表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/288

131 幼女と帰ってきたヌルヌル事件簿

 私がリリィのさらなる変態化を必死で阻止すると、トンちゃんがボソリと呟く。


「そう言えば、何でオークは、クラーケンにヌルヌルオイルを吐き出させてたんスかね?」


「そんな事、どうでもいいです」


 トンちゃんの疑問に、ラテちゃんが本当にどうでも良さそうに答えた。


「えー。ラテは気にならないッスかー?」


 トンちゃんが私の腕の所まで飛んで、プリュちゃんと目を合わせて同意を求める。


「プリュは気になるッスよね?」


「気にならないんだぞ」


 と、プリュちゃんも本当に興味無さそうに答えた。


「同じ精霊同士だっていうのに、二人ともつれないッスね~」


 トンちゃんが、ラテちゃんとプリュちゃんをつまらなそうに見て、ちょっとだけねた顔になった。


 拗ね顔トンちゃん可愛い。


 などと私が顔を綻ばせていると、何処かから突然声が聞こえてきた。


「趣味なんだな」


「え?」


 私は突然の声に驚いて、声の主を捜す。


「オークはヌルヌルの女の子を見るのが好きだから、ヌルヌルにしていただけなんだな」


「うそ!」


 私は声の主を見つけて驚いた。


「嘘じゃないんだな」


「う、ううん。そっちじゃなくて、クラーケンが喋ったの?」


 そう。

 声の主は、今まで全く喋らなかったクラーケンだった。


「そうなんだな」


 クラーケンって喋れたんだ。


「趣味ッスか。ただの変態ッスね」


「オーク。良い趣味を持ってたなのよ」


 スミレちゃんが、うんうんと頷く。


 私がおバカだなぁ。と、内心呆れていると、ライリーさんが私に「魔性の幼女さん」と声をかけてきた。


「報告が遅くなりましたけど、船の準備が出来ました」


「え、本当? ありがとー」


 私が笑顔でお礼を言うと、ライリーさんもニコッと微笑む。


「喜んでもらえて何よりです。早速船に乗りますか?」


 うーん。

 どうしようかなぁ。

 特に問題ない気はするけど……あ、そうだ。

 昨日の夜、結局プリュちゃんにパンケーキ食べてもらえなかったんだよね。

 よし。


「お昼ご飯食べてからが良いかな」


 船に乗ったら、暫らくはパンケーキ作れないかもだもんね。


「そうですか。それなら、また家に来て下さい。たっぷりご馳走しますよ」


「うん。ありがとー」


「魔性の幼女さん、今日は泊まっていかないんですか? 泊っていって良いんですよ?」


 私とライリーさんの話を聞いていたマノンちゃんが、寂しそうな表情を見せる。


「うん。でも、出来るだけ早く行かなきゃダメな場所があるから」


 ニクスちゃんとたっくんを、早く助けないとだもん。


「そうなんですね。それなら、せめてお昼は一緒にお喋りしたいです」


「うん。いっぱいお喋りしよ」


 私は笑顔でそう言ってから、オーク達に顔を向ける。


「オークさんもクラーケンさんもお兄さん達も、もう、悪い事しちゃダメなんだからね?」


 私が一人一人の目を見ながら話すと、オーク達は頷いた。


「もうしないと、約束するでござる」


「しないんだな」


「これからは、正々堂々と直接頼む事にします」


「そうさ。俺達ならやれる」


「俺も頑張って、脱いで貰える様に頼むんだ」


 こらこら。

 確かにそれなら盗みではないけど、それもそれでアウトだよ。


「おぬし等、馬鹿でござるな」


 意外かも。

 オークさんは、一応わかってるみたいだね。


「これからは、オイルマッサージの時代でござる!」


「オイル」


「マッサージ」


「!?」


「そうでござる! クラーケン氏のヌルヌルオイルで、ヌルヌルになったエロ肌な女子おなご達を、マッサージしてあげるのでござる!」


 気持ち悪いなぁ。

 いやぁ、本当無い。


「すげえ!」


「流石オークさん!」


「俺が女だったら間違いなく惚れる!」


 無いと思うなぁ。

 って言うか、懲りないなぁ。

 うーん。

 このおバカな人達、放っておいて良いのかなぁ?

 また、何かやらかしそうで怖いんだけど?


 私がそんな風に頭を悩ましていると、リリィが鼻血を出しながら口を開く。


「ヌルヌルのジャスミンにマッサージ。良いわね」


「よ――」


 私がよくないと言おうとしたまさにその時、バシャリッと、私にクラーケン製のオイルがヌルッとかかる。


「え? 何!? なんで!?」


 私が驚いてクラーケンを見ると、クラーケンが頭を掻きながら、ニコニコと喋る。


「リリィさんがご所望だったんだな」


 クラーケンさん、今のは所望したんじゃなくて、ただの願望だよ?

 もう。ほら。

 おかげでラテちゃんとプリュちゃんまでヌルヌルに……って、あれ?

 2人ともオイルまみれになってないよ!?

 なんで?


 私が頭に?を浮かべると、それを察してラテちゃんが答える。


「重力の力場を操作すれば、こんなもの食らわないです。プリュイもサービスで護ってあげたです」


 わぁ。凄ぉい。

 プリュちゃんも一緒に守ってくれるなんて、ラテちゃん優しい。

 でも、でもね。ラテちゃん。

 私は?

 私も一緒に護ってほしかったかなぁ。


 私がそう若干落ち込んでいると、リリィが気分良さげにクラーケンをペチペチ叩いた。


「クラーケン。アンタ、気が利くじゃない」


 何言ってるの? リリィ。

 最悪だよ?

 ご飯の前に、またお風呂借りないとな感じになっちゃったんだよ?


「ジャスミン。せっかくだから、お言葉に甘えて、マッサージをしてあげるわ」


「え、遠慮するよ」


「うふふ。遠慮しなくても良いのよ?」


 目が怖い。

 目が怖いよリリィ!


 私は後退り若干半泣きになりながら、近くにいたスミレちゃんの背後に隠れると、スミレちゃんが「そう言えば」と言って、言葉を続ける。


「幼女先輩。盗まれた水着や下着は、返してもらわなくても良いなのですか?」


「そう言えばそうよね。忘れていたわ。こんな事をしている場合でもないわよね」


 よ、良かったぁ。

 リリィが正気に戻ったよ。

 ナイスだよスミレちゃん。

 って、それはそうと、盗まれた水着と下着かぁ。


「どうしよっか? 少なくとも私はいらないし……」


 そう言って、私はマノンちゃんを見る。

 すると、マノンちゃんは、凄く嫌そうな顔をした。


「こんな人達に渡った下着なんて、もういらないです」


「そうだよね。たぶん、他の盗まれた人も、もういらないんじゃないかな?」


「それもそうよね」


「たしかになのですよ」


 リリィとスミレちゃんも、マノンちゃんと私の意見に同意して、オーク達をゴミを見るような目で見た。


「でも、ジャスミンは本当に良いの?」


「え? なんで?」


「盗まれたのって、いつも穿いているお気に入りのパンツじゃない。今までだって、結構な数が無くなってしまったでしょう? また無くなる事になるわよ」


「うん。そうだけど、でも、まだストックはあるから大丈夫だよ。旅に出る時に、ちゃんといっぱい持って来たの」


 私はリリィに笑顔で答える。


「そう。それなら良かったわ」


 リリィも私の笑顔を見て、ニコッと微笑んだ。

 すると、そこでライリーさんが私に話しかける。


「一応、俺の方で盗まれた人に、必要かどうか聞いておきます」


「ありがとー。ライリーさん」


「いえいえ。ささ。そんな事より、早く行きましょう。お風呂も準備しますよ」


「う、うん。本当にありがとー」


 ライリーさんの気遣いに、私は涙目で返事をした。


 こうして、港町で起きていた事件は解決し、平和が戻ったのでした。

 ちなみに、ライリーさんが被害にあった人達に確認をして、皆からいらないと言われたそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ