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017 幼女は絶望を垣間見る

 村を出る途中、見張りの大人達がいた。

 でも、ブーゲンビリアお姉さんが一緒にいたおかげで、堂々と村を出る事が出来た。


 おかげでラークはご機嫌になって、ブーゲンビリアお姉さんを連れて来たリリィに「よくやった!」と言って、背中をバンバン叩きだす。

 そんな事をされて、リリィが気分良くなるはずもなく、「いったいわねー!」と言って、ラークのほっぺをパチンと叩く。


「何すんだよ!」


「それはこっちのセリフよ!」


 はあ。

 馬鹿ラークいい加減にしてほしい。


 なんて考えながら、私はリリィをなだめながら、目的地の秘密基地へと向かった。


 



 それから暫らく歩くと、ルピナスちゃんが急に私の体にしがみついた。


「ルピナスちゃんどうしたの?」


「怖い」


 そう口にしたルピナスちゃんは、尻尾をだらんと下げて、まん丸お目目を涙でいっぱいうるうるさせて私を見ている。


 ルピナスちゃんキャーッ!!

 めちゃくちゃ可愛い!


 って、いやいや。

 しっかりしろ私!

 ルピナスちゃんが可愛いからって、興奮している場合じゃないでしょ。


「何が怖いの?」


 ルピナスちゃんは、私に聞かれて恐怖を感じた場所に指をさした。

 そして、私がルピナスちゃんが指をさした方向を見た丁度その時、ラックが大声で喋る。


「着いたぜ!」


 私は驚いた。

 何故なら、ラックが着いたと言った場所こそが、ルピナスちゃんが指をさした場所だった。


「ちょっと待って」


 その時、ブーゲンビリアお姉さんが、ラックの目の前に行って呼び止める。


「この中から、異様に高くて禍々しい魔力を感じるわ。かなり危険な奴がいる」


「おー! さすが大人だな! 魔力を感知出来んのか!?」


「あのね。アンタが馬鹿なだけで、ここまで強い魔力なら、誰だってわかるわよ」


 私もその言葉で、リリィとリリオペの反応に気がついた。

 見てみると、2人とも畏縮いしゅくして、顔を青ざめさせて立ち止まっていた。

 どうやら、私とラックだけが気が付いていなかったようだ。


 あれ?

 ちょっと待って。

 でも、そうなると色々と私が思っていた事と、事情が変わってこない?

 数日前に、パンツ泥棒として現れたオークに対して、リリィはこんな風にならなかったよね?

 そう考えると、その中にいる魔族って、かなりヤバいんじゃないの?

 ねえ?

 これヤバくない?


 そう考えた私は、手を上げて提案した。


「逃げよう!」


 皆が私に注目し、こくりと頷く。

 が、1人だけ馬鹿がいた。

 そう。

 もう皆さんご存知のラックだ。


「何言ってんだ? お前。ほらさっさと行くぞ!」


 私はラックの側まで行き、全力で耳元で可能な限り声を抑えて叫ぶ。


「馬鹿なのは貴方でしょ! ねえ! 今のビリアお姉さまの話、ちゃんと聞いてた? て言うか、皆の表情見てみなよ! 逃げる以外の選択肢ないよ!」


「何小声になってんだよ? あっ。さてはジャスミン、おめーびびってんな? 情けない奴だぜ! これだから女は」


「女とか男とか関係ないでしょ!? て言うか、さっきから煩いよ! 静かに喋ってよ!」


「関係あるね! 男は度胸が女よりあるからな! 度胸のある男ってのは、女には無いかっこよさがあるだろ? 俺に惚れんなよ? はっはっは!」


 私が可能の限り声を出さずに耳元で叫ぶ中、関係なしに大声のラック。

 しまいには勘違いまでして、本当にウザくて殴りたい。

 私は、おもいっきりグーで殴りたい気持ちを抑えて、冷静を取り戻す為に一度深呼吸をする。


「何してんだよ? お? まさかホントに惚れちまって、落ち着こうとしてんのか? ったく、仕方ねーな。俺って罪な男だぜ」


 あ。

 もうだめだ。

 よし。

 殴ろう。


 ついに、私が感情を抑えられなくなってラークを殴ろうとしたその時、リリィが物凄い怖い顔をして、私とラークの間に入った。


「何寝ぼけた事言ってんのかしら?」


 リリィ渾身の張り手が、ラークの顔をバチンと良い音鳴らしてクリティカルヒットした。


「ぐべっ」


 あ。

 何かスッキリした。

 ありがとうリリィ!

 流石私の大親友!


 私は嬉しさのあまりリリィに抱き付き、喜びを伝えたんだけど、その喜びも一瞬で驚きへと変換されてしまった。

 何故なら、私の目に映ってしまったからだ。 


「何の騒ぎ?」


 そう。

 私の目に映ったのは魔族。

 秘密基地から、魔族が出て来てしまったのだ。


 私は恐怖を感じて、固唾を飲んだ。

 わけではなく、気だるそうに出て来た魔族の美しさで、見惚れてしまった。


 その姿は、綺麗な美人の大人の女性。

 髪は赤黒く、まるで燃えている炎の様に禍々しくなびいていたけど、私には美しく目に映った。

 魔族と言うだけあって、白目の部分が黒くはあったけど、瞳はルビーの様な赤い瞳で綺麗だ。

 そして、スタイルも凄く良い。

 細くすらっとした体型で、そしておっぱいが凄く大きい。

 おっぱいが凄く大きい!


 すごっ!

 でかっ!

 ばいんばいんだよ!

 何食べたらあんなに大きくなるの!?

 前世ロリコンの私でも、あのデカさは注視しちゃうなぁ。

 うんうん。

 ツルペタが、一番だけどね!


 などと、私が考えていると、ラークが今まで以上の大声で叫び出す。


「出た! あいつだよあいつ!」


 そして、ラークが美人魔族に指をさした。


「馬鹿ラーク! 逃げるわよ! ジャスミンも早く!」


 リリィがラークに怒鳴り、私の腕を掴んだ。


「ここまで来て逃げられるかよ!」


 相変わらず、リリィを含め、私とラーク以外の4人は恐怖で顔が青ざめている。

 だと言うのに、ラークは相変わらず危機感を持たずにいるようだ。

 流石に、私も周りの反応を見たら、逃げた方が良い事位はわかると言うのに。


「行くぜお前等!」


 私達が逃げようとするも、ラークが美人魔族向かって走り出した。


「あの馬鹿!」


 ラークを止めようと、私の腕を離してリリィが走り出す。


「リリィ!」


 そして、事態は最悪な方向へと向かう。

 無謀にも、美人魔族に飛びかかったラークは、お腹を蹴られて吹き飛んだ。

 更に、追い打ちで美人魔族が炎を放ち、それがラークを襲ったのだ。


 しかし、炎がラークに命中する事は無かった。

 何故なら、ラークをリリィが庇ったからだ。


 そして、もの凄い爆発音が周囲に響き渡り、リリィは炎に包まれてしまった。


「リリィィッ!」

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