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156 幼女と綺麗なシンメトリー

「あのウェイトレスさん、ノーパンなのよ」


「主様、スミレさんが急に変な事を言い出したんだぞ」


「え? うん。大丈夫。いつもの事だから」


「スミレは馬鹿だから放っておくです」


「がお」


 私達は今、お昼ご飯を食べに小さなカフェに来ていた。

 私が注文したのは、ハムとレタスのサンドイッチとミルクティー。

 トンちゃん達4人には、フルーツタルトを注文した。

 私はウェイトレスのお姉さんが運んで来てくれたミルクティーを飲みながら、スミレちゃんにドン引きしているプリュちゃんの頭を撫でてなだめる。


「ボクとしては、おっぱい女の変態発言より、ノーパン女のウェイトレスの痴女っぷりが気になるッス」


「そうね。ここは一つ、本当かどうか聞きに行きましょう」


 リリィ、何おバカな事を言っているの?

 恥ずかしいから止めて?


「リリィ、今はそんな事より、作戦を考えるべきです」


「そうだぞ。ドワーフ族の鉱山街に行っても、追い返されちゃうかもしれないんだぞ」


「それもそうね」


「まさか、鉱山街に入る為に、入場許可証がいるなんて思わなかったよね」


 私はため息を一つして、サンドイッチをパクリと頬張る。

 鉱山街へ行く道を調べてわかった事なのだけど、鉱山街に入る為には入場許可証が必要だったのだ。

 それで、私達は色々と聞き込みをしてわかった。


 本来であれば、他種族と交流しないドワーフ族は、自分達が暮らす鉱山街に他種族を招く事なんてしない。

 だけど、このサーカスの公演の時だけ、他種族を招き入れる事になったようだ。

 これについては、私達にとって、かなりラッキーな感じではあった。

 ただ、ドワーフが暮らす鉱山街は、そのせいもあって街に入る為の入場許可証が必要になってしまっていたのだ。

 だけど、入場許可証は大人気のあまり今は発券が中止となって、一般販売がないらしい。


 それで私達は、許可証が無くても別の日でもいいから鉱山街に入れないか、更に聞き込みを開始した。

 だけどその結果わかったのは、サーカスの公演に便乗して入場許可証を手に入れて鉱山街に入る以外の方法が、他に無いという事だった。

 サーカスの公演が終われば、鉱山街には入れない。

 元々ドワーフが他種族と交流をしないから、サーカスの公演があるこの機会でもない限り、街に入る事すら出来ないのが普通なのだ。


 そんなわけで、既に入手困難で手に入らない入場許可証をどうやって手に入れるか話しながら、私達はお昼休憩をしていた。


「困ったわね。入場許可証を手に入れる以外の、鉱山街に入る方法があればいいのだけど……」


「私としては、ニクスちゃんがバニーガール姿でポスターに写っていたのも、凄く気になるなのよ」


「あはは。確かに……」


 私が苦笑して答えると、トンちゃんがフルーツタルトを食べながら飛んで、私の肩の上に座る。


「どうせ、ロリコンの客引きの為に、働かされてるだけッスよ」


 あ。

 なんかそれ、凄くありそう。


「ドゥーウィン、お行儀が悪いんだぞ」


 プリュちゃんがトンちゃんを注意すると、トンちゃんが明後日の方向を見て口笛を吹いた。


「それにしても、何でエロピエロはドワーフ族の住む鉱山なんかで、サーカスの公演なんてやってるのかしら?」


「うん。そうだよね。なんでだろう?」


 と、私が首を傾げた時、背後から「ねえねえ君達」と、声をかけられた。

 その声は2人分の女性の声で、そして声をかけて来たのが1人なんじゃないかと思える程に、妙にハモっていた。

 私は誰だろうと振り返ると、そこに立っていたのは、年齢が高校生くらいに見える兎の耳を生やした2人の女の子だった。


 本当に誰だろう?

 って言うか、双子の……騎士?


 2人の兎耳の少女は同じ顔をしていて、瞳は赤く、綺麗な桜色の髪を左右対称にサイドテールにしていた。

 そして、軽めの鎧であるライトアーマーを身に着けていて、胸元には獣人国家ベードラの紋章があった。

 その紋章も左右対称になるようになっていて、右の子が右の胸元に、左の子は左の胸にある。

 更に2人の少女が見せる動作は全て左右対称で、1人が鏡に写った姿なんじゃないかと思わせるような、綺麗なシンメトリー動画を見ているようだ。


 私が見知らぬ2人の少女に、誰だろう? と首を傾げると、2人の少女が声を合わせて話し出す。


「「君達、楽しそうな話をしてますね~。私達にもその話を聞かせてくれませんか?」」


 と、2人の少女は、何故か左右対称に可愛くポーズをとりながら話した。


 わぁ、凄い。

 まるで1人で喋ってるみたいに、綺麗に声が揃ってるよ。

 でも、ちょっとだけ気になるんだけど、なんでポーズとってるんだろう?


「この国の騎士ね。どうする? ジャスミン。サーカス団が魔族の集団だなんて、言っても信じてもらえるとは思えないわ。適当な事を言って誤魔化す?」


 と、リリィが私の耳元で声を潜めて話した。


 うーん。

 どうしよう?


「フウ、ラン、何をしているのですか?」


 私が頭を悩ませていると、2人の少女の背後から、更に声が聞こえてきた。

 そして、私はその声を聞いて驚いた。

 何故なら、その声は、凄く懐かしい声だったからだ。

 私は2人の少女の背後に目を向けて、懐かしい人物を見て顔がほころぶ。


「アマンダさん!」


 そう。

 そこにいたのは、風抜けの町カスタネットで出会ったアマンダさんだったのだ。

 綺麗な空色の髪をポニーテールにしていて、赤紫の瞳は宝石のように美しく、メイド服がよく似合う美しい女性。


 変わらないアマンダさんの姿を見た私は、会えた事の喜びで、思わず嬉しくなって椅子から腰を上げた。

 すると、私の顔を見たアマンダさんが一瞬だけ驚いた顔をして、直ぐに顔をほころばせる。


「ジャスミンじゃない。随分と久しぶりね。会えて嬉しいわ。元気にしていた?」


「うん。私も嬉しいよ。アマンダさんも元気そうで良かったよ」


 私がそう言ってアマンダさんと微笑み合うと、2人の少女が不思議そうに私達を見た。

 そして、アマンダさんをサッと引っ張って、店の奥へと連れて行く。


「どうしたのかしら?」


「さあ?」


「おっぱい女、良かったッスね」


「え? どういう事?」


 トンちゃんの突拍子の無い言葉に疑問を言うと、スミレちゃんが凄く顔を真っ青にさせて私の疑問に答える。


「あの二人は幼女先輩の返事を待っている間、私に向けて殺気を出していたなのですよ」


「え!?」


 全然気が付かなかったよ。

 じゃあ、アマンダさんがいなかったら、大騒ぎになる所だったのかも……。

 アマンダさん。

 ありがとー!


 私は心の中でアマンダさんに感謝をして、お店の奥でこそこそと話し合っている3人を見つめた。

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