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158 幼女は基本まとめ買い

 アマンダさんと再会した私達はカフェを出ると、鉱山街の入場許可証を手に入れる為に、3組に分かれて行動する事になった。

 私とリリィ、スミレちゃんとアマンダさん、フウさんとランさんの双子の3組だ。


 そんなわけで、私とリリィが入場許可証を手に入れる方法が無いかと、聞き込みに最初に選んだ場所はランジェリーショップ。

 と言っても、実は、これは私の私用がほとんどなわけだけども……。


「あら? ジャスミン。いつも穿いているパンツにしないの?」


「だって、純白の天使とか言われるんだもん」


「とってもジャスミンらしくて、可愛らしいじゃない」


「可愛いかもだけど、嫌なんだもん」


 私には純白の天使と言う二つ名があるらしい。

 だけど可愛く普通に聞こえるこの二つ名は、蓋を開ければそんな事は無く、私のいつも穿いているパンツを表して付いたものだった為に好ましくなかった。

 だから、私はお気に入りのパンツの柄を諦めて、もっと色んなタイプのパンツを穿こうと思ったのだ。


 縞パンかぁ。

 可愛いんだけど、私の好みではないし……あっ、紐パンだ。

 女児向けに紐パンって、犯罪の臭いしかしないんだけど?

 わあ、このフリルがついてるパンツ可愛い。


 私が1人で女児向けのパンツを物色していると、リリィがニコニコしながら私の横に立つ。


「ジャスミンのパンツがあったわよ」


「もう。リリィ、私はもう別の種類の――」


 パンツを探しているんだよ。と、言葉を続けようとした私は、驚きのあまり言葉を失う。

 何故ならリリィが私に見せたパンツは、例のつるっとなんとかとか言う、私をモデルにした漫画のプリントパンツだったからだ。


「まさか、ツルっとパイけつ魔女っ娘ジャスたんのパンツまであるなんて思わなかったわね。私、これを買おうかしら?」


「やめて?」


 本当の本当にまさか過ぎて、一瞬私の時が止まっちゃった気持ちになったよ。

 本当に勘弁してほしいなぁ。

 つくづく思うけど、この世界にも肖像権って必要だよね?


「え? でも……」


「ほら。そのパンツを穿いたら、その主人公の女の子の顔が伸びて、おデブになっちゃうよ」


 私がそう言うと、リリィは考えてもいなかったと言いたげな顔をして驚いて、パンツを見てしょんぼりと落ち込み顔になる。


「それは駄目だわ」


「で、でしょ?」


 良かったぁ。

 リリィが思いとどまってくれたみたいだよ。


 私は安堵のため息を吐き出す。

 すると、またもやリリィが何かを見つけたようで、今度は何かに向かって指をさした。


「ねえ。ジャスミンがいつも穿いているパンツの、新作が出たみたいよ?」


「え!? うそ!? どれ?」


 私はリリィが指さした方へと、期待の眼差しを向ける。

 そして、新作のパンツを見て私は思わず目を輝かせた。


「可愛いーっ」


 それは従来通りの白色のパンツ。

 だけど、天使の羽の間のちょっと上のあたりに、天使の輪っかが追加されていたのだ。

 私は思わず手に取って目を輝かせる。


「別に可愛くないッス」


「えーっ? そっかぁ。この可愛さが、トンちゃんにはわかんないかぁ」


 トンちゃんが呆れ顔で私の言葉を聞くと、リリィに顔を向けて訊ねる。


「ハニーも何か買うッスか?」


「そうね~。私はレースショーツでも買って行こうかしら」


 レースショーツ!?


「え? リリィって、パンツまで大人っぽい」


「普通じゃない?」


「普通なの?」


「普通よ」


 そ、そうなの?

 前世は男だったし、今の私も同じ柄のパンツしか穿いてないからわかんない。


 と、私が困惑していると、トンちゃんが私の肩に座って口を開く。


「ハニーがレースのパンツを買うなんて、珍しいッスね」


「え? そうなの?」


「はいッス。だって、いつもそんなの穿いてないじゃないッスか」


「あっ」


 と、私は思い出す。

 言われてみれば、何度か一緒にお風呂に入った時も、リリィからパンツを借りた時も、リリィは普通のパンツを穿いていたのだ。

 色はピンクだったり黒だったり青だったりと色々あったけど、レースショーツなんて見た事が無かった。


「そう言えば、二人は見る機会が無いかもしれないわね」


「どういう事?」


「私は寝る時に、寝間着を着ずにショーツだけ穿くの。本当はそれも穿きたくないのだけど、両親に怒られてやめたわ。それで、今はレースショーツだけ穿いて寝ているのよ」


「そ、そうだったんだ」


 リリィって元裸族なんだね……。

 って言う事は、リリィにとってパンツがパジャマなんだ。

 なんか凄くエッチだなぁ。

 9歳とは思えない風格だよ。


 などと私がおバカな事を考えていると、トンちゃんが何かを思い出したように、ポンッと手を叩く。


「そう言えばご主人。何でご主人は、いつもキャーキャー煩いのに、男湯に平気で全裸で入るんスか?」


「え? お風呂は裸になる所だから、普通じゃない」


「主様の言う通りだぞ」


「がお」


「ほら。プリュちゃんとラヴちゃんも、そう言ってるでしょう?」


「聞いたボクが馬鹿だったッス」


 トンちゃんが呆れた顔をして私を見る。


 え? 私、変な事言ったかな?

 なんで、そんな目で私を見るの?

 うーん……。


 と、私が考えていると、リリィが私に話しかけてきた。


「それより、結局どうするの? 買う物は決まった?」


「あ。そうだよね」


 そう言って、私は新作のパンツに手を出した。


「これにする!」


「結局いつものパンツです」


「ご主人も好きッスね~。それ。結局、より一層ご主人の二つ名に相応しいパンツになっただけだったッスね」


「いいの。可愛いから仕方ないでしょう?」


 こうして、結局私はいつものパンツをグレードアップさせた、天使の輪っか付のパンツを手に入れたのだった。10枚ほど。


 ちなみに、鉱山街の入場許可証の情報を店員さんに聞いてみたのだけど、全く情報を得られませんでした。

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