017 幼女は絶望を垣間見る
村を出る途中、見張りの大人達がいた。
でも、ブーゲンビリアお姉さんが一緒にいたおかげで、堂々と村を出る事が出来た。
おかげでラークはご機嫌になって、ブーゲンビリアお姉さんを連れて来たリリィに「よくやった!」と言って、背中をバンバン叩きだす。
そんな事をされて、リリィが気分良くなるはずもなく、「いったいわねー!」と言って、ラークのほっぺをパチンと叩く。
「何すんだよ!」
「それはこっちのセリフよ!」
はあ。
馬鹿ラークいい加減にしてほしい。
なんて考えながら、私はリリィを宥めながら、目的地の秘密基地へと向かった。
◇
それから暫らく歩くと、ルピナスちゃんが急に私の体にしがみついた。
「ルピナスちゃんどうしたの?」
「怖い」
そう口にしたルピナスちゃんは、尻尾をだらんと下げて、まん丸お目目を涙でいっぱいうるうるさせて私を見ている。
ルピナスちゃんキャーッ!!
めちゃくちゃ可愛い!
って、いやいや。
しっかりしろ私!
ルピナスちゃんが可愛いからって、興奮している場合じゃないでしょ。
「何が怖いの?」
ルピナスちゃんは、私に聞かれて恐怖を感じた場所に指をさした。
そして、私がルピナスちゃんが指をさした方向を見た丁度その時、ラックが大声で喋る。
「着いたぜ!」
私は驚いた。
何故なら、ラックが着いたと言った場所こそが、ルピナスちゃんが指をさした場所だった。
「ちょっと待って」
その時、ブーゲンビリアお姉さんが、ラックの目の前に行って呼び止める。
「この中から、異様に高くて禍々しい魔力を感じるわ。かなり危険な奴がいる」
「おー! さすが大人だな! 魔力を感知出来んのか!?」
「あのね。アンタが馬鹿なだけで、ここまで強い魔力なら、誰だってわかるわよ」
私もその言葉で、リリィとリリオペの反応に気がついた。
見てみると、2人とも畏縮して、顔を青ざめさせて立ち止まっていた。
どうやら、私とラックだけが気が付いていなかったようだ。
あれ?
ちょっと待って。
でも、そうなると色々と私が思っていた事と、事情が変わってこない?
数日前に、パンツ泥棒として現れたオークに対して、リリィはこんな風にならなかったよね?
そう考えると、その中にいる魔族って、かなりヤバいんじゃないの?
ねえ?
これヤバくない?
そう考えた私は、手を上げて提案した。
「逃げよう!」
皆が私に注目し、こくりと頷く。
が、1人だけ馬鹿がいた。
そう。
もう皆さんご存知のラックだ。
「何言ってんだ? お前。ほらさっさと行くぞ!」
私はラックの側まで行き、全力で耳元で可能な限り声を抑えて叫ぶ。
「馬鹿なのは貴方でしょ! ねえ! 今のビリアお姉さまの話、ちゃんと聞いてた? て言うか、皆の表情見てみなよ! 逃げる以外の選択肢ないよ!」
「何小声になってんだよ? あっ。さてはジャスミン、おめーびびってんな? 情けない奴だぜ! これだから女は」
「女とか男とか関係ないでしょ!? て言うか、さっきから煩いよ! 静かに喋ってよ!」
「関係あるね! 男は度胸が女よりあるからな! 度胸のある男ってのは、女には無いかっこよさがあるだろ? 俺に惚れんなよ? はっはっは!」
私が可能の限り声を出さずに耳元で叫ぶ中、関係なしに大声のラック。
しまいには勘違いまでして、本当にウザくて殴りたい。
私は、おもいっきりグーで殴りたい気持ちを抑えて、冷静を取り戻す為に一度深呼吸をする。
「何してんだよ? お? まさかホントに惚れちまって、落ち着こうとしてんのか? ったく、仕方ねーな。俺って罪な男だぜ」
あ。
もうだめだ。
よし。
殴ろう。
ついに、私が感情を抑えられなくなってラークを殴ろうとしたその時、リリィが物凄い怖い顔をして、私とラークの間に入った。
「何寝ぼけた事言ってんのかしら?」
リリィ渾身の張り手が、ラークの顔をバチンと良い音鳴らしてクリティカルヒットした。
「ぐべっ」
あ。
何かスッキリした。
ありがとうリリィ!
流石私の大親友!
私は嬉しさのあまりリリィに抱き付き、喜びを伝えたんだけど、その喜びも一瞬で驚きへと変換されてしまった。
何故なら、私の目に映ってしまったからだ。
「何の騒ぎ?」
そう。
私の目に映ったのは魔族。
秘密基地から、魔族が出て来てしまったのだ。
私は恐怖を感じて、固唾を飲んだ。
わけではなく、気だるそうに出て来た魔族の美しさで、見惚れてしまった。
その姿は、綺麗な美人の大人の女性。
髪は赤黒く、まるで燃えている炎の様に禍々しくなびいていたけど、私には美しく目に映った。
魔族と言うだけあって、白目の部分が黒くはあったけど、瞳はルビーの様な赤い瞳で綺麗だ。
そして、スタイルも凄く良い。
細くすらっとした体型で、そしておっぱいが凄く大きい。
おっぱいが凄く大きい!
すごっ!
でかっ!
ばいんばいんだよ!
何食べたらあんなに大きくなるの!?
前世ロリコンの私でも、あのデカさは注視しちゃうなぁ。
うんうん。
ツルペタが、一番だけどね!
などと、私が考えていると、ラークが今まで以上の大声で叫び出す。
「出た! あいつだよあいつ!」
そして、ラークが美人魔族に指をさした。
「馬鹿ラーク! 逃げるわよ! ジャスミンも早く!」
リリィがラークに怒鳴り、私の腕を掴んだ。
「ここまで来て逃げられるかよ!」
相変わらず、リリィを含め、私とラーク以外の4人は恐怖で顔が青ざめている。
だと言うのに、ラークは相変わらず危機感を持たずにいるようだ。
流石に、私も周りの反応を見たら、逃げた方が良い事位はわかると言うのに。
「行くぜお前等!」
私達が逃げようとするも、ラークが美人魔族向かって走り出した。
「あの馬鹿!」
ラークを止めようと、私の腕を離してリリィが走り出す。
「リリィ!」
そして、事態は最悪な方向へと向かう。
無謀にも、美人魔族に飛びかかったラークは、お腹を蹴られて吹き飛んだ。
更に、追い打ちで美人魔族が炎を放ち、それがラークを襲ったのだ。
しかし、炎がラークに命中する事は無かった。
何故なら、ラークをリリィが庇ったからだ。
そして、もの凄い爆発音が周囲に響き渡り、リリィは炎に包まれてしまった。
「リリィィッ!」




