147 幼女はお腹ぺこぺこです
キラープラントに捕まった私は、服を溶かされてパンツだけの姿になりながらも、必死にニュルニュルの蔓を解こうと必死にもがく。
だけど、腕まで蔓で巻き付かれてしまっているせいで、全く身動きすら出来ないでいた。
そんな中、私は恐ろしい事に気がついた。
「やばいよ! リリィ、助けて! このままじゃ、パンツまで溶けちゃうよ!」
「そうだったわ!」
リリィが正気をとり戻し鼻血を拭きとってから、キラープラントに飛びかかる。
キラープラントは身を護るように蔓や葉などを使って防御したけど、流石と言って良い程に見事なリリィの蹴りは、それを物ともせずに一瞬で蹴り破ってキラープラントに風穴を空けた。
しかし……。
「あ、あら?」
私が攻撃した時と同じように、キラープラントは直ぐに再生してしまう。
それから、リリィは何度か攻撃を繰り返すけど、何度蹴り破っても直ぐに再生してしまった。
やっぱり、弱点の口を狙わないと駄目なんだ。
「リリィ! 口を狙って!」
「口!? わかったわ!」
リリィが勢いよく跳躍する。
そして、キラープラントの花の目の前に辿り……着かない。
何故かリリィは私に向かって、鼻息を荒くしておちょぼ口で接近して来た。
「え? 何? なんで!?」
これはまさか!?
私は無我夢中で魔法を使う。
魔法で強風を発生させて、私は風の勢いで逆さ吊りのまま、勢いよくブランコの要領でリリィを避ける。
あ、危なかったよ。
あと一歩遅れていたら、私のファーストキスが奪われていたよ。
「なんで避けるのよ? ジャスミンから、口を狙えって言ったのに」
「私の口じゃなくて、この植物、キラープラントの口の事だよ!」
「なーんだ。残念」
もう。
本当、油断も隙も無いよ。
まあ、リリィが相手なら、別に構わないけ……って、ダメダメ。
それ以上は危険だよ。私!
などと私がアホな事を考えていると、ラヴちゃんが耳元でボソボソと呟く。
「おはな、おくちちがう。おなか、おくち」
え?
お花じゃない?
お腹?
私は言われて確認する。
見ると、キラープラントの根っこのあたり、茎の下の方が少し膨らんでいて、そこに唇のようなものがついていた。
な、なんかついてる。
どう見ても、アレが口だよね?
「リリィ、根元に口がある!」
「根元? あ、本当ね。見た目が見た目だから、つい上ばかり見てしまって、気がつかないものね」
リリィはそう言うと、キラープラントの口目掛けて、何かを投げた。
すると、キラープラントは口から中心に燃え始める。
「キシャーッ!」
キラープラントの叫びが響き渡る。
私が突然の出来事に驚きを隠せないでいると、リリィが私を縛っている蔓を切断して、私をお姫様だっこして助けてくれた。
やだ。
リリィかっこいい。
「大変だわ。ジャスミン」
「え?」
「火が他の草木に燃え移ってしまったわ」
「……えぇーっ!」
リリィに言われて見て気付く。
キラープラントから出る炎は、もの凄い勢いで火がどんどんと燃え移っていたのがわかった。
「リリィ、取って! これ取って!?」
私は蔓に巻きつかれたままの腕を上げて、リリィに必死に見せる。
すると、リリィは直ぐに蔓を取ってくれたので、私は急いで水の魔法で火を消し止めた。
「危うく大火事になる所だったよ。もう、気をつけなきゃダメなんだからね! リリィ」
私が息を切らしながらリリィに言うと、リリィは私に苦笑する。
「まさか、こんなに燃えるなんて思わなかったのよ」
「あ。そう言えば、凄い勢いで燃えちゃったけど、何を投げたの?」
「ラヴを監視していた火の玉よ」
「え?」
リリィの言葉に、ラヴちゃんがおめ目をうるうるとさせる。
「がぉ……」
「リリィ、謝って! ラヴちゃんにごめんなさいして!」
「キラープラントおいちいのに、もえちゃった」
え?
そっちなの?
って、美味しいんだ?
あの植物……。
「ラヴ、ごめんなさいね」
そう言えば私、目を覚ましてから何も食べてない。
なんだか、お腹が空いてきちゃった。
キラープラント美味しいのかぁ……。
どんな味なんだろう?
リリィが素直にラヴちゃんに謝っている中、私がそんな事を考えていると、トンちゃんがくるりと宙を舞って私の前に現れる。
「ご主人、向こうの方に、美味しそうな果物が生ってたッスよ」
「おお。トンちゃんナイスなタイミングだよ」
って、いつの間にいなくなってたの?
トンちゃんは自由だなぁ。
「くだもの。がおー」
ラヴちゃんはボソボソとそう言って、もの凄くおめ目をキラキラとさせてバンザイをした。
可愛い!
ラヴちゃん可愛すぎだよ!
「私も何か食べたいし、ドゥーウィンに案内してもらいましょう? ジャスミン」
「うん。私もお腹ぺこぺこだよぉ」
そんなわけで、私達はトンちゃんの案内で、果物が生っている場所まで移動する事になった。
しかしその前に、私はパンツ一枚になってしまったので、その辺の草木の蔓や葉っぱを使って簡易的な服を作る。
とりあえず、これで一安心だよね。
それにしても、衣類だけを溶かす植物かぁ。
もう出て来ないでほしいなぁ……。




