぎだよ!




