表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/288

127 幼女を愛でる資格を持とう

 海の中に潜ると、私の目に映ったのは、とても綺麗な景色だった。

 綺麗で透き通る海の底は、珊瑚が広がり綺麗に染まり、色鮮やかに輝いていた。

 色んな種類の魚たちが、所々に泳いでいるのが見えて、こんな状況でなければ私は目を奪われていた事だろう。


 不思議。

 海の中だけど、プリュちゃんの水の加護のおかげで、呼吸が出来る。

 制限時間は30分。

 ううん。

 盗られてから時間が少し経ってるから、そんなにないかな?

 でも、これなら、きっと大丈夫だよね。


 私はすぐに周囲を確認して、オークとクラーケンを捜す。

 すると、プリュちゃんが私の前に出て、指をさした。


「ジャスミンさん。あそこだぞ」


 海の中なのに、お話も出来るんだ?


 教えて貰った方向を見ると、だいぶ遠くに行ってしまっているみたいだけど、クラーケンの姿を確認出来た。


「プリュちゃん。ありがとー」


 私はプリュちゃんに一言お礼を言うと、魔法でウォータージェット推進の要領で、足裏のあたりから高圧の水流を勢いよく噴出して、一気にクラーケンとの距離を詰めた。

 すると、背後に迫る私に気がついたようで、クラーケンが私を見てから泳ぐスピードを上げる。


「トンちゃん」


 私が名前を呼ぶと、トンちゃんがこくりと頷く。

 私はクラーケンを囲うように、魔法で純水の壁と空気の隙間を作る。

 そして、クラーケンに狙いを定めて、魔法の電撃を放った。


「ぎゃぁぁああっ!」


 私が放った電撃は、見事に命中してオークの叫びが海中に響く。

 そして、クラーケンが意識を失い、動かなくなった。


 良かった。

 電気が漏れてないし、上手く囲えたみたい。

 って、あれ?

 オークが叫んだ?

 もしかして、オークも喋れるの?

 あのオークは私の使った水の魔法で溺れたのに、こっちのオークは呼吸が出来るのかな?

 てっきり、長い間海に潜っていられないと思っていたんだけど……。


 私がそんな風に疑問を抱いていると、若干丸焦げのオークがクラーケンから離れて、私から10メートル程の距離まで泳いできた。


「とんでもない美幼女でござるな! 海の中で電気を流すとは、頭がおかしいでござるぞ!」


 喋ってる。

 やっぱり、理由はわからないけど、水中で呼吸が出来るんだね。


「だが、拙者は玄人故、この程度の電撃は効かぬでござる!」


 思いっきり焦げちゃってるけど、本当に効いてないのかな?

 って、そんな事よりだよ!


「プリュちゃんに謝って!」


 私が叫ぶと、オークが顔をしかめる。


「プリュちゃん?」


「水の精霊のプリュちゃんだよ」


「デュフフ。水の精霊の事でござったか。お断りでござる」


 むー。

 もう一回、電気を浴びせてあげようかな。


「何故拙者が、そんな事をせねばならぬでござるか! 悔しかったら、この本にサインをする条件として、提示しなかった自分を恨――」


 そう言いながら、オークはさっきの本を取り出した。

 そして取り出した本を見て、オークが一瞬、時間が止まったかのように動きを止める。

 何故ならそれは、私の放った電撃を浴びて黒焦げになり、本と呼べる代物ではなくなっていたからだ。


 あ。

 え、えーと……。


「ご、ごめんね」


 私が一言謝ると、オークの止まっていた時間が動き出す。


「ごめんねじゃ、済まぬでござるぞーっ!」


 うわ。

 すっごい怒ってる。


「これは、今や大ヒット連載中の、ツルっとパイけつ魔女っ娘ジャスたん一巻の初版! しかも、モデルになった魔性の幼女たんのサイン入りの、超レア物だったのでござるぞ!」


 いやいや。

 その初版云々はともかくとして、サインは私が書いてあげたからだよ?


「許さん! 許さんぞ! 美幼女! いや、魔性の幼女たん!」


 オークが私を睨み、手をかざす。

 すると、私は着ていた水着を、どういうわけなのか一瞬で脱がされてしまった。


「ぴゃっ!」


 ま、また!?

 これ、本当にどうなってるの!?


 私は直ぐに胸を腕で隠した。


「デュフフフフ。拙者の能力を、そんじょそこ等のオークと一緒と思うでないぞ!」


 オークが私の水着を鷲掴みする。


「拙者の能力は、覚醒せし能力! どんな条件であろうと、下着と水着を脱がせて、拙者の手にワープさせる能力でござる!」


 出たよ!

 くだらない能力!

 と言うか、納得だよ。

 フルーレティさんも同じような事言ってたよね?

 能力が覚醒したって。

 それと同じで、このオークも能力が覚醒してるんだ。


「デュフフ。魔性の幼女たんよ。ちっぱいを隠す為に、身動きを上手くとれまい!」


 うぅ。 たしかに。

 片腕しか動かせないから、ちょっと動きづらいかも。


「拙者の愛読書を黒焦げにしてしまった罪、その体で代償を払ってもらうでござるぞ! デュフフフフ」


 ひぃ!

 目が怖い!

 凄くいやらしい目で私を見てるよ!


 私が雰囲気に呑まれて怖気づくと、プリュちゃんが両手を広げて、私の目の前に立った。


「ジャスミンさんには、指一本触れさせないんだぞ!」


「デュフフ。忘れたでござるか? お前では、拙者には敵わぬぞ!」


「ジャスミンさん、逃げるんだぞ。時間稼ぎ位は、やってみせるぞ」


 プリュちゃん。


 私はプリュちゃんのおかげで、落ち着きを取り戻す。


「ううん。プリュちゃんありがとー。私は、大丈夫だよ」


「愚かなり魔性の幼女たん! 拙者はもう一つの能力、水中での呼吸を手に入れて、水中戦の訓練を受けた身」


 オークがもの凄いスピードで泳ぎ、私達に接近する。


「さながら拙者は、海を優雅に泳ぐイルカ同然でござる。逃げた方が賢明でござったぞ!」


 イルカさんと一緒にしないで!

 って、あ。

 イルカさんって漢字で書くと、海豚だっけ?


「わっ!」


「プリュちゃん!」


 私が思わずおバカな事を考えていると、プリュちゃんが接近したオークに払いのけられた。

 そして、私がプリュちゃんを目で追うと、その隙をつかれてオークに掴みかかられてしまった。


「まずは、その邪魔な短パンを――」


 しまった!

 このままじゃ!


「汚い手で、私のジャスミンに触ってんじゃないわよ!」


「――ブヒィーッッ!」


 デカく鈍い音と共に、オークが海底目掛けて吹っ飛びぶつかる。


 えっ!?


 私は自分の目を疑う程に驚いた。

 何故なら泳げない筈のリリィが、払いのけられたプリュちゃんを抱きしめながら、オークを海底に蹴り飛ばしたからだ。


「まったく、何が美幼女よ。何が魔性の幼女たんよ。こんなに小さな女の子に乱暴して! アンタには、全ての女の子を愛でる資格がないのよ!」


 リリィがプリュちゃんをギュッと抱きしめて、海底に勢いよくぶつかって倒れこんだオークを睨みつけて、勢いよく言い放った。

 私はそんなリリィの姿を見て、まるで物語の主人公みたいでかっこいいなぁ。と感じたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ