表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/288

154 幼女も納得する便利な加護

 火の精霊さん達が暮らす集落に辿り着くと、私はヒトデ太郎さんとライリーさんの姿を見つけて、2人を見つめる。


 あ。ライリーさんだ。

 良かったぁ。

 無事だったんだね。

 ヒトデ太郎さんも目を覚ましたみたいだし、良かったよ。

 って、なんだか楽しそう。


 2人の周りには、火の精霊さん達が集まっていて、何やら楽しそうにお話をしていた。

 その様子を見ていると、ライリーさんが私に気がついて小走りで近づいてきた。


「お久しぶりですね、魔性の幼女さん。ご無事で何よりです」


「うん。ライリーさんも無事みたいで良かったよ」


「突然あのでかい船が沈んだ時は驚いたものですが、急に夜海が晴れたもんだから、魔性の幼女さんが解決してくれたんだって直ぐにわかりました」


 あー。

 そう言えば、元々そういう話だったっけ。

 私、すっかり忘れちゃってたよ。


「ライリーさん、よくここがわかったんだぞ」


「周辺を捜していたら、この島を見つけて、もしやと思って来てみたんです。いやあ、船が沈んじまった時は、一時はどうなる事かと思いましたけど、ターウオ様も皆さんも無事で良かったです」


「お前等、心配かけたな」


 と、ヒトデ太郎さんも私達に近づいて微笑んだ。


「やっと目を覚ましたのね。投げて悪かったわね」


「ああ、気にするな。操られていたんだ。仕方がないさ」


 実は操られてるフリだったけど、黙っておこう。


「操られてたわけないでしょう? うふふ。馬鹿ね」


 り、リリィ!?

 馬鹿ねじゃないよ!

 正直に言うのは好感もてるけど、その後の馬鹿ねで台無しだよ!


「はっはっはっ。こいつは一本取られたぜ。投げられただけにな」


 何上手い事言ってるの?

 と言うか、それで良いの? ヒトデ太郎さん。


「ヒトデが馬鹿で良かったッスね~」


 こら。

 トンちゃん、あまり失礼な事言わないの。


「そうだわ。それよりライリー、この鱗を加工してほしいのだけれど、出来ないかしら? 造船作業なんかもやってるのでしょう?」


 リリィがイフリートから貰った鱗を見せながら、ライリーさんに訊ねる。

 ライリーさんはそれを見て、難しい顔をして唸り声をあげた。


「こいつは凄いな。かなり硬度な材質の鱗じゃないか。これはどこで?」


 ライリーさんが鱗に触れながら、リリィに目を合わす。


「ジャスミンがイフリートから貰ったのよ」


 リリィがそう言うと、ライリーさんとヒトデ太郎さんが驚く。


「ぼ、暴獣イフリートから貰った!?」


「おいおい、どうしたらそんな凄い事になるんだよ?」


 ヒトデ太郎さんが目を見開きながらリリィに質問すると、リリィが私を見たので、私は苦笑する。


「ジャスミンがイフリートを負かして、すっかり気に入られちゃったのよ。それで貰ったの。それだけの事よ」


「暴獣イフリートを負かした……? それだけの事って……」


 ヒトデ太郎さんが言葉を失って、私を見る。

 私はその視線を受けて、再び苦笑した。


「幼女先輩にかかれば、暴獣イフリート如き朝飯前なのよ」


「主様、凄くかっこよかったんだぞ」


「ジャチュ、ちゅごい」


「でも、やりすぎて島が氷河期になったです」


「ご主人はバカッスからね~」


「す、すげえ。俺が眠っている間に、そんな事があったのかよ。流石は純白の天使の二つ名は、伊達じゃねえぜ!」


「流石は魔性の幼女さんです。こりゃあ、山を三つ破壊した魔族を倒したって噂も、あながち間違っちゃいないのでは?」


「あ、あはは」


 その話はぶり返さないで?

 本当にお願いします。


「まあ、それはそうと、結局加工は出来るの? 出来ないの?」


「あ、ああ。すまない。そうだったな」


 ライリーさんはそう言うと、気を取り直して鱗に触れて頷いた。


「こいつは俺には無理だな。長年やってる造船作業でも、鱗を使った船を何度か扱ってはきたが、これ程硬度の高い鱗は初めて見た。これで何を作る予定なんだ?」


「腰かけポーチよ」


 リリィがそう言うと、ライリーさんが困り顔で頭を掻いた。


「腰かけポーチって、そりゃあ、そもそも俺の専門外だ」


 たしかにそうだよね。

 一応黙って聞いてはいたけど、なんとなくそれは思ったよ。


「船を作るよりは簡単でしょう?」


「いやあ、しかしだなぁ。そうは言うけど、そういうのは専門の人間にやらせた方が良い」


「そういうものかしら?」


「しかし、こんなに素材が固いんじゃ、加工できるのはドワーフ族位だろうな」


 ドワーフ族!?

 この世界にもドワーフっているんだ?


「聞いた事の無い種族ね。何処に行けば会えるの?」


 リリィがそう訊ねると、ライリーさんの代わりにラテちゃんが答える。


「ドワーフ族は鉱山地帯で暮らしている種族です。でも、他種族との関わりを持たない種族だから、何処に住んでいるかはわからないです」


「そうなの?」


「精霊様の仰る通りです。残念だが、俺にはわからん」


「ラテ、土の加護を使って、ドワーフの居場所を探れないッスか?」


「出来ないです。ジャスの前世の世界で言う、科学っていうのがあるですよね? ドワーフは魔法とその科学を使って、外界から身を護っている種族です。だから、加護の力を使った所で、捜すなんて無理です」


 か、科学!?

 まさかのまさかだよ。

 この世界にも、科学なんてあったんだ?


「科学? 何それ?」


 と、リリィが訝しげな顔をする。


「ハニーは知らなくても、無理はないッス。科学なんて単語、ご主人と契約するまで、ボクだって知らなかったッスからね」


「です。この世界では、科学はドワーフだけの文化です」


「なるほどね……あら?」


 リリィはそう言うと、少し何かを考える素振りを見せて、ラテちゃんに顔を向けた。


「思ったのだけど、ラテは何故ドワーフの事に、そこまで詳しいの?」


 あっ。

 確かにだよ。

 なんでだろう?


 私が頭を傾げると、ラテちゃんが相変わらずの眠そうな顔のまま、口角を少し上げた。


「土の精霊の大地の加護の情報網は、ドワーフ族が抑えきれるものではないと言う事です」


 ラテちゃんはそう言うと、ライリーさんに顔を向けた。


「ライリー、今から直ぐに港町に向かうです。そこなら、ドワーフ族の情報が得られるはずです」


「え、ええ。それは構いませんが、何処の港町に向かえばいいのですか?」


「当初の目的通りの港町で良いです。運が良い事に、そこでドワーフ族がお買い物をしている可能性が高いです」


「え? そうなの? ラテちゃん。でも、なんでそんな事がわかるの? それも大地の加護の力なの?」


「です。その港町にある居酒屋で働く、ラテのお友達が昔言ってたです」


 え? 大地の加護は?


「よく来るドワーフが絡み酒でウザいと、言っていたです!」


 う、うわぁ。

 大地の加護関係無いし、なんかいらない情報入って来たよ。


 などと私が考えていると、ラテちゃんが察したのか、私の頭をペチリと叩く。


「ジャス、言っておくですけど、これは大地の加護の通信を受けて聞いた話です。直接会ってお話して聞いたわけじゃないです」


「あ。そうなんだね」


 加護って、そんな感じな事も出来るんだ?

 直接お話したわけじゃないんだね。

 離れた所から加護を使ってお話だなんて、凄く便利だね。

 まるで電話みたい。


 そんなわけで、私達はヒトデ太郎さんと火の精霊さん達にバイバイをして、ライリーさんの船に乗って出発する事になった。

 ちなみにヒトデ太郎さんは、この島が気にいったらしくて、残る事にしたそうだ。


 目的地は当初予定していた港町。

 港町に着いたら、エルフの里の場所とドワーフの住む鉱山の聞き込み調査だ。

 私はまだ見ぬエルフやドワーフとの出会いを、楽しみだなぁと思いつつ、甲板から海を眺めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ