129 幼女は全力で応えたい
トンちゃんが海藻を切って、それを私の胸に巻く事によって、乳バンドのような物を完成させた。
私はそれを引っ張ったりして、すぐに外れてしまわないか確認する。
うん。
大丈夫そう。
「ありがとー。トンちゃん」
私がお礼を言うと、トンちゃんはニコッと笑顔で答えてくれた。
「ドゥーウィンは凄いんだぞ。ちゃんと、ジャスミンさんの役に立ってるんだぞ」
プリュちゃん?
「アタシは全然ダメなんだぞ。さっきも、何も出来なかったぞ……」
プリュちゃんが顔を暗くさせて俯く。
やっぱり、一度契約を切られてるから、凄く気になっちゃうのかな?
気にしなくて良いって言うのも、たぶん何か違う気がする。
プリュちゃんは、そんな事言われても、きっと気にしちゃうと思う。
でも、なんて声をかけてあげればいいんだろう?
そんな風に、私が何も言えずにいると、トンちゃんがプリュちゃんの背中をパンッと叩いた。
「な、なんだぞ?」
プリュちゃんが驚いてトンちゃんを見ると、トンちゃんが体全体で何かを伝えようと動き回った。
私には何を言いたいのかが、ちっともわからなかったけど、トンちゃんなりにプリュちゃんを励ましているのはわかった。
プリュちゃんも、トンちゃんが励ましてくれているのを感じたのか、トンちゃんが何かを伝えようと動き回る姿を見てクスリと笑った。
「ありがとうだぞ。ドゥーウィン」
プリュちゃんがそう言うと、トンちゃんは親指をグッと立てた。
和やかな雰囲気のままリリィ達の所へと戻ると、一瞬で雰囲気は壊される。
戻って来た私の姿を見たリリィが、私の胸をガン見してじゅるりと、涎を垂らしたのだ。
と言っても、海の中なので、実際にどうなのかは全く分からないのだけど。
「ドゥーウィンやるじゃない。今日は海藻で出汁をとった、スープを作りましょう」
海藻って、私が今胸に巻いてる海藻を使う気だよね?
私、凄く嫌なんだけど?
私がリリィの発言に若干引き気味になっていると、マノンちゃんがクラーケンが気絶している方を見て驚く。
そして、マノンちゃんはクラーケンに指をさした。
「魔性の幼女さん! クラーケンに、オークが近づいてます!」
「え?」
私が言われて振り向いた時には、既にオークはクラーケンの所まで行っていて、クラーケンをバシバシと叩きだしていた。
本当だ。
クラーケンの所にオークがいる。
「あの豚、生きてたのね」
こらこら。
リリィったら、殺す気で蹴り飛ばしちゃダメだよ。
「クラーケン氏、早く起きるでござる!」
オークが大声を上げたその時、クラーケンが目を覚ましてオークを見る。
あ。
いけないいけない。
ボーっと、見てる場合じゃなかったよ。
早く捕まえないと、また逃げられちゃうよね。
オークがクラーケンと何やらお話をしだす。
しかし、ここからでは、何を喋ってるのかは聞こえない。
とりあえず、逃げられないようにしよう。
うーん……よし。
決めた!
「プリュちゃん。お願い」
「わ、わかったぞ。アタシ、ダメダメだけど、精一杯頑張るんだぞ」
プリュちゃんの返事を聞いて、私はプリュちゃんに微笑んで頭を撫でる。
「デュフフフフ! クラーケン氏が復活してしまえば、こちらの独壇場でござる! いざ行かん! 反撃の狼煙を上げる時でござる!」
オークがクラーケンの上に乗り、大声を上げると、クラーケンが私達に猛スピードで向かって来た。
だけど、私は構わず魔力を集中して手を前にかざし、目の前に水色の光を放つ大きな魔法陣を描いた。
そしてその時、水の加護から生まれた僅かながらの魔力を受けながら、プリュちゃんの精一杯を感じた。
ああ、そうか。
そうだね。
確かに、プリュちゃんの加護は本当にか細くて、注意をしていないと見落としちゃう。
「我が名はジャスミン。ジャスミン=イベリス。星を覆う偉大なる水の神々よ」
私はプリュちゃんから伝わる加護を感じて、魔力を更に高めていく。
でも、私にはわかるよ。
プリュちゃんは精一杯、私の為に頑張ってくれてる。
「我が命じる。その慈悲深き御心を捨て去り、醜悪なる者に罰を与える力を我に示せ」
私は、そんなプリュちゃんの精一杯に応えたい。
だから私は、プリュちゃんの精一杯を力に変えるよ!
「デュフフフフ! さあクラーケン氏! 今こそ触手プレイの真骨頂を見せてやろうぞ!」
オークとクラーケンがついに私の目の前へと迫り、クラーケンの触手が私達に襲いかかる。
「全てを凍てつかせろ! 凍縛封獄!」
私が呪文を唱えた瞬間、魔法陣が強い光を放ち、海水を巻き込み全てが氷り付く。
オークとクラーケンも例外ではない。
そのまま海水と一緒に、まるで琥珀の中に閉じ込められた虫のように、その場でオークとクラーケンは凍り付いた。
「海が……氷った」
マノンちゃんがその光景に驚き、目と口を大きく開けて立ち尽くす。
するとその拍子に、マノンちゃんがリリィを離してしまったので、私が急いでリリィを抱き寄せた。
「ありがとう。ジャスミン」
「うん」
「す、凄い。凄いんだぞ」
プリュちゃんが私の前まで泳いで、氷り付いた海水を触った。
そして、私に振り返ると、勢いよく私の腕にしがみついた。
「主様ー! かっこいいんだぞ!」
あ、主様?
あはは。
主様かぁ。
ちょっと、複雑かも。
と、考えたのだけど、プリュちゃんがもの凄く目をキラキラとさせて私の顔を見るので、私の複雑な気持ちは何処かへ飛んで行ってしまった。
プリュちゃんが嬉しそうだから、まあいっか。
「アタシの加護で、こんなに凄い魔法が出せるなんて、主様はすっごくすっごく凄いんだぞ!」
「プリュちゃんのおかげだよ」
「主様! 大好きだぞ!」
私は微笑んで、プリュちゃんの頭を優しく撫でる。
そしてこの時、思わぬ事件が起きてしまった。
プリュちゃんを撫でた結果、私はリリィを離してしまって、リリィが咄嗟に私の短パンを掴んだのだ。
その結果、悲惨でおバカな結末が、私に手招きをした。
「あっ」
リリィは私のパンツごと短パンを掴んで、そのまま私の短パンとパンツを連れて、海の底へと沈んでいく。
こうして、私の下半身は丸裸にされ、下半身丸出しの痴女が完成してしまった。
「きゃぁあーっ!」
海中に私の悲鳴が響き渡り、沈み行くリリィの鼻から鼻血が流れだし、マノンちゃんがそれを見て慌てだす。
そんな私達の姿を見ながら、トンちゃんが必死に笑いを堪えていたのでした。




